第三話~薬草摘みと、初めての特殊召喚~
随分時間がかかってしまいましたが、更新についてはかなり不定期になる思います。
これは書きたくなったり書きたくなくなったりするためなのでご勘弁ください。
俺はジョン・スミスだ。今は薬草を採取中で森に来る途中も来てからも危険なことはなかった。
「まあ、危険があっても困るだけだしな」
正直狼なんかが出てきたらそこで死にそうだ。まあ、この森は静寂そのものだから大丈夫だと思うがな。
「にしても地道な作業だ」
まあ、化け物と戦えと言われてもできないだろうし、こういう地味な仕事になるのも仕方ないか。
「よし!これくらいでいいかな?」
よくよく考えなくても現代人の俺がまともに薬草採取などできないわけで……まぁ、普通の冒険者より効率が悪い位だとは思うが。とりあえず30は確保できた。
「さて、日はまだ高いがさっさと帰るか」
俺はまだ初心者で、森のことも良く分かっていない。危険を回避するためにも明るいうちに帰ったほうがいいだろう。
と、言うことで俺は町に帰ってきた。帰りも特には何も無し。ここら辺はモンスターもいないし、一見した感じ危険は感じられない。まぁ油断はできないが。
「とりあえずギルドに報告しないといけないか」
俺はギルドに歩を進める。と言っても、ギルドは町の入口からそう遠いところでもない、すぐに着いた。
ぱぱっとギルドに入って、とりあえず薬草採取の報告をする。
「薬草1個につき、10カッパーですので、合計で300カッパーとなります」
「あ、3シクで受け取ってもかまわないでしょうか?」
思ったんだが、カッパーとシクの間に10円、50円みたいなのがないのって面倒な気もするな……。
「はい、承りました。それでは3シクとなります」
「ありがとうございます」
そういって、さっさとギルドを出る。別に何かあるって訳じゃないが、ダンジョンのほうも心配だ。さっさと帰ろう。
町から出るときも何かあったわけでもなく、すんなり通れた。今はまだ昼だし、これが夜だったらどこに行くのか位は聞かれていたかもしれない。
そして来たときとは逆に川沿いを上っていく。そして、くる時に出てきた森までは来れた。
「木に傷を付けておいたのはいいが、ここから帰れるかどうか……」
幸い自分は方向音痴ではなかったはず……多分。とりあえずは進んでみる。そして歩こうとしたときに気づいた。まさか尾けられたりはしていないよな?
振り返ってみる。当然そこには誰もいない。耳を澄まして、気配がないか探ってみる……大丈夫みたいだな。まあ、プロに尾けられていたら、俺みたいな素人には分からないだろうが。
結局少し時間はかかったが、ダンジョンには帰ってこれた。もう空は赤くなってるのが分かる。
「文明の利器が無いっていうのはこんなに不便なものなんだなぁ……」
この世界にはGPSも、電車もバスもない。異世界だから当然なのかもしれないが、しみじみそれも感じる。
でもこれはこれで貴重な体験だ。もし俺が学者だったとしたらこの異世界への移動という現象を調べつくして、レポートにまとめる位には。
流石にそこまではしないが、楽観主義な俺からすれば人生はこういうことがあるから面白いとも言える。
うーん、夕日を見て少し黄昏てしまったが、ダンジョンの方にも手をつけなければならないし、ぼーっとはしていられないな。
「スラりんただいま~」
スラりんはベットの上でぐで~っと伸びている……あぁ暇だったんだな。
「スラりん。待たせて悪かったな」
スラりんの形が元に戻る。体の色が色なら地面に伸びててもわかんないだろうなぁ。
「それじゃとりあえず残ったDPで兵士を召喚してしまおうか」
残りのDPは560だから慎重に使わないとな。
しかし、こういう選択となると迷う。ロングボウ兵だと5人しか召喚できないしなぁ……クロスボウも安いな、25かぁ。
うーん、そうだな。ある程度の人数は欲しいし、槍3人、弓兵4人、マスケット兵4人かなぁ……?
全部使ってしまうのは不安も残るが、まぁ大丈夫だろう。
「それじゃあ早速召喚だ!ってあれ?」
よく見ると画面の上のほうにDPの残量値があるけど、よく見ると660になっている!?
町に行ったのが加算されたのかはたまた冒険者として仕事をしてきたのが加算されたのかはよく分からないが、おかげで全部使ってしまうという不安も無くなった。
「とりあえずこれで安心して召喚できる」
とりあえず召喚する兵種を選んで、数を決定し、確定を押していく。スラりんと同じように一瞬目の前が明るくなり、視界が戻ると彼らがいた。
「閣下!私達一同命を懸け閣下をお守りする所存であります!」
「あ、あぁ、よろしく頼む」
正直ビックリした。命を懸けて守るとは……と思ったが、よく考えれば俺が死んだら元も子もないんだから当たり前といえば当たり前か?
