夏の海と大天使
「なーつーやーすーみー!!」
俺は叫びながら、ベッドから起き上がった。
そうさ!!
今日から念願の夏休みなんDAZE☆
もうマジテンション上がりまくり!!
よーし!!
すべての時間をゲームに費やしてやるぜ!!
「うし!!!」
気合の一声とともにPCの前に座った。
もちろん、ゲームするためだが何か?
さてと………、
ピピピピピピッ!!
「っとぉ!?」
こんな時間に電話なんて珍し………………、
嫌な感じがした。
最近よくあるんだが、
大体は神とか悪魔とかが関わっていた。
またなんかあったのか?
夏休みぐらいゆっくりさせろよな………、
「はい、もしもし」
『あ、ヒロキ、私マリなんだけど、今何してる?どうせ暇してゲームばっかしようなんて考えていてるんでしょ!!それなら私たちと一緒に海に行きなさい!!美女達の水着姿を見れるなんて早々ないわよ、じゃあ十二時に駅に集合ね、分かった?プチッ』
ツー、ツー、ツー
「………留守番電話だったのか?」
俺を喋らせる隙が全くなかった。
てか誘っているというより最早強制かよ……。
ふざけやがって!!
まぁ、無視してやればいいか………、
さてゲームしよ、
ピピピピピピッ!!
『一応言っておくけど、来なかったら…………わかってるわよね?プチッ』
ツーツーツ、
よし行こう、いますぐ……、
うん、馬鹿なこと考えた俺が悪い。
相変わらず、俺はマリに勝てる気しない。
というわけで、
生きるためにも、
さっさと着替えて駅へと向かうことにしたのである。
電車の中、
「わぁー、きれい!!」
ロキとマリが窓から姿を現した景色を見てはしゃぐ。
まぁ、無理もないだろう。
男である俺も海を見て少しそわそわしてるところがある。
やっぱ夏といえば海だよなー、
「ていうか、なんでこのメンツなんだ……」
「ん?」
「なんもねぇーよ」
いや、なんもないこともないのだが、
だって、メンバーのほとんどが神なんだもん。
しかも女って言える女はいないし……、
「ふっ、安心しな、ヒロキ!!海といえばナンパだろ?一緒に行こうぜ!!」
「なんでお前が来てんだよ、唐沢」
「えぇ、いいじゃん、別に~」
「お、俺ナンパしたことないんだけど……」
「浅蔵くん、帰り給えよ」
「え!?なんで俺だけ!?」
ざっと男のメンツはこんな感じだが……、
なんてしけた面してやがる……。
「ヒロちゃん、ここは公共の場よ、静かにしていなさい」
「そうですよー、静かにしてなきゃだめなんですよー」
「椅子の上で飛び跳ねているお前に言われたかねぇよ」
「ボー………」
「ふ、フレイヤさん?どうなされましたか?」
「え、あの、海見るの……初めてで……」
「あ、そう……」
とまぁ、女子のメンツはこんなもんだ。
若干心配なのがいるが、
マリがいるから大丈夫だろう、
「でも、もしナンパしてきたらマリその人ぐちゃぐちゃにしちゃうかもー☆」
いや、やっぱり心配だ。
このメンバーで海に行くのは、
自殺的だろ……。
先が思いやられる。
「やはり、こうなったか………」
デストロイだ。
夏のパラダイスが見る影もなくなっている。
「逃げるなよ〜、少しぐらいお話ししようぜ〜」
「俺は神だぞ!!なのになんだこの待遇は!!」
「フェンリル、ヨルムンガン湯加減はどうですか?」
「はぁー、私にナンパしようなんて百年早いわ馬鹿やろおおおぉ!!!!!!!!」
「ボー…………」
もはやどこから突っ込んでいいかわからん。
唐沢、お前は一度警察に捕まった方がいいな……、
浅倉、最近トールに体乗っ取られすぎ……、
いや、それより海が紫色に変色していることを突っ込むべきか………、
あぁ!?マリが十人ほどの男たちをボコボコに……、
……………、フレイヤボケろよ!!!
「はぁ、疲れた」
ロキたちにあーだこーだ言っているうちに日が暮れてしまった。
俺はホント何しに海に来たんだ?
てか読者が期待してる女子どもの水着説明する暇もなかった……。
「もう……帰るか」
疲れきった体にムチをうち、
荷物を持って浜辺を出ようとした。
「おーい、ヒロキ!!どこに行くつもりだ?」
「どこって家に帰るんだ」
「ヒロキさん、家に帰っても何もありませんよ?」
「はぁ?何言ってる?」
「今日はここでBBQだぜぃ!!ヒロキン!!」
「え?マジか………」
海でBBQなんて、ベタなことするなー、
いや、別に俺は憧れてなんかないよ、うん……、
「じゃあ、早速はじめようか!!」
「あ、もう、少しだけ焼いちゃったよ」
「え?」
マリが言ったことに俺は焦りを感じた。
変な汗までかいてきた……、
「どうしたんだよ、ヒロキ」
「唐沢、とりあえず食ってみろよ……」
「お前、なんか怪しいな……、まぁいいか」
唐沢はまりが焼いた肉をとって口に放り込んだ。
「うんうん、………んんわんなまふゆゆ)はゆぬるなてふのの!???????????」
そして泡を吐きながら倒れた。
「あ、相変わらずの破壊力……」
これで分かっただろう、
マリは料理が下手だというレベルはとっくに超えている。
さらにすごいのは、食ったやつは必ず心臓が止まるのに、
数分後には必ず蘇生する。
この謎の現象で俺は何度も死に、そして生き返ったのだ。
「あのー、唐沢さんどうしたんですか?」
「さぁな、どっかで悪いもんでも食ったんじゃないか?」
「は、はぁ?浅蔵さんもそこで同じように倒れてるんですけど……」
馬鹿なやつだ、
得体の知らないものを何の警戒もなしに口に入れようとするからこうなるんだ。
俺をもっと見習え、
そしてひれ伏せ!!!!
「あ、流れ星」
「え?マジで!!」
ロキが指さした方向の空には星が流れていた。
「おぉー、すげーな、いっぱいあんじゃん」
「ヒロキさんは……何をおねがいします?」
願いか……、
考えたこともなかったなー。
でもあえていうならば、
「平和な暮らしがしたいな……」
「……」
「え、なんで無反応?」
「ヒロキさんあれ……」
再びロキの指差す方向を見ると、
さっきまで優雅に流れていた流れ星がこっちに向かって急接近してきている。
あぁー、またこのパターンか……。
「ったく、気の休まる暇もねぇ」
右手に剣を握りしめて、斜に構えた。
完全に敵を迎え撃つ構え、
だが流れ星は予想に反して、
急に減速し始めて、
俺たちの目の前で止まった。
「なんだよこれ……」
「ヒロキさん、少し離れてください」
ロキの指示に従って、俺は一歩下がる。
ロキはそのまま距離を保ち、自然体のまま流星の目の前に立っていた。
「なるほど、これほどとは……」
光の中から声が聞こえた。
透き通った綺麗な声。
「その声………、そんな……なぜここに……」
「あら、その声はロキちゃんじゃない、ふーん、なら姿を現しても良さそうね」
光がはじけて、中にいた人影が顕になった。
「う、お………!?」
なんつー美人……、
ロキも可愛いって思ってたけど、
これは…………、
不意に目の前の美人はニコッと笑った。
「私はガブリエル、四大天使を務めております。」