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異界の魔神 【改訂版】  作者: 飛狼
1章 魔神誕生
18/51

18.呪いの沼とカエルの合唱団(10)


 って、あれ?

 こいつ今……日本語を喋ってなかったか?


「……今、何か喋ったよな?」


「ゲロゲーロ、神王陛下のゲロおかげをもちましてゲロ神言語をゲロ習得いたしましたゲーロ」


 それでも、「ゲロゲロ」と濁声は合間に挟んでくる訳で……余計に鬱陶しいぞ!


 それにしても、神言語って日本語の事か。まぁ、確かに俺は魔神だし、喋ってる言葉は日本語だけどさ。


 あれ、待てよ!

 もしかして、この世界に転生してから会話したのって……うわぁ、初めて会話したのがゲロゲーロって、マジかよ。

 嘘だろ。なんか、納得できないぞ!


 ――初めての会話が、ゲロゲーロとかあり得ねぇ!


「やっぱり、初めては美人の女神様とかさ、相棒となる可愛いヒロインの登場とかじゃないのおぉぉぉ……!」


 またしても、心の声が駄々漏れして叫んでしまった。

 あれ、何か後ろからツンツンと……。


「ガウガウ!」


 振り返ると、何故かユキがお怒りのご様子。


 ――それ、本当に痛いから、つのは止めてもらえるかな。


「さっきのは言葉の綾だから。俺の相棒はユキだけで、一番可愛いのもユキだから……あっ!」


 ユキが突然、角で俺を引っ掛け背中へと放り投げた。


「な、何を……」


 慌ててユキにしがみつくが――これは、まさかの……。


「あ、危ないって……ひいぃぃぃ止めてえぇぇぇ……!」


 まさかのデッドコースターが始まった。


 またしても、雄叫びを上げて沼の周りを暴走するユキ。


『マスターノ封印ガ一部…………』


 あ、【叡智の指輪】が何か言ってる。

 だが、暴走するユキのお陰で、よく聞き取れない。

 どうやら、封印がまた少し緩んだようなのだが……。


 もうユキの好きにさせるしか無いと諦め、その背中にしがみ付き、ふと、沼に目を向けると――沼一面が光り輝いていた。さっき発動させた【神オーラ】の白光が、沼を覆っていたのだ。眺めていると、その光は弾け数多くの粒子となり、キラキラと天に昇っていく。


 ――あれは?


 ユキの母ちゃんの時と似ている。と、思った時に、クスクスと笑う声が聞こえてきた。

 そして――


『神王様、ありがとう……』


 脳裏に響くお礼の言葉。


 もしかすると、あのワニダコに命を奪われた水の妖精たちかも知れないな。


 その声に、ようやく沼の平和を守ったのだと実感ができた。そして、故なく命を奪われた水精たちの、魂をも救えたと誇らしい気分に…………あっ!


「あがあぁぁぁ……!」


 倒木が、俺を吹き飛ばしたのだった。

 霞む意識の中で、


 ――しかし、神王様って誰? 俺のこと?


 そしてまた、俺の意識はプツリと途切れた。




 結局、あの後ゲロゲーロたちはユキの暴走が始まったため、何となく流れで解散したようだった。

 今回の件では多くの眷属――家族のようなものが増えた。俺がその家長になるのだが、最初から何とも締まらない姿を見せてしまったものだ。まぁ、俺らしいといえば俺らしいが……。