と、ここで落ち着いて彼らの装備と、武器を見てみる。
まずは槍兵。鎧は金属だが、他の足、手などの防具は皮装備だ。槍を装備している。
次に弓兵。こちらは目に見える装備は全て皮製の様だ。当然弓と矢を装備しているし、短剣も装備している。
次にマスケット兵。防具は皮鎧のみ。防御的には一番低いのかな。マスケットを装備している。
今更だが、近接と遠隔のバランスが取れていないような……。
「えーとそれじゃあ、入口を守ってもらおうかな。案内するからついてきてくれ」
「はっ!」
うーん、兵士って感じだ。今のところ部屋は4部屋あるが、入口までは別に遠くは無い。
「とりあえず扉を見張っといてくれ。もし冒険者がきたら、ここは軍が管理している区域と言って追い返せ」
「承知しました!従わない場合はどういたしましょうか?」
「うーんそのときは、退去しない場合は殺害する旨を伝えて、それでも駄目なら実力行使で」
まあ、冒険者が来るとは思えんし、ここら辺は平和だが、盗賊が来ても困るしな……。
「はっ!それではこれから守備につきます!」
「あー気楽にやってくれて構わないよ」
「お心遣い感謝いたします!」
あ、これは真面目なタイプですね。俺としては安心そのものだけど拾うとか大丈夫なんだろうか?
食料、水、睡眠その他諸々が必要ないのかあるのかも調べないといけないな……。とりあえず、この兵士達のステータスを見てみるか。
名前: ????
種族: 人間
性別: 男
年齢: 21歳
能力
Lv: 1
HP: 150/150
MP: 0/0
攻撃力: 40
防御力: 120
魔法攻撃力: 0
魔法防御力: 180
器用: 60
敏捷: 180
運: 150
技能
槍術Lv3: 槍で戦うときにレベルに応じた攻撃・防御ボーナスを得る。
応急処置Lv1: 体力をレベル×1%回復する。
集団戦闘Lv1: 集団で戦うときに能力値が上がる。
スキル
なし。
称号
なし。
名前: ????
種族: 人間
性別: 男
年齢: 22歳
能力
Lv: 1
HP: 120/120
MP: 0/0
攻撃力: 45
防御力: 100
魔法攻撃力: 0
魔法防御力: 160
器用: 90
敏捷: 200
運: 150
技能
短剣術Lv1: 短剣で戦うときに攻撃・防御・速度ボーナスを得る。
弓術Lv1: 弓で戦うときに命中・射程・連射ボーナスを得る。
応急処置Lv1: 体力をレベル×1%回復する。
集団戦闘Lv1: 集団で戦うときに能力値が上がる。
スキル
なし。
称号
なし。
名前: ????
種族: 人間
性別: 男
年齢: 20歳
能力
Lv: 1
HP: 100/120
MP: 0/0
攻撃力: 60
防御力: 80
魔法攻撃力: 0
魔法防御力: 140
器用: 70
敏捷: 180
運: 130
技能
銃術Lv1: 銃で戦うときに命中・射程・装填速度ボーナスを得る。
農業Lv1: 農業を行った際の効率が上昇する。
スキル
なし。
称号
なし。
上から順に槍、弓、マスケットとなる訳だが、マスケット兵のステータス低いなぁ。そして農業持ちから察するに、農民の徴収兵ということになる。
弓兵もレベル自体は低いし、これから上がっていくんだろう。槍兵がこの中では一番技能が高いことになるな。
そして名前が????である。流石に11人の名前を考えれるほどセンスもバリエーションもない。
「とりあえず今日は飲まず食わず寝ないでどうなるかを試してみるか」
スラりん、そして兵士が飲まず食わず寝ないで何とかなるのかも一緒に調べなきゃいけない。
普通に考えたら俺はとんでもなく非道なことをしてることになるんだよな……。
なんか悲しくなってきたが、とりあえず時間経過を待つより他ならないので、召喚やら、装備の項目を眺めてみる。
色々あるが、投石器みたいな兵器もあるみたいだ。そのほかにも馬車とか、火薬、弾が入ったポーチ、塩、小麦となんでもあるな。
胡椒とか持ち込んだら高値で売れるんかね。まあ香辛料なんて産地ですら高価だろうなぁ。
金を稼げてもDPは増えないんだよなぁ……DPが増える条件も今一分からないしなぁ。
俺を入れて12人と1体では流石に不味いだろう。DPを稼いで最低限の戦力は整えないと。
そういえば全然レベルアップしないなぁ。あ、でもこっちに来てからそもそも戦闘してないしなぁ。
その後もかなり長い時間召喚、装備の項目を眺めていた。
「ん……今一体何時なんだ?」
ここは屋内だ、しかも窓なしの。だから太陽が傾いてるのか、月が出てるのかを確かめにでもいくとするか。
「それに動かないとカビそうだ」
ここはダンジョンの最奥で入口までは正直すぐだ。まぁ、改装にかなりDPを持っていかれるようなので、今のところはこのままになるだろう。
「お疲れさん。特に何も無かったかな?」
兵士のねぎらいの言葉と、何も無かったのか聞いてみる。
「はっ!異常ありません!」
ま、なにかあったなら騒ぎになってるはずだから言うまでもないんだが。
「じゃあ引き続き頼むよ」
「承知しました!……閣下は外に行かれるつもりですか?」
「あぁ、今夜なのか昼なのか知りたくてね」
なんとなくだが、次に何を言うのかは想像がついた。
「それならば閣下護衛をお付けください!」
ですよねー。
「解ったよ。じゃあ護衛を付けて貰おうかな」
こうして槍兵2人、弓兵2人が護衛についた。
扉を出て、太陽か月を見て時間を計りたいだけだったんだが……この状況を見られたら、山賊の頭にしか見えんだろうな。
まあしょうがない、さっさと外に出て確認しよう。
扉を開けると風が吹き込んできた。外は……暗いな。
「あぁでもダンジョンの中と違って空気が淀んでないな」
と独り言を発する。あ、護衛がついてるんだったな……ちょっと恥ずかしい。月の位置から見るに、午前0時を回ったところかな?
