最終話 天使との約束
キャンプから数日が経った。
明日は夏休み中に1度学校に行く登校日だ。クラスのやつらにも久しぶりに会える。
僕は部屋で涼と電話をしながら明日の準備をしていた。
「涼は準備したのか?」
「俺は常に出ている!」
「そういえば片付けないもんな」
「逆に翼はなんでも仕舞い過ぎなんだよ。バッグくらい出しておけって」
「散らかるのが嫌いなんだよ」
電話をしながらクローゼットを開けてバッグを出そうとしたとき別のバッグやリュックがいろいろと落ちてきた。
「うわっ!……と」
「どうした?」
「クローゼットからバッグが落ちてきただけだよ」
「なんだよ。ビックリするじゃん」
「ごめんごめん」
拾うとするとポケットに何かが入っている。
「なにこれ?」
「ん? どうした?」
バッグポケットの中からは小さな紙袋が出てきた。その紙袋を開けると木で出来たキーホルダーが入っていた。
「こんなの買ったかな?」
「何か出てきたのか?」
「いや、キーホルダーが……」
紙袋からキーホルダーを出したとき頭に美羽との記憶が横切った。
まるで記憶の穴を埋めるように全て。
「美……羽……」
涙が零れキーホルダーに落ちた。
「どうした? おーい」
「ごめん……後でかけなおす」
電話を切った僕はキーホルダーをポケットに入れて部屋を出て玄関に向かった。
「翼、こんな時間にどこ行くの?」
玄関横のリビングから母が声をかけたが僕は「ちょっとコンビニ」と言って家を出た。
そして自転車に乗り美羽と別れた公園へと向かった。
「(美羽はきっとあそこに居る)」
向かう道中幼いときの記憶を思い出した。
あれは僕が小学生3年の時だった。よく友達と丘の上にある公園に遊びに行っていた。
鬼ごっこで負けた僕は公園がある丘の下にある自動販売機にみんなの飲み物を買いに行くとその近くで同い年くらいの女の子が泣いていた。
僕はその子のところに行き「君どうしたの?」と聞くと「道……わからなくなっちゃったの」と泣きながら小さな声で答えた。
「どこ行きたいの?」
「高い場所にある大きな公園……」
女の子は涙を拭いて答えた。
「それならこっちだよ。行こ!」
僕は手を差し出した。
「うん!」
僕と女の子はその公園に続く一本道の階段を上った。
「着いたー。この公園でいいのかな?」
「うん、ありがとう」
「いよいよ、あっ、ジュース買ってみんなのところに行かないと。またね」
「ばいばい~」
僕は再びその階段を下りた。
「そう言えは君の名前って」
振り返ると女の子は見当たらなかった。
すべて思い出した。あの時から僕は美羽に出会っていたんだ。
翌年も翌々年も。
毎年僕は美羽に初めて出会っては仲良くなってプレゼントを渡していたんだ。美羽の部屋にあったストラップやキーホルダーは僕が全部プレゼントしたものだったんだ。
自転車を漕ぎ続けた僕は公園の入口に着いた。
入口に自転車を止めて薄暗い公園の奥にあるベンチに向かった。
そこにはベンチに座っている人影があった。
近づくと月明かりではっきり見えてきた。
僕が「美羽……」と呟くと美羽は「えっ?」っと言いながら振り返り驚いた顔で「翼君……」と呟いた。
「久しぶりだね」
僕はそう言いながら美羽の元へ向かった。
「なんで……?」
「全部思いだしたよ。昔の事も全て」
「どうして記憶が……?」
「これのお陰なんだ」
僕はポケットからキーホルダーを出した。
「これって私があげた……」
美羽はそっとキーホルダーを手に取った。
「これに触れたら全て思い出したんだ」
「でもどうして私がここにいるってわかったの?」
「あの時自分から言っただろ? この場所が好きだって。だからここにいるんじゃないかなって」
「こんな奇跡ってあるんですね」
美羽の瞳に涙が輝いた。
「もうどんなことがあっても忘れないよ。絶対に」
「翼君!」
美羽は僕に抱きつき泣いた。
「約束……ですよ」
美羽は僕を見上げながら微笑んだ。その頬には涙が流れえていた。
「あぁ、約束する」
「良かった……」
月明かりが僕たちを照らし、夜風が静かに吹いた。
[あとがき]
ご愛読ありがとうございました。
この作品は大体3年くらい前2011年頃に考えた作品です。
一番最初に作った話かな?
この作品は実際に存在する場所を思いながら書いたため整地が存在するという形に;
挿絵があれば良かったかもですね
次回作はどんなのになるのかな?
それではまた