 それに、ユキが楽しんでたみたいだから良いけど。今回はユキが一番頑張ったのだから。


 後はそうそう、俺のレベルがまたひとつ上がっていた。【叡智の指輪】はその事を知らせたようだが、あの時の俺はユキの暴走でそれどころではなかったから。

 しかし、何故か今回も、レベルが上がったのはひとつだけ。今回は祝福の大安売りしたにも拘わらずにだ。回数なのか、人数のせいなのか、相変わらずさっぱり分からない。

 今回は能力値自体は変わらず、使える神力スキルがひとつ増えていた。

 それが――


<加護>

眷属に加護を与え能力を上昇させる。

上昇率は親密度により個体差あり。

必要 P 500


 ……なんだろう。俺の周りだけ凄くなっていくような気がするけど。

 それと、祝福より加護の方がポイントが多いとかどうなの。普通は逆じゃね。もう、ホントに意味が分からんよ。


 そのポイントだが、また5000増えて5005になっていた。

 あの祝福はぎりぎりだったみたいで、危ないところだったのだ。あの状況で、「祝福だめでしたぁ」は顰蹙ひんしゅくものだったろう。ポイントが足りて本当に良かったよ。

 それと加護については今は保留とした。直ぐには必要なさそうだし、これ以上ユキが強化されると、戯れ付かれるだけで本当に此処へ戻されそうだからだ。

 その日は、それだけ確認して就寝した。ユキは勿論だし、俺も初めての戦闘に精神的にかなり疲れていたのか、直ぐに寝入ってしまった。


 で、翌日の朝、俺とユキは俺たちの世界を見て廻っていた。この世界が、また新たに広がっていたからだ。


「しかし……見事に何もないなぁ」


 そこは、500メートル程の真っ白な空間に、ただ、平らに大地が広がる世界。


「バウバウ!」


 ユキが嬉しそうに、端から端まで走り回っている。

 本当にユキは元気だよな。昨日はあれだけ動いたのに。

 おっ、さっき端まで行ったと思ったらもう帰って来たよ。

 あれですか、ユキはオリンピックを目指してるとか? 


「ならば特訓だ!」


 俺は鬼コーチ? と化し、それから半日近く遊んだけど……ユキはしつこい。俺の方が先に疲れてぶっ倒れそうだ。


 ――このままでは、まずい。


「えぇと、ユキさん。少しお腹がすきませんか? 今から一緒にスイカでも、どうですか?」


「バウ?……バウバウ!」


 おおっ、了解してくれたようだ。やはりユキにはスイカが一番だ。

 しかし、あのスイカはいつまであるんだろう?


 暢気にそんな事を考えつつ、俺とユキは外の世界へ向かった。


 塔に出て1階に降りていくと、ゲロゲーロと30匹程のグロガエル改め河童たちが、「ケロケロ」と楽しそうに会話していた。


 おい、いつから此処は河童達の集会所になったんだよ。


 河童たちは俺に気付くと、居住まいを正す。そして、俺の前に整列し、ゲロゲーロ氏が前に進み出た。


「ゲロゲーロ神王陛下におかれましてはゲロご機嫌もうるわしくゲロ幸いでありますゲーロ」


 そう言うと、綺麗に腰を90度に折り曲げお辞儀する。それが如何にも胡散臭く見え、眷属になってもやはりウザイ。


「……神王陛下って、俺の事?」


 問い掛けながら、河童達を改めて眺めてみる。


 河童達は身長が1メートル程に変わり、緑色の肌も、もっと濃く黒に近い色に変わっている。50センチぐらいの甲羅を背負い、2本足で立つスマートな人に近い体形へと変化していた。ご丁寧に頭の上に皿まである。完全に河童だ。

 それに対してゲロゲーロは姿こそ一緒だが、2メートル近い身長に横幅も2メートル近くと、他の河童よりかなり大きい。漆黒の肌に、何故か甲羅だけは他の河童と同じ50センチぐらいの大きさ。そして全員が、俺やユキと同じように、額から黒い捻れたつのを生やしていた。


 多分、この角が俺の眷属となった証しなのだろう。

 それにしても、他の河童達は良いとして、こいつは何?

 昨日は日本語を喋ってたのが衝撃的で、はっきりと見ていなかったが、これは黒い団子?

 何処までも転がって行きそうな丸い体型に、大きな体の割には小さな甲羅。まるで、大人がランドセルを背負っているような姿に見える。

 

 何これ、コントですか?

 お前は、お笑い系か?

 そんなに、俺を笑い死にさせたいのか?

