きらきら輝く君の恐ろしく可愛らしい姿を寂しく思うのは
お久しぶりです。
「千尋、おはよう」
いつからだっけ。
「あ、みのり…おはよう」
千尋が私に素っ気なくなったのは。
千尋は私に素っ気ない挨拶をした後、クラスの友達とまた楽しそうに話し始めた。
最近、周りの人が分からない程度で、千尋の私への態度が変わり始めている。でも、千尋は私が気づいていることに気づいていない。きっと。
その原因は多分、いや、絶対、男子だ。私の大嫌いな。私はため息をつきながら、自分の机の上に鞄を置く。そして思う。
また失うのだと。盗られちゃうのかと。
男子にいじめられた。小2の頃だった。
原因も、どんなことを言われたのかも、されたのかも思い出せない。
ただ、私が覚えているのはあいつらの蔑む様な視線と、心臓が締め付けられるような感覚。恋ってあんな感じなのだろうか、と後々思ったが、そんな訳はないと思い直した。
他人からみたら、ただの思い出話に過ぎないだろう。
でも、あの日から私は男子が嫌いになった。
中学に上がって、何人か話す男子はいたけど、せいぜい2、3人くらいだった。
みんな大人になってきたのか、男子の話や色 恋の話をし始めた。逆に、男子もだったと思う。
「みのりは、好きな人とか居ないの?」
この質問をされると、私は苦笑いしながら、いないよと言うしかなかった。
そう言うと相手は少し驚いてそうなんだ、と言うだけで、また楽しそうに自分の好きな人の話や俳優の話をし始めるだけだった。
でも、どんなに好きな人の話や、夢みたいに綺麗な男の子の話を聞いても、私の男嫌いは治らなかった。
そんな私も、いつかきっと好きな人ができて、みんなと楽しく話せる日が来るのだろうと思っていた。あの日までは。
私には、小学生の頃からの親友がいた。
私とは反対で恋多き女の子で、中1の頃からもう彼氏がいた。
その子は私の男嫌いも知っていたが、私に自分の彼氏の話をいつも楽しそうに話してくれた。
人のそういう話を聞いているのは、嫌いじゃなかった。
「いつか、みのりともコイバナがしたいな〜」
その子は下校途中に言った。
「まだ先になりそうだけど」
私が言うと、その子はそんなこと言わないでよ、と笑った。
その日は突然やってきた。
親友が、私と話さなくなった。突然、ぱったりと。
同じ教室に居るのに、一日中話さない日もあった。
思い切っておはよう、と声をかけてみても、苦笑いしながら小さな声でおはよう、と返された。
しばらくして、親友に新しい彼氏ができたことが分かった。私をいじめたグループのリーダーの男子だった。
私はその男子の愚痴も言っていたし、親友はそんな私に嫌気がさしたのだと思う。そりゃ、そうだ。好きな人の愚痴を聞いて腹がたつのは当然だ。その時は、親友に対して怒りは湧かなかった。
ただ、思った。
盗られちゃった。と、
その後、私と親友は別々の高校に入り、会う機会は少なくなった。
会って少し話したり、一緒に遊ぼうと口約束はするけれど、あの日までのように笑いあったり、話したりすることはもう無かった。
その時、恋とは周りの人を傷つけるものなのだな、と漠然と思った。そして傷つけた当人は残酷にもそのことに気づいていないのだ。何を語るか、好きな人すら居たことないくせに。笑えてくる。
まぁ、そんなこともあって高校に入ってから、私の男嫌いは悪化した。クラスの男子とも一言も話さないのだから、当然他のクラスの男子とも話すことはなかった。
私が男子が嫌いなせいか、男子も私に話しかけてくることは無かった。好都合だった。
千尋は、高校に入ってから初めてできた友達だ。何故仲良くなったのかは覚えていないが、千尋から私に話しかけてくれた気がする。
「みのりは好きな人とか居ないの?」
やはり千尋にも聞かれた。
やはり私はいないと答えた。そして、男嫌いなことも、今まで恋愛経験が一度も無いことも話した。
千尋は心底驚いた様子だったが、そうなの、めずらしいねと言うと、きらきらと目を輝かしながら自分の話をし始めた。
中学校から付き合っている彼氏がいること、初めて彼氏とデートした公園…
「今もデートとかしてるの?」
ひとしきり千尋が話した後、私はきいた。
すると、それまで明るかった表情が一気にくもり、最近は疎遠になっていると言った。
「しかもあいつ、好きな人ができたみたいで…自然消滅かな」
悲しそうに笑いながら言った。
「そうなんだ…」
それしか言えない自分に腹が立った。
「でも、高校で新しい人見つける!青春したいもん!」
みのりも一緒に頑張ろうね!と元気良く言われた時は、引きつった顔しかできなかった。
その後何度か、元カレの話や今気になっている人の話を何度かされた。
しかし、私は相槌を打つことくらいしかできず、たまに聞いてるのかと怒られることもあった。
やはりその日はまた突然やってきた。
千尋が私に明らかに隠している話があることがなんとなく分かった。
私にこそこそとしながら周りの友達と男子をみながら楽しそうに話していた。
何の話ー?と私が聞いても、何でもないよ、と明らかな誤魔化しであしらわれていまう。
私は千尋の想い人の顔を知らない。顔も知らない奴に千尋を盗られる気がして、すごく嫌だった。
「ねぇ、千尋、好きな人いるんでしょ?」
ある日の帰り道、私は千尋にきいた。
「え」
こういうのは本人が思っている以上に相手が敏感に感じ取ることを知っている人間はどれ位居るのだろう。
「い、いないよ〜やだ、急にどうしたの?」
おどけた様に千尋は笑った。
「どうしてそんな嘘つくの?!」
おどけたみたいに返そうとして失敗した。
結構な大声だ。
私が男嫌いだから?私には話したくないの?話しても意味ないの?そうだよね、何もアドバイスとかしてあげられないし。不安なんだよ、千尋が知らない奴に盗られちゃうみたいで。言ったでしょ、私中学の時、男に親友盗られたって。千尋もそうなの?彼氏ができたら私となんか話したくなくなるんでしょ?私他の子とちがうもん。男嫌いな友達なんて恥ずかしいんでしょ?
