第6話 無名登録員
伏線回収出来たかなー、作者も忘れていた伏線です。
ついでに、打ち間違えた事が発端の伏線です。辻褄合わせじゃありませんからねっ!?
明日、明後日と、執筆活動は出来そうにありません。が、最低でも一週間に一回のペースは維持していきたいところ……。
ゴールデンウィークも数日潰れてますけど。何せ、学生の本分は勉強ですしね。
(えっ? いつの間に? 勉強なんてしてないじゃn)ちょっと黙ろうか。
というわけで、落ちこぼれさんの小説です、どうぞー。
てっきり王都だと思っていたのだが、ギルド『九天』、コートルヴィル支部に到着してから、ようやくその間違いに気付いた。
首を傾げるシルを横目に、私はようやくマップウィンドウを開いた。見せようと思えば他人にも見えるらしいが、あいにく私はそのやり方を知らない。プレイヤー同士だったら、全員で各自のウィンドウを開いた方が早かったからだろう。全員でウィンドウが開けない程危険な場所では、一人がウィンドウを開く時点でアウトだ。
ウィンドウは半透明で、決して周りが見えなくなる訳ではないが、あたりへの警戒がおろそかになる事は間違いなしだ。道を歩きながら本を読むようなものである。あ、最近はスマホなのか?
街などのセーフティエリア以外の場所では、自分が歩いたところや、パーティ、もしくはギルドメンバーが歩いた場所しか記録されない。例外としては、地図を手に入れて、それをシステムに読みとらせた時だが……うちのギルドでは、情報収集係が出来ただけだった。なんでも、特殊スキルが必要らしく、私はそれを持ち合わせていなかった。
なかなかのレアスキルで、レベル制限もあった。とはいえ、これはもはや運営の悪意しか感じられないレベル制限だったのだが。
曰く、レベル3になる前でないと、習得できないのである。
地図の出回る数も少なかったが、スキルの使い手が少なすぎたせいで、全く取り合いにはならなかったという話だ。やはり、運営の悪意しか感じられない、鬼畜スキルである。
そんな事はともかく。今現在の状況について説明しなければなるまい。
ここは、ギルド『九天』のコートルヴィル支部内部である。私とシルは、これからの一斉試験に向けてのアップを済ませ、待機している状態だ。他にもちらほらと挑戦者が見える。
ギルド九天では度々、本部からの指令で、『無名登録員』を募集しているらしい。
表向きは、ハンターギルドや九天でカードを発行出来ないような貧民にも活躍の場を与えるため、となっている。貧民は高等な教育を受けられない。結果、稼ぎがなく、子供に高等教育を受けさせることができない。
スラム街にありがちなこの問題を解決するために設けられたシステムらしい。
飽くまで、表向きの話だが。これを真に受けてやってくる冒険者などいないし、いたとしても、不合格で返品される。
本来カードの発行には手数料がかかる。それができないほどの貧民を受け入れるために導入されたシステムだが、『無名登録員』と呼ばれるように、正規登録員との区別のため、カードに名前を登録しないシステムになっている。
これはつまり、犯罪者でも潜る込める、ということだ。
ギルドというのは大きな後ろ盾となる。ギルドの裏には大抵貴族がくっ付いているのが最近の風潮らしい。九天の場合は、貴族どころか、王族が後ろ盾になっている。
つまり、たとえ偽名であっても、ナンバーしか表示されないギルドカードでは分からないし、貴族の後ろ盾を持っている故に、大抵の場所の身分証明となる。
これは一見とてつもないリスクのように見えるし、危険しかないように感じる。名前を表示させれば問題ないのに、という意見も、純粋な人たちからはあがっている。だが、幹部たちは全く聞き入れる気配はないらしい。
というのも、そこに狙いがあるからだ。
この試験は、異常に難しい事で有名である。無名にも関わらず、迫害や差別を受けていない事からもそれが分かる。
だが、よく考えてみよう。貧民が、そこまで強くなれるものなのか。
つまり、犯罪者でも強ければ受け入れるという事である。これはむしろ、推奨されていると考えていいだろう。これは捨て駒として役に立つからだ。
他にも、わがまま貴族がこっそり遊びに来るだとか、スパイ組織があるだとか、いろいろ噂の絶えない、正に謎に包まれたグループが『無名登録員』なのである。
そして、私達はその試験を受けようとしていた。
理由は簡単。私のステータス捏造スキルが、どこまで通用するか分からなかったからだ。おまけに、自分の体にしかかけられない魔法の類らしい。レベルが低いせいでもあるのだろうが。
