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とっとこ空き巣退治なのだ

作者: 西の荒野

ある日会社から帰ってきて気づいたのは、私の部屋のテレビの真ん中に穴が開いていることだ。

空き巣をまず疑ってみるが、それ以外に荒らされた形跡、どころか鍵をこじ開けられた形跡も人がいた形跡もない。

「ハム太郎!!!」

もしかしたらうちで放し飼いをしているハムスターがどうにかこうにかして起こした事故かもしれない。

かなりキレていたこともあり、すごい声が出た。

あわててケージに逃げ込むハム太郎をとりあえず叱ってその日は寝ることにした。


次の日帰ってきて確信したことがある。それは空き巣が入ってきているということだ。

というのも鍵をかけて出て行ったにもかかわらず、壁に穴が開き、天井にへこみができているからだ。

空き巣かなんらかの不審者が少なくとも昨日から続けて出入りしているということは間違いないだろう。

「ハム太郎ー」

そんなことよりもまず、ソファに大量のうんこを落としているハム太郎に昨日のことで謝る必要があった。ごめん、と目をみて言う。心を込めて。主人の気持ちを知ってか知らずかハム太郎はケージに飛び入り、勢いよく滑車を回しだす。これは機嫌がいいときにする行動の一つだ。

「ハム太郎・・・」

侵入者は荒っぽい気性の持ち主らしい。私はハム太郎のためにも明日中につかまえることを心に決めた。


次の日私は会社を休み、空き巣をつかまえることにした。仮病で休むことを上司にラインで伝え、朝飯を食べると、昼ご飯を持ってハム太郎のうんこを掻き分けつつベッドの下に潜り込んだ。

何時間か経って、チャイムが鳴った。新聞が云々と言っているし新聞屋だろう。けっこううるさいし何も答えてないにもかかわらずずっとなんか言っている。出たほうが早く帰ってくれるんじゃないかと思ったが、ここはイヤホンを装着してガン無視をする。

けっこうノリノリでミュージックフォルダの整理とかをしていると真上から音が聞こえた。つまりベッドの上に何かがいる。まず空き巣で間違いないだろう。

武器も何も持っていないし喧嘩もしたことない私は、まず何ができるかを考える。しかし考えてみても結局何もできそうになかった。包丁とか準備すればよかったと後悔する。

「ハム太郎・・・」

私は無力さをかみしめながら息を殺す。

その時なにかが聞こえた。イヤホンを外すとリズムよく声をだし準備運動をする空き巣の足元が見えたのだった。準備運動の時に声を出すのが恥ずかしい私は敗北感を覚えた。警察に突き出してやらないと気が済まなかった。

空き巣の死刑前日まで妄想したところで雰囲気が変わった。そう、黙想である。武道の経験があるものならわかるだろうが、正座して目をつむるアレだ。空き巣が黙想をしている。

もしかして空き巣じゃないのではないかと思ったが関係ない。うちでやんなよ、という気持ちでいっぱいになる。

集中している今がチャンスだと思い、私はベッドの下から飛び出した。空き巣はよほど集中しているのかまだ目を閉じている。黒帯だ。帯になんとか流空手と書いてある。つまりこいつは空き巣ではなく、空手家だったのだ。

黒帯はやばいとおもい包丁を取りに行った。しかし戻ってきてもまだ目を開けないこいつ。さすがに気づいているはずだが目を開けない。しかも震えているではないか。優越感を取り戻した私は空手家に目を閉じてるように言う。2丁の包丁をカチカチ言わせながら、警察とこいつのお母さんに電話をかけてやった。


警察によると最近こういった事件が増えているらしい。“空手家”と“空き巣”、“恐竜”と“恐喝”といった韻ふみ事案だ。警察はライムの理解できない頭の固い人間が多く、対応が後手後手になるらしい。

この件から教訓を得た私は会社を辞め、“ハム太郎”と“ハム屋さん”を始め、その後の人生を謳歌したのだった。ねっ、

「ハム太郎!」

「へけっ!」

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― 新着の感想 ―
[一言] ユーモアの塊のような作品でした。 今後もどんどん作品を書いてください! 楽しみに待ってます!!
2014/09/29 02:47 退会済み
管理
[一言] 関係あるじゃねえか!
2014/09/28 00:47 退会済み
管理
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