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一応言っとくが俺の親は神様の敵だぞ?  作者: トミー
春:綾瀬の心は晴れ模様?
22/26

修行と目覚め

「うぅ………」


うす暗くなってきた路地にひとりの少女が声を漏らす。


茶色の髪にショートヘア、


弘樹と同じ高校の制服、


綾瀬 和である。


綾瀬の家は学校から離れていて、


帰宅する頃には七時を回る。


女の子には少しばかりきつい通学だ。


それでもその学校に通うのは、


ほかでもない。


彼がいるからだ。


彼との出会いは中学生のときだった。


綾瀬はとんでもなく人見知りで、


最初は友達ができなかった。


それどころか不良の三人組にイジメられ、



毎日地獄のような日々を過ごし、



心も体もボロボロだった。



そんなある時、


一筋の光が差し込んだ。


学校で一番空気が読めず、無駄にテンションが高くて、


さらに正義感が全面的に湧き出てる馬鹿な男子高校生が私がいじめられている所に乱入してきたのだ。


綾瀬は彼のおかげでいじめられることがなくなったが、


彼がいじめられるようになった、


しかし


彼は超ポジティブ精神でいじめっこを退けていったのだ。


私は彼に憧れた。


いつでもどこでも笑っている彼に……


少しでも近づきたい、


そんな思いから私は笑顔を心がけた。


さすがに彼みたいにははしゃげないから、





でも彼は変わってしまった。


高校に入ってからはため息ばかりついて、


前のようにいつも笑ってはいなかった。


でもロキちゃんといるときの弘樹くんは、


楽しそうで中学生のときより元気に見えた。


もしかしたら彼は無理をしていたのかもしれない、


どれだけいじめられようとも、


暴力を振るわれても、


笑って、誤魔化していた。


「うっ!!」


頭に痛みが走る。


最近出始めた頭痛、


そして胸の中で少しづつ大きさを増していくモヤモヤ、


自分が自分でなくなる予感、


それは恐ろしく、でも否定し難いもの、


自分が犯した罪、



償うことができない自分への怒り、



私を、わたしの心を、満たしていく。



「た、助けてよ、誰か……」


彼女が声にならない叫びを放ったとき、





彼女の中で何かが目覚めた。


















*******



「つ、疲れた………」


俺は重い足を引きずりながら、


ソファに寝転がった。


学校が終わって、帰宅した直後、


俺はロキとヨミに拘束されて、


家の地下 (あったことは知らなかった)に連れていかれた。


そこには父さんと真庭さんがなにやら物騒な格好して立っていた。


そこで俺がやらされたのは、


修行1


武器のコントロール


簡単に言ってしまえば、


出し入れを可能にする修行をしろということだった。


しかし、やれと言われてできることではない。


なんせ、聖拳を持っているのは俺だけで、


見本を見せてくれる人も教えてくれる人もいない。


そんな中、俺はひたすら言われるがままに6時間やらされた。


すでに時計の針はてっぺんを回っている。


結果、三回に一回は剣を出せるようになった。


でも、


明日も学校がある。


宿題はロキがやってくれていたから

助かったが


授業は当然しんだ。






「さっさと風呂入って寝るか」


重たい体を起こして、風呂場へと向かう。


何も考えず、ぼーとしながらドアノブを握り、風呂場のドアを開けた。


「……………はぁー」


思わずため息をつく。


誰もいない暗い部屋の中、


その空間の中で俺はなにか不安を感じていた。


今までとは違う、


恐ろしい敵と対峙したとき、


仲間と離れ離れになったとき、


そんなとき不安を感じていたが、





「………………」







心がざわつき、胸が苦しくなる。


なにか取り返しのつかないことになりそうな感覚、


でも確信はない。


「きっとつかれてるだけだよな」


もう一度ため息をついて、服を脱ぎ出す。


自分でも分かっているのに、


認めることができない。


いや、そもそも、


怖いのかもしれない、


自分の知らないところで何かが起こっていることに………









最悪へのカウントダウンは着々と進んでいる。
















