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異界の魔神 【改訂版】  作者: 飛狼
1章 魔神誕生
8/51

8.廃墟の塔と黒い番犬(6)


 ――これ以上あれこれ考えても仕方がない。今の時点では、情報が不足して何も分からないのだから。


 そんな訳で暇を持て余した俺は、まだユキが眠っている間に、自分のステータスを確認してみる事にした。


「ステータスオープン」


 と唱えると、頭の中に自分の情報が浮かび上がってくる。



ステータス

名前   :タクミ・タナカ

年齢  :50

職業   :異界の魔神

称号   :恐怖の大王

level  :1

HP   :−/−

MP  :−/−

神力P :5048


----------------------


筋力  :2

耐久力 :2

素早さ :2

知力  :2

魔力  :2

精神力 :2

器用さ :2

運   :2


----------------------


スキル

神力 神眼 魔眼



 相変わらず、HPとMPの欄には数値がない。

 これは、今の俺が仮の姿で、あの空間が本体だからだと思う。それが反映されての事なのだろう。俺って一応は、この世界では不死身だからだ。


 それで問題のレベルなのだが、


 ――おっ、レベルが……って、これは喜んで良いのか微妙。


 何故か、レベルが1に上がっていた。


 例えひとつでも上がれば嬉しい……かな? 

 もしかすると、MAXで10とか……それもないか。まぁ、0から脱したから良しとしよう。

 しかし、魔獣を倒した訳でもないのに不思議だ。そういえば、ステータスに経験値とかもない。あと、俺がやった事は……ユキに祝福を与えて眷属けんぞくにしたぐらいか。眷属を増やせば、レベルが上がるのだろうか。


 ――うぅん、よく分からん。本当にヘルプ機能か、取り扱い説明書が欲しい。


 それ以外に変わったとこは、


 ――あぁ、神力ポイントが増えてるよ。


 残りポイントが、5048に増えていた。これは正直にかなり嬉しい。これでポイント貧乏から脱出できるからだ。


 で、能力値だが……これも微妙だった。

 確かにレベルはひとつ上がっただけだが、それでもオール2はないだろうと思う。レベルがひとつ上がっただけだから、期待する方がおかしいのか?

 しかし、まだまだ俺の最弱魔神ライフは続くのかと思うと……ちょっと情けない。


 次は神眼と魔眼だが、レベル1になって使えるようになった。

 が、レベルに依存しているようなので、1では期待できるはずもない。


 ――まぁ、これは後でゆっくり確認するとして、先に神力スキルを調べてみるか。何かスキルが使えるようになってるかも知れないし。ま、あまり期待してないけど。レベル1だからな。


 さっそく、神力スキルの項目を確認してみると、


「えぇと…………ひとつだけ使えるようになってるな」


<神矢>

指先より神気を飛ばす。

ポイント数により威力が変わる。


 ――おっしゃあ!


 ようやく攻撃手段ができたか。これは、かなり嬉しいかも。でも、威力がポイント数で変わるのが少し引っ掛かるが……ま、けど、これで俺もばんばん魔獣を倒して――


「ふふふ、今この時より俺の最強伝説が始まる」


 ……いや、目指さないけどね。俺の性格上、他を押し退けて自分だけがとは思えない。俺は根っからの草食男子だ。


 ――それが何か悪いか!


 どうせ、間違えてこの世界に来たんだ。高望みせず、この世界の隅っこでのんびりと暮らせれば良いさ。

 それに今は可愛い相棒が――ちらりと、未だ眠り続けるユキに目を向ける。


 体長は五メートル程と大きくなり、全身を覆う体毛は、艶やかな漆黒のものへと変わっていた。体毛と同じく真っ黒に染まった鉤爪かぎづめは、ナイフのように鋭く尖り、触れるだけですっぱりと切れそうだ。全身を支える四本の太い脚は、力強く大地を駆け抜けそうだった。