ハンターギルドでは不正を防ぐため、捏造破りなどと呼ばれる魔法がかけてあるらしい。最近王家お抱えの魔導師がステータス捏造スキルについて知り、それに対する反魔法を生み出したという話を先程聞いたのだ。
私たちにとっては迷惑だが、世間一般にとってはごく当たり前の処置だろう。故に、責めはしない。
ちょっと不貞腐れたけど。
試験は500点満点で、読み書きにそれぞれ50点ずつ、残りの400点は実技である。全4種目、それぞれ100点ずつだ。
私は読み書きに関しては何ら問題はない。日本のゲームだからか、文字は全部ローマ字なのだ。なぜ日本語でないのかと言えば、恐らく雰囲気の問題だろう。このファンタジックな世界でいきなり漢字が登場してきたら、私なら確実に笑ってしまう。
とはいえ、漢字が全く出て来ない訳ではなく、古代文明文字として、英語とともに登場してくる。この世界では、古代文明は研究されていないようだけど。だがまぁ、これも1000年前の知識である。
ローマ字も若干崩れてて読みにくいが、読めない事はない。という事は、私が書くローマ字も、恐らく読んではもらえるだろう。
長年のうちにこれだけしか形が変わらないというのは、ある意味奇跡かもしれないな。全世界共通言語だからかもしれない。
実技試験は、弓、剣、対人、対魔の四つの種目に分かれる。
弓、剣はそれぞれ遠距離攻撃と近距離攻撃の事で、武器は指定されていない。
弓試験は的が用意されていた。そこに攻撃を当てるのだろう。
剣試験はバッティングっぽかった。一目見た感想だから、実際にはよく分からないけれど。とんでくるこうげきでも斬るのだろうか。
対人試験はその名の通り、対人戦闘を模していて、武器は自由。遠距離でも近距離でも戦える。
勝敗判定は審判が行い、基本、致命傷を負うか、それに相当する攻撃を受け止められなかったとみなされた時に負けとなる。もちろんの事、ギブアップも認められている。
対魔試験は最終試験で、実際に森に出て戦闘するらしい。全員一斉に移動するとかで、なかなかの大移動になる。ただ、話によると、大抵の人が対人試験で心を折られ、リタイアしていくらしい。
なんて恐ろしい試験なんだ。
そして現在、筆記系試験が全部終了し、実技試験の順番待ちをしている、というところである。
「シルは試験、どうだった?」
「……さっぱりだった」
「あらら」
まぁ、人間の言葉なんて分からないだろうな。ステータスウィンドウは、こちらの世界の人ーーというか獣?ーーには開き方の感覚がわからないらしく、シルもまだ開けていない。
このウィンドウは便利なもので、この試験がクエストとして受理されていたため、何となく書いてある事が理解できるという優れものだった。理由とか原理とか、その辺については聞かないでほしい。ついでに、試験中に何を遊んでいたのかという事についても言わないでほしい。
小学校低学年レベルだったせいで、暇だったんだよ。
「ま、気にしない、気にしない。どうせ、一発で受かるとは思ってないし」
何せ、運営並の鬼畜クエストである。今の所、私にはそこまでの脅威には感じられないけれど、対人試験で死亡しない事を祈ろう。
むっとした様子のシルが、名前を呼ばれて立ち上がった。弓試験の順番が回ってきたという事だろう。
「シルは近距離型なんだから、無理はしないで」
「……言われなくても」
シルはたった一言そう言って、一番左の部屋に入っていった。
シルを見送って数十秒後、リリスの名前で呼ばれた。何とも慣れないものである。ゲームサービス開始直後、ミアという名前に違和感があったが、あれと同じ感触である。
「はい」
私は静かに立ち上がる。今気付いたのだが、そういえば武器を持っていない。杖もないわけだが、これは大丈夫だろうか。前代未聞ではなかろうか。
とはいえ、私の杖の使い方は幾らかおかしいし、シルの場合も、生半可な武器では確実に一瞬で壊れる。できれば、耐久度が存在しない、レジェンドアイテムが欲しいところだ。
レジェンドアイテムが壊れる事は殆どない。殆どないと言うからには一度壊されたのだが。
ここでまたもや守護者の登場である。彼のユニークスキルに、武器破壊というのがあり、なんとレベルマックスだったのだ。冗談じゃない。チートである。運営最低。クソ運営が。
ーーともかく。
なんか腹が立ってきたから、とりあえず、的でも何でもぶち壊そう。うん、そうしよう。
表向きには、火力の確認である。待っていろ運営。そして、罪のない人、ごめんなさい。
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