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恋人宣言

今回からは視点が浩司に戻ります。

「はぁー」

「なんだ浩司。今日は一段とだるそうだな」


教室でだるそうにため息をついていると涼太が声をかけてきた。


「まぁな。ちょっと色々あってな」


色々というのは無論、偽の恋人のことだ。昨日放課後話し合った結果、全部小夜に任せるということになった。俺は小夜がすることに合わせればいいらしい。小夜がどんなアクションを取るのか分からないので全くもって不安で、ついため息を漏らしてしまった。


「色々か。なるほど、その色々のおかげで小夜ちゃんと一緒に学校に行けるようになったのか。それにもう一人可愛い子がいたという噂じゃないか。どういうことだ?答えろ浩司!」

「何をそんなに怒ってるんだ。大体、もう一人の可愛い子って妹だぞ?」

「妹だと!?お前の妹があんなに可愛い訳ないだろ!もっとましな嘘をつけ!」


まぁ確かに小雪は可愛い。肩までの黒髪は綺麗で胸は控えめだが、モテるのも分かる。実際中学の時も良く告白されていた。なぜか全部断ってるみたいだが。だがあくまで妹である。怒られる筋合いはない。


「そんな嘘つく理由がどこにある」

「ぐっ確かにそうだな。だが小夜ちゃんとも一緒だった理由はなんだ」

「それは……」

「あら浩司くん。はっきり言っちゃえばいいじゃない」


急に横から声が聞こえてきた。そういえば小夜は隣の席だった。話の内容は丸聞こえだろう。


「倉間さん、はっきり言うってどういうことだ?」


涼太のやつさっきは小夜ちゃんなんて呼んでたくせに本人を前にしたら倉間さんと呼ぶらしい。


「聞きたい?」

「もちろん」

「じゃあ言うわね。私と浩司くんは付き合ってるの。だから一緒に登校するのも当然だわ」

「「なに!?」」


クラス中から驚いた声が聞こえてきた。まぁ小夜がクラス中に聞こえる様に言ったので当たり前だが。もう既に覚悟は出来ていたので俺は動じていない……つもりだ。みんなに喧伝しないと男避けにならないのだ。こうなることは偽の恋人になることを了承した時から覚悟していた。


まぁ覚悟していたといっても俺の平穏無事な高校生活が崩壊したと思うと泣きたくなるが。


「どういうこと?倉間さんが柊くんと付き合ってるって」

「てか柊って誰だっけ?」

「ほらいつも高梨さんと一緒にいる……」

「あぁ、あの冴えないやつか。なんであんなやつと……」

「ていうか私、柊くんって高梨さんと付き合ってると思ってた」

「あっ私も」

「柊のやつ。絶対ゆるさん。後悔させてやる」


クラス中から色んな声ご聞こえてくる。てか2年間も一緒に居たのに名前を覚えられてないなんて悲しすぎる。そして最後のやつは怖い。後悔させてやるって恋人になったことをか?それならもう既に後悔している。まぁ最後のやつの正体は林道だが。


「おい浩司、一体どいうことだ?」


少し落ち着いたらしく、涼太が尋ねてくる。


「とういうこともこういうこともない。言葉の通りだ。俺と小夜は付き合ってる」


そう言うと涼太は完全にフリーズした。


友人を騙すことに罪悪感を覚えないでもないが、ここで付き合ってないと言うわけにはいかない。与えられた仕事をしっかりこなすのが俺のポリシーだ。ここで与えられた仕事は小夜に話を合わせることである。


「おいお前ら。席につけ。ん?何か教室がいつもより静かだな。まぁ静かで困ることもないか」


それからすぐに佐藤先生がやってきて、凍りつきシーンとした教室で連絡事項を伝えていった。





「倉間さんどうして柊くんと付き合ったの?」

「好きなところは?」

「アイドルって恋人とか作っちゃっていいの?」

「どっちから告白したの?」


今は1時間の終わりの休憩。俺は自分の席から女子に囲まれている小夜に目を向けた。男子は気後れするらしく黙って小夜の言う言葉に耳を傾けている。小夜にとっては女子だけの方が好都合だろう。


「どうしてって言われると一目惚れかしら。好きなところは性格?事務所にはもう報告したから問題ないわ。内の事務所は恋人禁止とかないから。告白したのは私ね」


恋人禁止ではないことは昨日聞いていたので問題ない。だが一目惚れなんてわざわざそんな煽る様なことを言わなくても……。



結局その後すぐにチャイムが鳴ってことなきを得たが、次の休憩、またその次の休憩と4時間目の終わった後の昼休憩まで小夜は質問責めにされていた。全くもって女子高生の恋愛脳は恐ろしい。





「まったくひどい目にあったわ」

「あはは。小夜にちゃん凄い囲まれてたね」

「1年の教室にももう広まってますよ。冴えない男が小夜さんを落としたって」

「ぷっ浩司くん冴えない男だって」

「笑うな!自分が一番よく分かってる」


今俺たちは生徒会室にいる。昼ごはんを食べる為だ。小夜も俺とご飯を食べるからと言うと、ニヤニヤして送り出されて、無事抜け出すことが出来たらしい。


「ちょっと聞いていいか?」


俺は今日の朝、一緒に4人で登校した時から気になっていたことがあったので尋ねてみる。


「なにかな?」

「なんか急にめっちゃ仲良くなってない?」


そうなのだ。なぜか今日の朝登校した時からいきなり仲良くなっていたのだ。おそらく昨日3人で話があると言って姫乃の家に俺以外で行ったことが関係あると思うんだが。


「そうかな?昨日いっぱい話したからね」

「一体何の話をしたんだ?」

「それは秘密だよ?ね、小夜ちゃん、小雪ちゃん」

「そうね。とても浩司くんに言える話じゃないわ」

「お兄ちゃん女の子の話を聞こうとするなんて変態」


俺に言える話じゃないって何か怖い。それに俺は別に変態じゃない。


ともあれそんなこんなで昼ごはんを食べ終わり教室に戻った。




それからは姫乃が小夜を囲んでる女子に声をかけることで小夜は囲まれることなく、平穏に時間が過ぎた。俺は相変わらず睨まれていたが。特に林道なやばい。いつかあいつに刺されるんじゃないかと戦々恐々としながらもその日は4人で帰宅した。


ちなみに帰りは生徒会の仕事で遅くなり帰っている生徒が少ない時間帯になるので注目される心配はないので安心だ。まぁ仕事といってもほとんどないので駄弁ってるだけだが……。主に俺以外の3人が。どうやら俺のボッチスキルは仲良い者同士でも有効らしい。


なにはともあれ今日で小夜と恋人関係にあることはばっちりアピールできたであろう。

それが良いことなのか悪いことなのかは微妙だが。

読んでいただきありがとうございます。

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