表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一応言っとくが俺の親は神様の敵だぞ?  作者: トミー
春:綾瀬の心は晴れ模様?
21/26

幻獣

「師匠、これは……」


真庭と雅人は家にたどり着いていた。


いや、元家だったと言っておこう。


本来あるべきその場所には、


何もかもが跡形もなく消し飛び、


あちこちで黒い煙を吹いている。




「ま、まさかこれって、堕天使に襲われたんじゃ………」


その可能性は十分にあった。


なぜなら、この家の主、大賀弘樹は昨日堕天使の幹部のコカビエルを撃破しているからだ。


しかし真庭の予想が当たっていれば、


大賀弘樹はすでに………


と嫌なことを考えてしまう。


その場合、雅人の苦しみは計り知れないだろう。



と思っていたが


肝心の本人は、




「俺のマイホームが………ローンも全然残っているのに……」



「はい?」


息子より家の心配をしていた。


息子のためではなく、家のためにボロボロと泣いている。


(むすこさんがかわいそうだなー)


溜め息をついて、雅人に歩み寄る。


「師匠、家なら僕が直してあげますから、息子さんの安否を確認しましょう」




真庭の言葉を聞いた途端、


表情がパッと明るくなる。







雅人と真庭は、元家だった土地に足を踏み入れた。


あちこち探すが、見つからない。



「瓦礫の山が多すぎて、探すのだるいなー」


石ころを蹴り飛ばして、目の前の瓦礫を踏んだ。


その瞬間、


「いたぁ!!」




どこからか

男性の声が響きわたる。


「うん?なにか聞こえなかった」


しかし気にせず、その上を歩き始める。


一歩進む度に、


「いたっ!!」


「いたい!!」


「いたっ!」


「いつぅ!!」


段階的に声が発せられた。


「なんだ、やっぱり気のせいじゃなかったか」


雅人は、最初に男性の声が聞こえた場所に行き、何度も踏みつける。


何回かうめき声が聞こえたあと、


「誰じゃー!!踏んどるのは!!」


叫び声とともに瓦礫の山から大賀弘樹が現れた。


すると順に、瓦礫からロキ、マリ、フレイヤ、ヨミと、出てきた。


「師匠、これ全員お子さんですか?」


「いや、あの男だけが俺の息子だ」


雅人は真庭に楽しげに自分の話をし始めた。


一方、弘樹たちのほうは、


(え?なになに?何が起こってんの?)


まったく状況を理解できず、


弘樹はボーとしていると、家が跡形もなくなっていることにやっと気づいた。


そして、初めて状況を把握しようとして、


ほんの数分前の出来事を思い出す。










「あぁー!!マリ、お前なにしてくれてんじゃーーー!!!」


そう、マリが怒りのあまりに能力を乱発したことを………


マリの能力は爆発系統、


しかも、爆発が連鎖していくというとてつもなく危険なものなのに、


マリは躊躇なく弘樹に向けて使ってきた。


はっきり言って、彼らにはマリに対する恐怖しか残っていなかった。




「仕方ないじゃない!!ヒロちゃんがエッチなことをしようとしたんだから」



今回の事件の主犯が、顔を少し赤くして、目線を逸らす。


多少反省しているように見えた。


だが弘樹が追い討ちに爆弾を落とした。


「お前はツンデレか」


またしても何かが切れる音、


マリに黒いオーラが吹き出し、


その場にいる全員に恐怖と焦りを与えていく。


いや、ただ一人を除いて、


「おぉー、これが噂のツンデレとか言う奴か、始めて見たなー」


雅人は感心しながら、笑っていた。




マリはニヤッと笑い、





「kill you」



小さくそしてこもった声が響いた途端、


小さな爆発が弘樹と雅人を襲った。





















「時の魔術師タイムリバース!!」


真庭が指を鳴らした途端、


杖を持った、いかにも魔法使いを強調する人形が出現した。


人形は、杖を振りかざして、


家の時間を巻き戻していく。


「はい、完了、元通り!!」


そしてあっという間にいつもと変わらない大賀家に戻った。


これには気絶している二人を除いて感嘆の声を漏らす。


「さて、師匠たちが目を覚ますまで中で待っていようよ」


真庭は、家のドアをあけて、


玄関に上がった。


普通なら見知らぬ人を勝手に家に入れるなというが、


この男はなぜかそういう気にはなれない。


ロキたちも続いて、


弘樹たちを担いで中に入っていった。






十分後、










「いやいや、まいったねー」


雅人は椅子に腰掛けて、笑い出した。


真庭も横に座って、弘樹は向かい側に座った。


「てかマリ、何も爆発させること無いだろ?」


弘樹の顔には無数の絆創膏が貼ってある。


「ヒロちゃんがツンデレとかいうからでしょ!!正当な判断だと思うけど!!」


マリは、少し怒っているようだった。




弘樹はまったく察してないけれど……………


「で、父さん、これどういうこと?」


向かい側にいる雅人に言った。


「これって何?」


だが弘樹の質問の意味が分かっていない。


ほか五名も何のことか理解できてない。


弘樹は続けて、


「いつの間にか、俺が代理人になってたことだよ、しかも前は父さんだったらしいじゃん!!」


ロキが納得したように頷いた。


雅人は、そんなことあったねーみたいな顔をして答える。


「俺が代理人やってたのは、今のロキの兄さんだからな、そいつが神界に帰っていったから俺は門前払い、そしたら次は妹さんが来るっていうじゃないか、原則、代理人は一人しか代理できないってことだったから、お前に任せたってわけ」