日時計でもあればいいんだが。あれも綿密な計算が必要なんだよな。
辺りを見渡す。月明かりがあるとはいえ、森の奥は吸い込まれそうなほどに真っ暗だ。文明の光がないとこうも月が明るく見えるもんなんだなぁ。それでも松明、蝋燭、ランプなんでもいいから欲しくなる。
あれも文明の光であることには違いあるまい。まぁ、ダンジョンの中は昼だろうが夜だろうが明るさは常に一定だ。
これも変えたりできるみたいだが、今のところは必要ないだろう。部屋を木や草が生い茂る森にして奇襲するとかなら話は別だが。
そもそも外敵が現れていないので、防衛戦力ですら意味がない状態だ。とりあえず時間は分かったし、新鮮な空気も吸えた、さっさと戻るとしましょうかね。
「よしじゃあ戻ろうか」
「はっ!」
彼らが気を緩めることはない。真面目な、まさに軍人気質といったところだろうか。まぁ、これは俺の偏見にすぎない。実際の軍人がどうかは俺は知らない。
でもまあ、融通が利かなさそうだなと思っているのは俺だけじゃないと思う。現にさっきから彼しか喋ってないし、周りの兵士もギクシャクしているような気もする。
緊張しているだけかもしれないし、彼の雰囲気に押されてるのかも……。
考えながら歩いているともう、最初の部屋だ。
「あぁ、護衛はここまででいいよ。引き続き門の見張りを頼むよ」
「はっ!承知しました!」
さっきから話している彼は槍兵だが、槍兵はこういうタイプなのか、それともたまたまこうなのか、どっちだろう?
何時間何も喋ってないのか、俺が居たから喋らなかったのか?一応俺が一番上になるなら、不用意に喋ったりはしないだろうか?
あれがデフォルトだとすればまさに息が詰まるとしか言えない。もっと気軽な感じでいいんだが、それをするにはどうすればいいのやら。
ベットに座りながら俺はそんなことをもんもんと考えていた。
その一方で、人員が確保できたら町に送って、暮らせる拠点を確保してもらうっていうのもありだな、と考えていた。
これはモンスターではできない利点だと思う。いざっていうときに隠れ家にもなるし、この案は自分で考えた割には結構いいかな。
それだけじゃなく冒険者の動向なんかも探れるし、かなりいい案に思える。そもそも冒険者になってもらって情報を持ってきてもらうという方法もある。
なんだかんだ言っても結局は情報が必要だ。俺は戦争なんかテレビでしか見たことないが、情報は今も昔も大事だというのは聞いたことがある。
正直人は殺したくないというのが本音だ。もちろん襲われれば反撃するし、兵士達やスラりんにも反撃するなとは言えない。
心情を別にして打算的に考えてもそれに人間を敵に回すのは厄介だ。もしこっちが強くても、人数で押すという単純な手もある。
ギルドが制覇できないダンジョンをどう扱っているのかは知らないが、もしかしたら国の軍隊が出てくる可能性もある。
冒険者は数は少ない、あの町はだが。しかし集団で来られればこっちも数を揃えなきゃいけない。
そうなるとこっちも将軍またはそれに順ずる人物が必要になるだろう。俺では的確な指示は無理だろう……そう考えると、けっこう問題が山積みのような気がする。
まあ、要らない心配かもしれないが。今のところは平和だ。今のところは。
交渉するにしても最低限の戦力はやはり必要だろう。少なくともあの町を占拠できるくらいには。我ながら物騒なことを考えていると思う。でも多少の予測は必要だと思う……役に立つかは別として。
まぁ防衛だの、交渉だのは必要なときに考えるとしよう。とりあえずは当面の目標として、DPの獲得、情報収集のための人員確保、を優先して行こうと心の中で決めた。特にDPの確保は急務だと思う。実際のところの通貨だからな。
次話は流石に1年はあかないと思います……多分。