第1話・プー太郎ライフ
朝からしつこい電話の音で目が覚める。
寝ぼけた頭で時計に目をやると、八時ちょっと前だ。どうせまただろうと、思い電話にでる。
「はい星井ですけど」
「おはようございます。三年二組の里中ですけど、白幡先生いらっしゃいますか?」
三十半ば位の女がよそ行きの声で聞いてくる。
「何処掛けているの?家は星井だよ」
苛立ちを声に乗せて言ってやると、
「え?・・・・ ×65-1511新川小学校じゃないですか?」
僕は、何も言わずに乱暴に電話を切った。
仕事辞めて気づいたけど、こんなに間違い電話が掛かってきているとは思わなかった。最低でも週3回は、小学校、スパー、病院の間違い電話が掛かって来る。ゴロの良い電話番号も考え物だ。
おかげで夢にまで見たプー太郎ライフ(今は、ニートて、言うのか?)が台無しだ。
仕事を辞めて1ヶ月がたった。中学卒業と同時に、晴れて鳶職人見習いになるが、十代の頃は仲間と夜な夜な暴走(共同危険行為&無免許運転)するのに夢中なり半年と続いた仕事など一つもなかった。二十歳手前になると、人間としてまともな脳も出来てきたようで、仕事もまともに行くようになってきた。
暴走族を引退した時点で暴力団組員になるというエリートコースも、用意されていたが、あのハードな上下関係で生きていく自信は、とてもなく、後輩達に、ケツ持ちに、
「星井君は名古屋に出張に行きました」
と言わせ続け、過去の人になるのを待った。
1〜2年もすれば大体のケツ持ちだった組員がケツを割っていなくなる世界だ。
周りの奴らもエリートコースに進んだのもいるが、続いている奴など8人中1人だけだ。
20代になり仕事も真面目に取り組み、給料も上がり責任感や信頼も出来てきたが、歳を取るにつれ昔の楽しかった頃を思い出し、三十路手前にして仕事辞めた。(軽いダメ人間でしょ?)
仕事さえ辞めて自由な時間さえあれば昔のように楽しいことがあるもじゃないかと、思ったがそんなわけもなく、遊ぶ奴すら見つからない。たまに誘いに乗る奴がいても大体は土曜日。
はっきり言って仕事している時と変わらないじゃん! て、いうか仕事している時よりむしろ暇だし・・・・
見切り発車のプー太郎生活・・・・
せっかく辞めたのだから、すぐに就職だけは、しないぞ。