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第十六話 激闘


 たて続けに打ち込んだ剣を沖田に軽く払われて、宮部は驚いて後ずさる。


 沖田が脇構えの姿勢で進むと、気圧されたように宮部は隅に追いつめられた。


 「もう後はないぜ」

 沖田の一言に反応するように、宮部が突然、自分の腹に剣を突きたてた。

 「わりゃあ、よかみなせ!」

 叫ぶ喉の奥から、ぐぉっとくぐもった音が漏れる。

 瞬間、沖田の剣がすくい上げ、宮部の首が半分に切れて胴体と一緒に倒れた。

 「介錯するぜ」

 沖田が言った時、すでに宮部はこと切れていた。


 振りかえると、部屋の角で2人の志士が青ざめた顔で立っている。

 もはや戦意喪失して、ガタガタと震えながら立っているだけだ。


 沖田が近づくと、口から泡を吹かんばかりに聞き取れない言葉を早口で口走る。

 「こ、こっちゃん、来んな」


 「分かんないよ、あんたらの国の言葉ぁ」

 沖田が近づくと、男たちは、ひぃと喉の奥から奇声を発した。


 剣を振り上げた瞬間に、喉の奥からぬるい塊がこみあげて、息が詰まり沖田はむせた。

 突如咳込んで片膝をついた沖田を見て、男2人は驚いた顔をしたがすぐその場から逃げ出した。


 口を抑えた手の隙間から、細い血の筋が唾液に混じって飛び散る。

 沖田は一瞬、手の平を見つめたが、すぐに着物の袖で口を拭うとゆらりと立ち上がった。


 足がふらつくのは熱が出ているためのようだ。




 1階の中庭では、藤堂が5人の男と戦っていた。


 屋内と違って、数人まとめて斬りかかってくるのを、藤堂は素早い剣捌きでかわす。

 たて続けに3人斬り伏せる。


 逃げる1人を追いかける時に、流れる汗で額の鉢金が滑り、目の前にずり落ちた。


 一瞬、視界が無くなり、額に強い衝撃が走る。

 逃げた男が振り回した刀が藤堂の額に当たり、額が割れた。

 「うぉ」


 藤堂の声を聞いて、中庭の隣りの炊事場にいた永倉が駆けつける。

 刀を振り下ろそうとする男を斬り捨て、残る1人も返す刀で斬り捨てる。


 「平助、大丈夫か!しっかりしろ!」

 「たいしたこたぁねぇ、目が見えねぇだけだ」

 藤堂の顔は額から流れ落ちる血で真っ赤だった。

 薄く開けた両目も血だらけになっている。


 「あとはオレたちが片づける」

 永倉は藤堂をその場に寝かせ、うおぉぉーっと叫んで中に戻った。


 中では、近藤が階段の上で2人の男と揉みあいながら奮闘している。


 炊事場から玄関に抜けて逃げようとする男たちが、表を固めた隊士と斬り合いになっていた。

 「おい」

 永倉は一声かけると、振り返った男に斬りかかる。




 2階の部屋では、近藤に阻まれ階下に降りれない男たちが、屋根つたいに逃げるため窓から出ようとしていた。


 沖田が逃亡者を逃すまいと剣を構えるが、すでに手足の力が入らない。


 眩暈としびれが襲うのを必死でこらえ、たて続けに2人の男を斬って捨てる。

 しかし、沖田自身も膝をついた。


 近藤が見つけて走って来る。

 「総司、しっかりしろ!」

 沖田の目はすでにうつろになっていた。

 「総司!」

 「・・ねむたいんですよ・・夜更かしはいけねぇや」


 沖田の意識がしっかりしているのを見て近藤は安堵した。

 「おめぇは寝んでな。あとはオレたちがやる」

 「すいません・・役に立てねぇ」

 沖田が悔しそうにつぶやく。


 その時、近藤の背後から斬りかかってきた男の首に、沖田が片手で剣を突きたてた。

 「ぐぉっ」

 首から血飛沫を上げて男が倒れるのと同時に、沖田は気を失った。


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