言い切ると、涙が止まらなかった。
千尋は固まっていた。
私は情けなくて、地面に視線を落とした。
さっきの発言、まるでへたれの彼氏みたいだ。
「みのり」
名前を呼ばれ、肩がびくっと上がった。
同時に、ぎゅっと抱きしめられた。
千尋のマフラーが、鼻をくすぐった。
「いるよ」
「え?」
鼻声みたいな情けない声で聞き返すと、千尋の力が強くなった。
「ごめんね、黙ってて。みのりこういう話苦手だし、話さないほうがいいかなって」
私は千尋のマフラーに顔をうずめた。
「でも、話してくれないの嫌だった」
そうだよね、ごめんね。千尋は私の頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「好きな人ができたからって、別にみのりのことが好きじゃなくなる訳じゃないから」
涙が止まらなかった。しばらく私たちはそのままでいた。
通行人から変な目で見られた。
私がひとしきり泣いて落ち着きを取り戻し始めた後、千尋は私を離した。
「一番は一つしかない訳じゃないでしょ?私に好きな人ができたっていうことは、みのりともう一つ大切な宝物ができたっていうことだから」
千尋の言葉に私は頷く。
すると、千尋はにっこりと笑い、帰ろう、と私に手を差し伸べた。
その手をとって、歩き始めた。
帰り道、千尋は嬉しそうに私に好きな人の話をした。
その顔は、昨日観たテレビのことや、授業中のクラスメイトと先生の面白いやりとりを話す顔とは違った。時々、きゃーとか小さな奇声をあげながら、顔を赤くしながら話していた。
「じゃあ、また明日!」
千尋は笑顔で手を降りながら、曲がり角を曲がった。
私も笑って手を降った。
人には何かしら逃げ道がある。
勉強が嫌になったらケータイに逃げたり、ダイエットが嫌になったらダメと分かっていてもケーキを食べてしまったりする。
恋に敗れたら友に逃げ、友に裏切られたら恋に逃げる。
では、どちらが欠けていたら?
千尋はきっと、あんなことを言っていても、つまらない私にすぐに飽きるだろう。
つまらない女は飽きられて捨てられる。きっと男にも女にも。私はそれを知っている。
友を失い、恋に逃げることもできない私は、どうすればいい?
あぁ、そうだ。どうしようもないのだ。
「星が綺麗になってきた」
冬の空気は澄んでいるせいか、星は冬に綺麗にみえる気がする。
日が短くなってきた。まだ5時頃なのに、星がこんなに綺麗に見える。
人を好きになれる勇気が欲しい。それをきらきらしながら話せる女の子になりたい。
そんな自分を認めたくない気もする。
みんな、私を置いて大人になっていく。
置いていかないで。
まだ子供でいさせてほしい。
つまらない子供に恋の話をするのは、さぞかしつまらないだろう。
一人で笑って、私は歩き始めた。
連載投稿しなさすぎてすみません!
今回は恋愛小説?テーマは恋愛というつもりで書いてみました。
みなさん作品を読んだ方が恐らく察しのとおり、私は恋愛経験ゼロです…笑
恋愛小説が好きな方や、大半の方には読んで胸糞悪い話では無かっただろうかと心配です…気分を害した方がいたら申し訳ありません。
周りが急に変わってくると戸惑いますよね。そんな自分の気持ちを書き殴ってみましたが、共感してくださる方は果たしていらっしゃるのでしょうか汗
こんな話を書いておきながらなので、説得力ゼロかもしれませんが、恋愛って大切だと思いますよ!人生において!笑
こんな私にも恋愛の甘酸っぱい話が一つや二つできたら、今より少しはマシな恋愛小説が書けるのかなと思いつつ。
長々と申し訳ありませんでした!読んでくださって、本当にありがとうございました!
連載のほうも、長い目でよろしくお願いします…