フライパンとハンマー
浅蔵 勇の説明です。
雷神トールの人間代理
ヒキニート予備軍、ネトゲ大好き。
弘樹とは同じ学校の元同級生。
主に突っ込み役に回ります。
俺の目の前に、全身黄色で揃えた服装の少年がいる。
どうやらこいつが雷神トールらしい。
「ラキちゃん、いま君がおかれてる状況はわかっているよね?」
そういえば、なんでさっきからトールは、ロキのことラキっていってるんだ?
「雷神トール、いまの私はラキではなく「ロキ」です。」
トールは、ニヤッと笑った。
「そうだったね、君はもう立派な神だ。」
ロキもニヤッと笑った。
「残念ですが、あなたが来た理由はわかっていますし、だからと言ってあなたの言うことを聞く義理もありません。」
ズンッと空気が重くなる。
神対神………
二人の持つ力が、キリキリと伝わってくる。
ロキはこっちを振り向いて、
「弘樹さんには、戦い方を覚えていただくのでよく見ててください♪」
「あ、あぁ」
俺はぎこちなく返事をした。
ロキは、再びトールと向かい合う。
「あんまり戦いたくないんだけどなー。」
と言いながら、トールはグローブとトンカチをポケットから取り出す。
ロキも続けて武器を取り出すかと思えば
「へ?」
取り出したのは、家庭には必ずあるもの。
しかし戦いにつかえるのだろうか?
その正体は、
「ジャジャジャジャーーン!!ロキちゃんのフライパン♪」
そう、フライパンである。
ロキってフライパン使ってたっけか
「ははっ、面白いね、ロキちゃんって笑笑」
横で笑っている浅蔵、
こいつも俺と同じように巻き込まれた不幸な人間ってことか………。
ここで俺はある疑問が浮かんだ。
そうとても大事なことだ。
「なぁ浅蔵、確か神って人間界では、戦い禁止じゃなかったけ?」
「あぁーたしかそうだったなー。……………………ヤバクネ?」
しかしこっちの心配もお構いなしに、戦闘ははじまってしまった。
トールが電撃を発して、それをロキは上に回避、
そして続けざま、ロキはフライパンを振りかぶる。
トールは、その場直立状態で高速移動、
「全く厄介ですねー。磁力操作は…。」
「正確に言えば、電磁力だけどねー。」
そういいながらトールは、まるで空を飛んでいるかのように、跳躍する。
ロキは、フライパンを振り回しているが当たらない。
トールの動きが、立体的すぎて行動が読めないのだ。
「僕の動きを止めたければ、建物から鉄分全部抜かないとねー。」
トールはニヤニヤしながら、ピョンピョンと移動し回っている。
「確かに厄介ですけど、私にもこれがありますから。」
とロキは、靴に魔方陣を出現させて言った。
「行くよ!風の靴!!!」
その瞬間、ロキの体は宙を浮き、
トールの動きについていく。
「うわぁ、せこくね、その靴。」
「あなたの方がチートじゃないですか。」
ロキは、フライパンを振り回す。
トールは紙一重で避け、電撃を発射、
しかし、再び避けられる。
当たらないと感じたトールは突然動きを止めた。
ロキはこれをチャンスと見て、フライパンの渾身の一撃を…
ズガァァァァン
凄まじい鈍い音、
うわぁあ………
死んだだろうな、いまの音。
ガシャアン
なにかが落ちた。
フライパンが
地面にめりこんでいる。
これは……一体
「僕の武器は、グローブだけじゃないよー、このハンマー、ミョルニムは触れた物質の重さを自由に変えることができるんだー。」
ってことは、
ロキが振りかぶったフライパンは、トールの頭には当たらず、
ミョルニムに当てられ、重さを変えられたということか。
「さすがトール兄さん……。」
確かに、神っていうかんじしてきたな。
兄さん?いま兄さんって言ったよね!?
兄さんってことはこいつはロキの知り合いじゃねぇか?
「でも私は、トール兄さんの弱点知ってますよ?」
ロキは、魔方陣を展開、
そこから煙が勢いよく吹き出す。
これってまさか……さっきのあれですか?
「え?エエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」
トールが絶叫した。
そして超高速で屋根の上に避難、
それでもトールは、肩を震わせながら、涙目になってる。
トールの弱点って、
「トール兄さんは、蛇が苦手でしたよねー」
やっぱり、
先ほど召喚されたのは、大蛇のヨルムンガンド、
蛇嫌いのトールは、影を見ただけで避難したのだ。
見事なヘタレっぷり笑笑
「ラキちゃん!!僕が悪かった!謝るからゆるしてーーーーーーー」
屋根の上で土下座をするトール、
ロキは、ニヤニヤしながらヨルムンガンドをもとに戻した。
ヘタレすぎて、神かどうかも怪しくなってきた。
「なぁ、ロキ。あいつとお前ってどういう関係なんだ?」
ロキは、にっこりと笑って
「お兄ちゃんの友達です!!」
「そうか」
「ええぇ、反応薄くないですか!?」
そりゃあ、驚きだけど、ここまでヘタレっぷりと変態ぶりを見れば、このようなオチも予想つくわ。
それより、
「おまえさ、これどうすんの?家ボロボロなんやけど?」
ロキとトールが戦闘を行った場所は、とてつもなく破壊され、見る影もない。
「たしか、人間界で力使っちゃいけないんだろ?いいのかよ?」
ロキとトールは、にっこりスマイルから
絶望の顔に変わり、悲鳴を上げた。
それから
家やその他もろもろすべて直すのに一時間かかったのでした。