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異界の魔神 【改訂版】  作者: 飛狼
1章 魔神誕生
19/51

19.カエル男とナマズ男(1)

本日2話目


「ゲロゲーロ陛下に祝福を頂き感謝に堪えませんゲロその上ゲロ我らが同胞のさまよえる魂をゲロ救って頂き感激で御座いますゲーロ」


 魂を救った?

 ……あぁ、沼から天に昇って行ったあの光のことか。やはり、あれはこいつら水妖精の魂だったみたいだな。


「ゲロ我らは元が精霊ゲロあのままではゲロ邪精へと堕ちていたに違い有りませんゲーロ」


 ……邪精ねぇ。そんなホラーぽいのも居るんだ。さすが異世界だ。まぁ、偶然とはいえ、救えて何よりだった。俺もちょっと誇らしい。


 しかしそれにしても、こいつはやっぱり「ゲロゲロ」と……ウザい。

 けど、色々と気持ちが萎えそうであまり気は進まないが。今はこいつとしか話せない訳で……取りあえず、こいつからこの世界や周辺の話を聞くしかない。


「あぁ……少し聞きたいのだが、この世界やこの周辺について」


「ゲロゲーロこの地の事でございますか……まずゲロ我らはこの世界の事をナルリーンと呼んでおりますゲロ……」


 そこまで言った後で少し迷ったのか、ゲロゲーロはコテンと小首を傾げる。


 おい、ユキならまだしも、お前がやっても全然可愛くないぞ。逆にすげぇ腹立つわ!


「……陛下は此の地にご降臨なされてまだ間のないご様子ゲロそれならばゲロ詳しくご説明致すのに適任の者がおりますのでゲロご紹介しても宜しいでしょうか? ゲーロ」


 詳しい者ねぇ……何故か、悪い予感しかしないのは気のせいかなぁ。

 頷き了承の意志を伝えると、近くにいた河童が外へ走り出した。どうやら呼びにいったようだった。


「ゲロゲーロその者はこの沼に150年程住んで居りますゲロ我等とは種族こそ違いますが同じ妖精種でしてゲロこの沼の長老の様な存在でございますのでゲーロ」


 沼の長老さんか。それならきちんと挨拶してた方が良いと思うが……やはり、不安を感じるのは何故だろう。


「ゲロゲーロ昨日は長老も我等に協力して作戦に参加しておりましてゲロその際に陛下の祝福をお受けした次第でございますゲーロ」


 えっ、昨日の戦いにもいたの。で、俺の祝福を受けたと……益々悪い予感しかしないんですが。


 しかし、待ってる間が暇だな。この際、ゲロゲーロにも、ちゃんとした名前を付けてやるか。見た目と声はあれだが意外と真面目そうだし、いつまでもゲロゲーロと呼ぶのも気が引ける。


「そうだな。お前に名前を付けてやろう。これからは『サンペイ』と名乗るがよい!」


 何となく、河童ならサンペイかと思って名付けたが。


「ゲ、ゲロゲーロ! 有り難き幸せゲロこのような見目麗しい姿と美声を授けられたた上にゲロ名前まで頂けるとはゲロこれよりは命にかえて忠誠を誓いますゲーロ」


 何! その姿と声が美形、美声だと。お前たち河童の感性を疑うぞ!

 もしかして、河童たちの中ではモテモテイケメン野郎なのか!

 ……やっぱりお前はゲロゲーロだ。


 といっても、一度名付けた名前は変更出来ないので、心の中だけでもゲロゲーロと呼ぶと、固く誓ったのだった。


 などと、心の中の葛藤と戦っていると、何故か周りの河童たちが熱い視線を送ってくる。

 よく見るとゲロゲーロが、仲間たちに自慢していた。


 ……お前かぁ!

 これって、もしかして名前が欲しいとアピールしてる?

 ……それは無理だから。200を越える名前とか、俺にはそんなボキャブラリーも才能も無いから……。


 あ、そうだ。良い方法を思い付いた。


「サンペイ、お前が他の者達に神言語を教えるのだ。覚えた者には褒美として名前を授けよう」


「ゲロゲーロ御意にございますゲーロ」


 俺の話が伝わると、途端に周りの河童たちが「ケロケロ」騒がしくなったが、もう知らん。

 後はゲロゲーロに丸投げだ。

 ふふふ、これでゲロゲーロも忙しくなり、俺の近くで「ゲロゲロ」と騒がしく言う事もない。一石二鳥の作戦だ。俺って天才かも。


 で、それは良いんだが、さっきから背中をツンツンと、誰かがつつくんですけど。


「ユキ、あとちょっとだから。もう少し待っていようね」


 振り返ると、待ってる事に飽きてしまい、俺にちょっかいを掛けようとするユキがいた。

 宥めるようにユキを撫でていると、長老? らしき者が入口から入って来た。


 ――えぇと…………ナマズ? 


 鯰人が現れたって、何それ!


 そこにいたのはは、体長が3メートルを越える真っ黒なナマズ。額からは捻れた黒い角がのび、口の周りに長いヒゲが6本生えてピュルピュル動いていた。

 体長こそ長いが、胴回りは50センチ程しかない細長い体形。その体から飛び出た小さい手足を動かし、ヨタヨタと2足歩行で歩いてくる。

 実に歩きづらそうで……何ともシュールな光景だった。


 取りあえず、神眼で確かめてみる。

 それが――



ステータス

名前 :−

年齢 :0

種族 :異界の半魚人

職業 :魔神の御意見番

称号 :水神大鯰

level :56

HP :5200/5200

MP :6500/6500


--------------------−


筋力 :460

耐久力:850

素早さ:350

知力 :600

魔力 :750

精神力:670

器用さ:250

運  :400


----------------------


スキル  SP 50

水のブレス

大地震

水象操作



 ……このナマズ男も水属性の下級神だった。

 いや、あんた。被ってるよ。ゲロゲーロと。

 しかも半魚人って……いやいや、どう見ても半分どころか九割魚人だから。

 それに、職業の『魔神の御意見番』って、何だよ。まただよ。この魚人も、勝手に就任してるよ。


 目の前にやって来た魚人が、長いひげをピュルピュル動かし挨拶してきた。


「ギョギョギヨョョョ……!」


 あっ、この魚人、【神言語】のスキルを持ってねえぞ。

 お前はどうやって俺に意見するつもりだ。そこを、こんこんと問い質したい。


 ……また、ややこしいのが来たよ。話も長くなりそうだし――ちらりと横にいるユキを眺める。

 退屈なのか、さっきから「ウゥウゥ」と唸って、俺を早く早くと急かしてるし。


 はあぁ、なんで俺の家族になったのは、こんなのしか居ないんだよぉ!


 もう勘弁して欲しいよ。

 俺は天を仰ぎ、ため息を盛大に吐き出した。



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