 そして見るからに凶悪な相貌には、口元から二本の牙がにゅうと伸び、額からは三十センチ程の捻れた黒いつのが一本、にょっきりと生えていた。周囲に禍々しいオーラを撒き散らすその姿は、一度見たら夢でうなされそうだった。


 なんだか、以前より更に怖くなってるんですけど……目覚めたら俺、喰われるんじゃねぇの。

 凶暴そうな姿に変わったユキを見て思う事はひとつ。


 ――俺、ひっそり生きていけるかなぁ……。


 ま、今はそれよりも、問題はレベルの上げかただよな。ユキに歩み寄りながら、それらレベル関係の事をズバリ、【叡智の指輪】に聞いてみる。


「レベルって、どうやって上げるのかなあ?」


《ソレハ分カリマセン》


 素っ気ない答えが返ってくるだけだった。


 あらぁ……ま、【叡智の指輪】も万能ではないか。分からないものは仕方がない。


「では、今回は何故上がったんだ?」


 駄目もとで期待せずに聞いたのだが、今度はきちんと解答があった。


《今回ハ、レベルガ上ガッタノデハナク、封印ガ一部解除サレタタメ、レベルガ戻ッタノデス》


 ん? 上がったのではなく戻った?

 どういう事だ?

 上げるではなく戻る……。


「そうか!」


 思わず大声が出てしまう。その声に反応したのか、ユキの耳がぴくりと動いた。それを横目に見ながら考える。


 中途半端にステータスなど有るから勘違いしていたのだ。このステータスは俺がゲームのようにと願ったから、俺だけに与えられた特別なもの。この世界はゲーム等では断じてない。あくまでも現実の世界なのだ。だから、魔獣や怪物と戦って倒したからといって、レベルが上がるとか有り得ない。本来はあったはずの能力が、封印された事によって消失してただけなんだ。

 今回、ユキに祝福を与えた事により、その封印が少し緩んだ?

 だからレベルが戻った? 

 そう考えたほうが、しっくりとくる。


「そうだ! そうに違いない!」


 といっても、その封印をどうやって外せば良いのか分からないけど……。


 また大声を出してしまったので、ユキが完全に目を覚ましムクリと起き上がってきた。

 クンクンと鼻を鳴らして、俺に近付いて来る。


 ――俺の事、覚えてるよね。


 あまりにもユキの姿が変わったので、不安を覚えてしまう。大丈夫だとは思うけど――何だか、俺とユキとは見えない糸で結ばれたような気がするからだ。それは例えるなら、魂の絆といえる物だった。

 それでも――。


「えぇと、ユキさんですよね? 少し容姿が変わったようですが、大丈夫なのでしょうか?」


 どうしても、恐る恐るといった様子で呼び掛けてしまう。


「バウ!」


 ひと声大きく吠えると、嬉しいそうに俺の周りを、くるくると走りはじめた。


「そうか、俺の家族になれてそんなに嬉しいか。俺も嬉しいよ」


 飛び跳ね回るユキを、微笑ましく眺めていたが――ユキの動きは、よほど嬉しいのか、徐々に激しいものへと変わっていく。鋭い爪に床は捲り上がり、額から伸びるつのが天井を削っていくのだ。

 それを見て、青褪あおざめる俺。


 ――どこの大怪獣だよ!


 マジでやばい。戯れ付かれるだけで消滅させられそうだ。と、その前にこの塔が崩壊しそうだよ。


「ユキさん、もう少し落ち着こうね……」


 ユキを宥めながらひとつ思い付く。それはステータスにあった【神眼】。さっそく、ユキに対して使ってみる。

 すると、どうだろう。眷属かぞくになったお陰なのか、ユキのステータスの全て、が頭の中に浮かんできたのだ。

 それが……。


ステータス

名前   :ユキ

年齢  :0

種族  :異界の魔犬

職業   :魔神の番犬

称号   :犬神

level  :68

HP   :12000/12000

MP  :560/560


-----------------------

筋力  :820

耐久力 :1150

素早さ :1500

知力  :350

魔力  :230

精神力 :570

器用さ :690

運   :710



----------------------


スキル  SP 120

火のブレス

闇のオーラ

地象操作



 ――えぇと…………もう、ユキが恐怖の大王で良いんじゃね。


 しかも、俺より知力が高いってどうよ。これでも俺は、大学卒だぞ。三流大だけど。それでもだ。他の能力に付いても文句を言いたい。このステータスの差は酷すぎる。いくら優しい俺でも、クレーマーに大変身だ。