「だからって、連絡もなしにいきなりはねぇだろ!!」


声を張り上げる。


「んなこと言ったってなー、その時俺仕事中だったしー、まぁいいじゃん!!」


聞いている真庭も雅人の適当さに少し驚き、呆れている。


ロキも苦笑いで顔がひきつっていた。


弘樹は溜め息をついて次の質問に移った。




「で、何の為に家に来たんだ」


仕事と言ってあまり帰ってこない雅人は、


こうやって家にいることは珍しい。




大抵、理由がひっついて来る。



返答を待っていると、


真庭が先に答えた。


「言いにくいんですが、特に理由はないんです」


「はぁ?」


「まてまて!!リユウハアルヨ!!」


弘樹の怒りにいち早く気づき、


必死の弁解入ろうとした。


語尾の方はカタコトだったけど………



「あるなら言えよ」


「あれ、弘樹、なんかお父さんの扱い悪くない?」


「うるさい、言え」



涙目になった雅人は、こらえながら話し出した。


「理由は三つ、一つはヘルの居場所をしるため、俺たちはそいつを探しているんだ」


「ヘルを………?」


ヘルとはロキの側近である。


だが、最近姿を現していない。


「ヘルがどうかしたのか?」


俺が聞くとしばらく考え込んで「知らないならいい」と呟いた。



「さて二つ目だが、弘樹、今この街が危険に襲われていることを知っているか?」


「あぁ?堕天使のことか?」


「いや、違う、お前たちが原因となる危険だ」


「今ここにいる神は五人、この街にいるのは十一体ってとこか、この数をどう思う?」


「はぁ、まぁ多いと思うけど、」


「そうだ、多い、これが危険と言っているんだ」


「何がだよ、ちゃんと詳しく説明しろ」


真庭が立ち上がって、雅人の代わりに説明を始めた。



「神は強い力を持っています、この人間界にはない力を、これが同じ場所に密集すると普段有り得ることのない現象を生み出す場合があるのです」


「その現象の一つに幻獣と呼ばれるものがあります」


弘樹たちは黙って話を聞き続ける。


「幻獣とは、人間の心の力や場所の環境、天候、あらゆる条件が一致することで成立する化物です、性質も形も異なり、有害であったり、無害であったり多種多様に分かれています」


「なるほどなー、性質が判別できないと危険だなー幻獣ってのは」


椅子にもたれかかり、顔をしかめる。


「でここからが本題なのですが」


真庭が得意の☆★smile★☆を決めて、


人差し指を上に立てた。


「実はすでにこの街に幻獣が出現しています」


「え!?」


驚きのあまりに、椅子から転げ落ちる。


でもすぐに立ち上がってアタフタと慌てだした。


そんな弘樹を見て、ゲラゲラとわらう雅人、


「慌てんなよ、そいつはまだ完全に発現してねぇ、危害も出てないはずだ」


「まじで!?よかった」


「いや、安心するのは早いぞ」


雅人の言葉に弘樹は目を丸くする。


「なんで?」


「だってそいつ倒すのお前だし」



雅人は当たり前のようにそういった。


「お前はコカビエルを倒したんだろう、そのくらいできるわ」


コカビエルを倒したのは昨夜、


そのせいで大賀を含む全員はかなり疲れ果てている。


なのにこの男は…………


第一、大賀たちはコカビエルをたおしたわけではない、


ギリギリまで追い詰められたのは結局俺たち、


止めをさしたのはベルフェゴールなのだ。



「Don't worry!!」


真庭は俺たちの状況と心情を察したようで、


スマイルで衝撃の一言を口に出した。



「弘樹さんには、これから幻獣を倒すための修行をしてもらいます、もちろん担当はボクと雅人さんです」


「はぁー!?」


戸惑う弘樹に汚いスマイルをぶつけてきた雅人、


迷わず、湯のみを頭にぶつけた。


「いたっ!!実の父に何をする!!」


「大体こんなことになったのはあんたのせいだろう!!」


とどめに椅子の角を小指にぶつけた。



雅人が泣き叫び、真庭とロキたちは大声で笑う。






大賀はそんなやり取りを見ながら、嬉しくを思う一面、なにか不安を感じていた。





それはすでに小さなものではなく、


徐々に弘樹の心を侵食している。


(疲れているだけだよな)


無理やり不安をおくに押し込んで、とりあえず寝ようと一人部屋に戻った。























「あらら、接触しちゃったか☆」


金色に光る髪を手でとぎながら、大賀家を眺める。


堕天使ベルフェゴールだ。


彼はよくアジトを抜け出して、


こうやって人間界を眺めるのが趣味だった。


今は大賀弘樹を観察中だ。


「でさ、メタトロンみたいなことすんなよ、ベルゼブル☆」



羽音がだんだんと大きくなり、


一人の男が現れた。


「また、僕を連れ戻してきたのかい☆」


「わかってるならいちいち抜け出すなよ」


ベルゼブルは堕天使幹部の一人で暴食を司る。


だが見た目は痩せ型で


白い肌に紫の目、


髪は全部上に逆立てている。


性格と見た目のギャップもかなりある。



「で今回は何を見てたんだ?」


「なんだ、興味あるじゃん☆」


「一応だよ」


ベルは大賀家を指さした。


「ふつうのいえじゃねぇかよ、あそこに何かあるのか?」


「当たり前だよ、あの中には北欧神話の神々が勢ぞろいしてるんだから☆」


「北欧神話ね……」


驚きのリアクションを期待していたのに、


まったくのノーリアクション、ざけんなと内心思う。


「で目的は何だ?」


率直すぎるその質問にベルは笑いをこぼす。


「目的はないけど、実はこの街に面白いことが起きてるんだ☆」






「それに対して彼らがどう足掻くのか見てみたくてね☆」





弘樹やロキにとって最悪の事態が着々と近づいていた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