第2話・武士
昼近くに目が覚める。
昨日の酒がまだ残っていて、頭の内側から弱めのアイアンクローを決められているようだ。
昨日の夜は、前の会社の仲間と、ススキノで朝まで飲んでいた。酒が回れば回るほど、社長や元請の悪口で盛り上がり、最後の方は記憶がない。(ほんと何のために仕事辞めたのだろ・・・)
気づけばアパートの前でタクシーの運ちゃんに起こされていた。僕が覚えている記憶は、運ちゃんがやっと起きたかという顔で、僕を見ていたことだけだ。どうやって部屋に帰ったのか、すら覚えていない。ま、何時もの事だけど。
タバコに火をつけ、コーヒーを入れに行くと、ふと携帯に目やると不在の表示が出ている。電話を開いてみると、不在着信が6件も入っている。6件とも同じ番号で知らない番号だったが、掛け直してみると、えらい元気な声で
「セイジ久しぶり!」
聞き覚えのある声だが瞬時に思い出せず、アルコールが十分回った脳で考える。2、3秒無言でいると
「俺だよ武士だよ。元気してた?」
中学時代からの仲間の武士だった。しかし5年ぶりに聞く声だった。
「久しぶりだな武士。最近何やってるの?」
「俺は相変わらず仕事は、たまに墨突いてるぐらいかな。そんな事よりセイジ仕事辞めたんだって?」
「何で武士が知ってるの?」
「この前モトミに会ったときに聞いたよ。セイジプー太郎で暇してんでしょ?今日の夜飯付き合えよ」
体は酒を飲むことを拒んでいるが、久しぶりに会いたいと思った。どうせ今日も特別やる事など何もない。
「セイジ居酒屋の心わかるよね?あそこに7時にしようぜ。」
武士が嬉しそうに聞いてくる。久しぶりの再会に気分が盛り上がってきた。
「俺はプー太郎だから時間はたっぷりあるから、朝まで付き合えよ」
「大丈夫俺も似たようなもんだから。じゃあ7時に心ね。セイジ遅れるなよ」
武士と会うのは、5年ぶりだ。あいつは、変わったかな?今日は楽しい酒が飲めそうだ。