 それに白いからユキって名付けたのに、真っ黒になってるし。

 もういいや、疲れたので寝る。ふて寝する……トホホ。


 いや、冗談抜きで夜も遅いから寝ようと思ったのだが、そこで問題がひとつ発生した。俺が産み出した空間に戻ろうとして、ユキをどうするか困ってしまう。あの空間は俺ひとりでも、足も伸ばせないほどの狭さだった。とても、ユキまで入りきれない。


 ――どうするかな。


 せっかく家族になれたのに、はなればなれで眠るのもどうかと思うし。

 そんな事を考え、何気なく【異界門】の向こうを覗いて驚いた。


「えっ……何これ?」


 俺の産み出した空間が広がっているのだ。

 一歩踏み込み、ぐるりと周りを眺め呆然となる。

 空間の大きさは縦、横、高さが50メートル程にも広がっていた。

 しかも、更に驚く事が――予期せぬ衝撃が、背中にドンッとぶつかる。思わずつんのめって、前へ派手に転がってしまった。

 突然消えた俺に驚いたユキが、慌てて俺を追い掛けて来たのだ。どうやら眷属となったことで、ユキもこの世界へ自由に出入りできるようになったようだ。


 それは良い。ユキは家族だから……驚くのはそこじゃない。

 バウバウと鳴きながら駆け回るユキ。その足元から土が、大地が産まれ広がっていくのだ。


「何が、どうなってる?」


 俺の疑問に答えてくれるのは、何時でも便利な【叡智の指輪】だ。


《封印ガ解ケ、コノ世界ガ成長シマシタ。後ハ、ユキサンガ、コノ世界ニ影響ヲ与エマシタ》


 ……俺が世界を広げユキが影響を与えた……そうか、俺の本体はこっちだったな。封印が解けレベルが上がったなら、当然こっちにも変化があるか。それが、この空間の大きさ。


「……俺の世界……俺が産み出した新しい世界か」


 今までは、世界というには狭すぎた。この広さに、ようやく世界としての実感を覚える。


 ――それにしても、ユキが産み出す地面は何だろう。

 

 改めて、ユキのスキルの詳細を、【神眼】で確認する。


種族

<異界の魔犬>

魔狼が異界に転移した際、位階を上げクラスチェンジした魔犬。


 あれ……ユキは狼だったのか、犬だと思ってたよ。魔狼が魔犬に変わったのは、俺が原因かな?

 まあ、狼も犬も同じ様なものだよね……はは、すいません、ユキの母ちゃん。


 あと、俺には種族とかないのにユキにはある。何故だろう。

 それに、俺の世界に転移した? 

 転移は転生みたいなものかな。年齢が0になってるし。

 しかし年齢が0って、ユキは赤ん坊みたいなものなのか?

 とてもそうは見えないけど。


職業

<魔神の番犬>

常に魔神の傍で付き従い魔神を守護する。


 俺の番犬?

 まあ、何となく分かるけど……ユキをチラ見して、過剰防衛にならなきゃ良いけどと、ちょっと心配。


称号

<犬神>

犬種を統べる犬族の王。

地属性の下級神。


 ユキは犬族の王、いや女王か。いつの間にって感じだけど、俺の世界には犬種はユキしかいないし。ていうか、俺とユキの二人しかいないけどさ。

 そして、問題は最後の一文だ。

 地属性の下級神って…………何それ、もう強そうなの通り越して神ですよ。


 はは、俺は神様を創っちゃったよ!?


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