第3話・再会
時計を見ると六時半を指していた。家にいるのも暇なので少しか武士より早くついて、一杯やっていようと思い早めに家をでた。
心の向かいの会社の駐車場に車を停め道路を渡る。店の前まで行くとか換気口から焼き鳥を焼く煙が元気よくでている。8年ぶりに暖簾をくぐる。
「いらっしゃ!」
狭い店内に響き渡る元気のある懐かしい声だ。
店の中を見るとカウンターに座る40代位の男女が2人居るだけだ。武士はまだ来てない。
小上がりに腰を下ろすと、ビールを注文した。
一杯目を飲み終え2杯目を注文しようとしたとき武士がきた。
武士はニットを深くかぶりワークシャツにビンテージジーンズ足元は真っ白なエアーホース1を履いていた。武士は、身長180体重は75キロ。中学で知り合った時と、同じ体系を今も維持してるのだろう。顔は甘いマスクと言うよりも、童顔といった感じだが、昔から女には、とにかくモテた。
「よお〜セイジ先に着いてたんだ」
武士もニットをぬぎ腰を下ろす。
「セイジ太ったなー」
開口一番で嫌なこと言いやがる。
「ああ10キロプラスだ。お前は、変わらないな。」
「まーね。相変わらず食べても太らないし」
武士は痩せの大食いだ。昔本気でTVチャンピョンの大食い選手権に出ようと考えていたことがあった。
「すいません!生一つ!」武士が嬉しそうに注文する。
セイジ仕事辞めたんだって?嬉しそうに聞いてくる。こいつは俺が自分の仲間になったのがまるで嬉かのようだ。
「辞めたよ、なんかプー太郎になりたくて。」
武士がにやりと笑いながらいいね〜と一言いう
しばらくぶりの再開で何時ものパターンで昔の話で盛り上がる
ほろ酔いになってきた頃に武士が何の前ぶりなしに、突然言った。
「セイジ、ハワイ行かない?」
また始まった。昔から武士は突拍子ない事を言い出す。そして言い出すとほぼ絶対に折れない。そのおかげでいままで散々色々なことに付き合わされてきた。
中学の時など朝目覚めると僕の部屋に武士がいて、突然何を言い出すかと思うと、
「セイジ小樽の学校シメに行こうぜ。」
朝目覚めて直ぐに、何処の誰が隣の市に喧嘩を売りにいこうと思う奴がいるのだろう?ヒョードルだってきっと断る?それに僕は、武士と違いそんなバイオレンスな性格でもないし、そんな生活も望んでない。武士は3時間俺を説得した。小樽には、綺麗な女が多いから名前が売れれば、綺麗な女の子と付き合えるとか、魚介が美味しいとか、もう目茶苦茶な説得で結局は根負けした。CBRに2ケツで小樽に乗り込み、目的の中学校までたどり着く前に地元の族にボコボコにされて帰えってきたことがあった。
帰りは単車の運転が一苦労で、二人で交互に運転して帰ってきた悲惨な思い出がある。
「セイジ昔シンガーポールかどっか行ったよな。パスポート何年で作った?」
すでに武士の中では俺が行くのは決定しているらしい。
「ちょっとまてよ。まだ俺は、行くなんて一言も言ってないぞ」
すぐに言い返す。
「セイジ案外プー太郎になっても暇でしょ?周りは、みんな仕事してるし、夜は夜で疲れてるから平日は、かまってくれない。ただ時間が無駄に過ぎていくだけだよ。」
一方的に武士がまくし立てる。しかし言ってる事は、一理あるが
「お前なそんな事突然言われても、大体いく金がないよ」
武士がにやりと笑みえ浮かべ言った。
「俺、昨日バカラで大勝して今200万あるんだよ。金なら出してやるよ」
武士はどうだ参ったかと言わんばかりの表情で、おれを見つめている。
「そんなにお前に世話になって行きたくないよ」
さすがに金を出させるのは、気が引ける。
しかし武士はそんな事で食い下がるような男ではなかった。それから永遠ハワイの話を聞かされる。ハワイはいかに素晴らしい所で、この世の楽園だと何回も言われた。そのうちになぜか居酒屋の店主夫婦まで話しに加わり、ハワイの話を3人に聞かされた。段々話を聞いてくるうちに、少しずつだがハワイに興味を持ってきた。どうせ武士の言うとおり仕事を辞めたからといって何かあるわけでもない。無駄に時間を過すくらいなら、楽園?ハワイに行ってみるのも悪くないか?
「よしそこまで言うなら行ってやろうじゃないか。」
行くのが決定した時には、結構酒も効いていた。
「さすがセイジ!」
一呼吸置いて俺の目をしっかりと見つめながら
「酒の席の話でも行くのは絶対ね!明日俺チケットの手配するから。一番早く行けるチケット取るからよ。」
「任せとけ、俺の辞書には「やっぱり」という言葉は、存在しねぇ〜んだよ」
不思議な事に突然の話だったがすでに行く気満々である。昔から武士には、こんな具合に色々なことに引きずり込まれていった。武士は不思議な魅力のある男だ。敵に対しては徹底的に残忍な男ではあるが仲間に対しては気遣いがあり誰からも好かれる男だ。この男は昔から仲間の親からも絶大な人気と信頼がある。大抵不良息子の友達のリーダー格なんて、親から好かれることは少ないと思う。そんな魅力に魅せら昔からつるんできたのは、確かである。そして久しぶりの再開でハワイに行く事に。武士以外の奴なら確実に断っている。何はともあれ、どんなハワイ旅行になる事やら。