******

翌日





「さて修行2についてだが、」


雅人がボサボサの髪を手でほぐしながら、説明を始めた。


「聖拳の能力は、思いを武器として顕現させるものだ、闘いの意思を象ったのはその大剣というわけでな、とりあえずこれで攻撃は申し分ないが、」


「防御についてはまだまだと言ったところだろう、というわけでお前には護る意思を顕現してもらおう」


「また無理難題を………」


眉間にしわを寄せながら、文句を言う。


当たり前のようだが雅人は何もしてくれない。


昨日の修行も遠くからく( ̄Д ̄)ノガンバレーーー♪


とか言ってるだけだった。


だが今回は雅人も何か策があるようで、


めちゃくちゃニコニコしてる。



とりあえず殴った。


「痛い!!なんで殴るの!?」


「特に理由はないけど、あれだよ、ストレス発散」


「一応父親だぞ!!」


泣きながら俺に抱きついてくる雅人、


気持ち悪いのでそのまま関節技と締め技に持っていった。


それを見ていた真庭は、


これ以上ないほど爆笑していた。


一応あんたの師匠なんだけど、


いつの間にか墜ちていた雅人を放り投げて、


真庭に視線を向けた。


「おっと、さすがに締め技と関節技は勘弁して欲しいよ」


「誤解だよ、そんなことするつもりはない、それより修行内容を教えてくれ」


「あれ?いつになくやる気ですね」


真庭は感心したようにうんうんと頷いた。


当たり前だ。


この不安をいち早く取り除くには、


俺が強くなる。


もうそれしかないのだ。




「今回の修行は実践の中で言ってたように防御の力を身につけてもらうよ」


「実践か」


俺はすこしだけ緊張感を覚えた。


なぜなら戦闘に関しては、


たったの三戦、


しかも半ば意識が混濁していたため、


どうやって戦っていたのか鮮明に思い出すことができない。


つまり、いま、


このように落ち着いた状態で戦うのは初めてと言っても過言ではないのだ。


真庭はスマイルを決めて、人差し指を立てる。


「そんなに緊張なさらなくてもいいですよ、相手はあなたの良く知っている人物ですから」


「俺が知っている人!?」


真庭は俺を落ち着かせようとしたようだが、


思いっきり逆効果だった。


知っている人物、


ロキ、


あぁ、多分死んだわ


トール、


浅蔵のまんまだったらいけるかも


いや、無理


フレイ


((((;゜Д゜))))



無理だ。゜(゜´Д`゜)゜。


勝てる訳が無い。


フレイあたりなら確実にズタボロにされる。


死にそうになったら逃げよう。


そう俺は心に誓って、


覚悟を決めた。


「ではお呼びしますね、入ってきていいですよー」


真庭が指を鳴らした瞬間、


何もない白い壁からいきなりドアのようなものが現れる。


白い煙が辺りを覆って、


ドア付近が全く見えなくなった。


徐々に近づく足音、


とともに機械音が鳴り響く。


だんだんと煙が晴れて、


その姿があらわになっていく。


だが、そこにいたのは俺が想像もしなかった人物だった。
















「ちーす、またあったな、ロッキー!」


「お、おまえ!!」


俺のことをロッキーなどとふざけたあだ名で呼ぶやつは一人しかいない。


同じ高校の同級生、


唐沢 拓だ。


「お前、なんでここにいんの!?」


唐沢は一般人のはずだ。


神々のことも俺は話していない。


よって、やつがここに来ていることは有り得ないことだった。


だが唐沢の答えは更なる衝撃の事実だった。


「なんでって、おれも『Next』の一員だぜ」


驚きすぎて顎が外れそうだ。


よりによってコイツが…………。





こんなに近くにいて、昔から仲良くしていたが、


すでにこっち側に来ていたなんて全く気がつかなかった。


って待てよ………。


となると


「ってことはよ、俺とお前が戦うのか?」


「あぁ、そうだ」


唐沢はピースを決めて、そういった。


「お前戦えんの?」


「なめすぎだ!!俺の腕は超一流だぞ!!」


すると、唐沢の背後に大きな鉄の塊が現れた。


簡単に言うとロボットだ。


足はなく、ロケットのようなもので宙に浮いている。


「俺はコイツを使って戦う」


ロボットの肩を叩いて、笑顔を見せる。


なるほど、強敵だな、


だが、あいつらに比べたら、


全然勝てそうじゃん!!


