6、二股か!
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。クラスメート達がぞくぞくと教室に戻ってくる。
次の授業は英語だ。その授業中にまた茜と親しくなるチャンスが起こった。
英語の庄司が教室に入って来た時茜はとっさに言った。
「先生!教科書忘れてしまいました!」
茜は困ったように先生を見つめていた。
「しょうがないな〜。おい吉岡見せてやれ!」
吉岡は、オレの名字だ。オレは、ラッキーなことに茜の隣だったので教科書を見せられた。
「ごめんね、てる君。」
机をくっつけようとした時、茜が恥ずかしそうにいった。
「いいよ!オレもラッキーだし。」
「えっ!?」
「なんでもないです!!」また、本音がバレるところで危なかった。この驚いた顔もたまらなく可愛い。いっそのこと抱きしめて離さないでいたいと思った。
授業中、オレ達はあまり授業に集中せず、茜と好きなテレビ番組、最近はまっていることなど、くだらないことについて沢山話した。色んなこと話している時、茜がオレに小さなノートの紙切れを渡してきた。
『今日の夜メールして!
akane.i_k_m_n_g………』
オレは、その紙切れをもらった時嬉しくて感動した。最高の笑顔で茜に感謝する。
茜は、照れ隠しのためか、反対の方を向いていた。肩よりちょっと長い黒髪が、窓に降り注ぐ散々の太陽を浴びて輝いている。
その姿を見ると普通の茜とは違う、大人な雰囲気が感じられる。
オレは、メアドが書かれた紙切れを抽出のファイルに丁寧にしまうと、前を見た。
「あ!!」
思わず声を出してしまった。前には、茜とのやりとりの一部始終を見たかのように、美子が寂しげに見ていた。
美子は、オレと目を合わせた瞬間に目を反らした。
あの寂しげな目は一体なんだろう?大切なものを失ったかのような悲しい目。
それで、オレは美子の事を考え始めた。別に何も悲しさせるような事はやってない。むしろ、わっちなんかとデキかけてるから、嬉しい方なんじゃないかと思う。
「まっ!放課後聞けばいいか!」
とモヤモヤしながら思った。
キ〜ンコ〜ン!!
短かったような授業が終わった。後残り2時間で学校が終わる。それを期待しながらずっと待っていた…。
キ〜ンコ〜ン!!
最後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。これでホームルームが終われば下校だ。
眞鍋がホームルームのために来た。何だか、とても急いでるようだ。
「今日は、会議があるためにホームルームはコレで終りです!」
よっしゃー!って叫びたかった。いつもより早く学校が終わった。
生徒達がゾロゾロと教室からいなくなっていくその中に美子が友達と帰っていくのが見えた。
オレは、すかさず美子の傍に駆け寄ったが…
「ごめん。私先帰るわ。」って友達に言って、走って帰ってしまった。
オレは、美子の後ろ姿を追いかけたが、もう見えなくなってしまった。
「吉岡君…。」
肩を叩かれて後ろを振り向くと、美子の友達の今村がたっていた。
「もう少し美子の気持ちわかってあげなよ…。」
「え…?」
「わかんないならいいよ…。じゃあね。」
今村は、冷たい感じで去っていった。オレは、ただただアイツの後ろ姿を見るしかなかった…。
しかし、今村がいったことが気になる…。オレは何も美子のこと分かってあげてないのか?
美子のあの急ぎよう…。
まるでオレを避けてるように感じたのは、オレだけだろうか……?