 ま、俺は不死身だけど。


「ゲロゲーロ陛下は神々の主にしてゲロ神々の王。最高神の神王陛下で御座いますゲーロ」


 そう言うと、またしても綺麗なお辞儀をする。どこでそんな教育を受けたと問い質したくなるが――その前に、いくら気取った所で、コントにしかならんぞ。その体形ではな。


「ゲロゲーロそして此処に揃えたるはゲロ我ら氏族の中から選びぬかれたゲロ精鋭中の精鋭ゲロ陛下の為ゲロ」


「えぇと、まて待て。俺の呼び方は別に良いとしても、そいつらを護衛に使ってくれとか、そんな話だったら要らないから」


 俺は不死身だし、護衛はユキで十分。過剰なぐらいだ。そんな事を考え断ろうとしたが、こいつは俺の斜め上をいく提案をした。


「ゲロゲーロ陛下とユキ様にはゲロ当然、警護の必要もないとゲロ存じあげて御座いますゲロ此処に揃えたる精鋭は陛下の為のゲロ合唱団で御座いますゲーロ」


 はあぁぁ……合唱団って何? 普通は警護隊とか騎士団を思い浮かべるものだろ。合唱団はないよな。本当にこいつだけは…………また厄介なのを眷属にしてしまったよ。


「ゲロゲーロできましたならばゲロ合唱団に名前を頂きたく存じますゲーロ」


「その前に、その堅苦しい喋り方を止めて欲しいゲロ」


 げっ、うつった。本当にウザイわこいつ。


「ゲロゲーロ陛下に直接ゲロ語りかける事ゲロ事態、恐れ多い事で御座いましてゲーロ」


 何それ。そのお笑い系の姿で、堅苦しい喋り方しても胡散臭さが増すだけだぞ。


 周りを見渡すと、河童たちがキラキラした瞳で俺を見詰めていた。


 うわっ……これは俺の名付ける合唱団の名前に期待してる?

 俺って、名前付けるの苦手なんだよなぁ。知らんぞ。もう、適当に付けちゃえ。



「それでは、此より『ケロケロ合唱団』と名乗るが良い」


「ゲロゲーロ有り難き幸せゲーロ」


 同時に、塔の中に河童たちの大合唱が響き渡る。


 こいつら、喜んでるよ。まんま適当につけたのに、どうしよう。凄く後ろめたい気分が……すいません。もう合唱団を断れないですよね。

 はあぁ、もう良いや。勝手にやってくれぇ……。


 がっくりと、肩を落とす俺がいた。


 それにしても、さっき神々の王とか言っていたけど……まさか。


 ゲロゲーロを【神眼】で確かめる。眷属になったからか、ステータスが全て分かるようになっていた。

 それが――


ステータス

名前 :−

年齢 :0

種族 :異界の河童ガエル

職業 :魔神の相談役

称号 :水神大河童

level :51

HP :2400/2400

MP :4500/4500


--------------------−


筋力 :280

耐久力:330

素早さ:450

知力 :750

魔力 :800

精神力:500

器用さ:420

運  :530


----------------------


スキル  SP 50

水流刃

魔力操作

水象操作

神言語



 名前が無いのは、俺が名付けて無いからか?

 しかし、それだと今までは名前が無かったのか?

 こいつらの文化がよく分からん。

 年齢は前世の記憶があっても、転生したので0に変わったのだろう。これはユキと一緒か。

 種族は河童ガエル……そのまんまだな。これも、俺が河童を想像していたからだろう。

 ここまでは良い。で、問題は……職業だ!

 魔神の相談役って……いつなった。そんな役職に抜擢した覚えは無いぞ。勝手に成るんじゃない。相談役なんかいらんからな。俺には【叡智の指輪】もあるし……もう、勘弁して欲しいよ。


 そしてそれ以外にも……やはりあった。


称号

<水神大河童>

河童族の主。

水属性の下級神。


 ……こいつも、下級神か。何故だか、納得し難いが……。

 まぁ、仕方がない。後で、俺の世界に連れて行くか。多分世界が成長するはずだ。

 しかし、能力値がこいつに負けてるのは少し――いや、かなり悔しいぞ!


 それと、スキルにある【神言語】が、日本語を操る能力みたいだな。


 ついでに、他の河童達のステータスも確かめてみる。そこには称号はなく、職業も神民となっていた。


 ……下級神ではなく、俺の世界の民といったところか。


 スキルは水魔法と魔力操作がある。【神言語】のスキルはなく、能力値はゲロゲーロの3分の1程度。 全体的に、ゲロゲーロの劣化版みたいな感じだった。


 それにしても、【神言語】が無いのは痛い。

 今、俺と会話できるのはゲロゲーロだけなのか……気分が落ち込むのは何故だろう。



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