俺は余裕の笑みを浮かべて、



「おけー、じゃあ始めるか」


と言って、唐沢から少し距離をとったあと、


大剣を手に出した。


唐沢も後ろに下がってキーボードのようなものを取り出して、


ロボットを少し動かす。


唐沢は笑みを浮かべた。


「おれっちのロボットは準備OKだぜ!!さぁいこうか!!」







「では始め!!」


真庭の一声と同時に俺は足で地を蹴った。


聖拳発動時は身体能力が上がるため、


そのスピードは陸上部より少し速いぐらいだ。


唐沢は慌てることなく、高速の指さばきでロボットに命令を与える。


ロボットはいきなり急上昇して、


両腕にあるマシンガンを躊躇いなく敵にぶっぱなした。


弘樹は大剣でさばきつつ、少し後退する。


それを見逃さず、肩から小さめのミサイルを打ち出す。


スピードも並々ならぬものだ。


弘樹は大剣の一振りでそれらをすべて爆発させた。



爆発による煙で視界が塞がれる。


目でなく、耳に集中力を高めて、


相手の気配を感じ取った。




しかし、


「弘樹、覚えているか、小学生の時さ」


唐沢の声で捉えていたロボットの気配がかき消された。


こっちの困惑も察せず、唐沢は話を続ける。


「あのとき、お前、なぜか早く帰ろうとしていたよな、塾があるとか言って……」


「でも俺らは知ってたぜ、お前が……『ふたりは○リキュア』をみるために早く帰ろうとしていたことを!!」


「何ィィィィィィ!!!」


そ、それは俺の黒歴史の中でも、


最悪と定位置づけられたエピソードじゃないか!!


なぜお前が知っている!?


驚きのあまり、集中力がきれる。


とその瞬間、マシンガンの弾が地面に火花を散らした。


なんとかそれに気づき、別の場所に移動する。


だが俺のメンタルには深刻なダメージが残っていた。


恥ずかしい、それだけ…………


だが唐沢の攻撃は止まらない。


「中学生の時だったかな、あのときお前、きなこパン一気食いして吐きそうになってトイレに逃げ込んだよな、でも俺たちは気づいていたよ、お前がうん………」


「ちょっとまてぇぇぇぇぇ!!!!!」


動揺しすぎて大声で叫ぶ。


てかなんでお前が俺の黒歴史を知っているんだ!?




と再びマシンガンが俺を襲ってきた。


次は剣を盾のようにしてガードした。


身体的なダメージはほとんどないが、


驚くほど、メンタルがやばい。


そんな俺に追い討ちをかけるように


唐沢は俺の黒歴史をどんどん暴露する。


「俺は知ってたぜ、お前が中学2年生まのときまでパンナコッタをエロエロだと思ってたことを!!」


「うがぁ!?」


「ビー玉を鼻につっこんで抜けなくなって、気絶したことも!!」


「ふぁ!?」


「女子にパフパフって何って聞いたこともな!!」



「ごほぉ!!」ビシャ!!





唐沢の怒涛の連続攻撃により、



俺のメンタルはレッドゾーンに突入していた。


恥ずかしすぎて吐いた。





ほんと死にたい。



放心状態の俺に唐沢は容赦なくとどめの一撃を放った。


ある言葉を添えて、


「なぁ、ロッキー、中学生の時、女子がシャーペンを盗まれた事件があったよな、結局犯人はお前になっちまったけど、実はそれ俺の筆箱に入ってたんだよ」


ミサイルの音ともに、


唐沢の言葉が俺の頭の中で響く。


そしてその瞬間、


「お、」


「お前だったのかァァァァァァァ!?」


俺の悲痛な絶叫とともにミサイルの爆発音が辺りに鳴り響いた。






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