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第十四話 探索


 鳥居の周辺は静まりかえっている。


 人の気配はまったく無い。

 周辺を一通り歩いてみたが、アカギシンの姿は無かった。

 落胆を隠せない2人は、グッタリと石段に腰を下ろす。


 「やっぱりもういないのかなぁ」

 「分からないよ。明るくなったらもう一度探してみよう。何か手掛かりあるかも」

 「うん」

 「今日はもう食べて寝ようよ」

 「ここで?」

 「仕方がないよ」


 ゴソゴソと風呂敷から握り飯を出す。

 握り飯にパクつく。


 夜の神社の境内は薄気味悪い。

 2人は互いに気丈に振舞っていた。


 「喉乾いたなぁ、飲み物もってくれば良かった」

 薫がそう言った瞬間、暗闇で動く気配があった。


 林の奥に何かがいる。

 「ウウウ・・・」

 動物のうなり声だ。

 光る眼がある。


 驚いて立ち上がると、林の奥から痩せた犬がうなり声を上げて出てきた。

 「や・・ちょっと」

 ジリジリと後ずさる。 

 「ウォォォンッ」


 いきなり牙を向いて吠えて来たので、2人が驚いて走り出した。

 追いかけて来られたら逃げ切れない。


 しかし反射的に投げつけた握り飯のおかげか、犬は追いかけて来なかった。

 振り返らずに走り続ける。


 息が続かなくなって立ち止まった時、2人は町はずれまで戻ってきていた。


 犬からは逃げ切れたが、また元に戻って2人は途方に暮れた。




 池田屋の周囲には、近藤と沖田、永倉と藤堂が張り込んでいる。


 「動きはどうですか?」

 永倉が言うと、近藤が軽く首を振った。

 「こいつぁハズレくじだったか・・」


 すると池田屋の入口から、1人の男が近づいて来た。

 町人姿に身をやつした監察の山崎である。

 薬屋に化けて池田屋に宿をとっているのだ。


 山崎は薬箱を開いて見せる振りをしながら、低い声で近藤に言った。

 「アタリです。2階に集まってます」

 近藤が目を開いた。


 少し考えてから言う。

 「トシの部隊を待ってるヒマはなさそうだな。中の人数は?」

 「ざっと30名」

 明らかに多勢に無勢だが、近藤は言った。

 「このまま踏み込むしかねぇな」

 沖田と永倉と藤堂が目で頷いた。


 「山崎、おめぇはほかを探索してる連中にこのこと報せてくれ。連中が到着するまでオレたちで持たせる」

 「わかりました」


 「あと屯所のサンナンさんに伝えてくれ。会津藩に報せて至急応援を出してもらうように」

 山崎は頷いた。

 「戸口の錠は開けてます」




 その頃、武田隊は四国屋に張り込み、井上隊と土方隊は、それぞれ京の繁華街をシラミつぶしに聞き込みして廻った。

 土方隊がもっとも人数が多く広い範囲での探索をおこなっていたが、何も網にかからない。


 「はずれか・・」

 土方はいまいましそうにに舌打ちをした。


 今日がその日だというカンがある。

 必ず、連中はどこかに集まってる。

 土方は己れのカンを何よりも強く信じていた。


 「近藤さんと武田隊からの連絡は?」

 「ありません」

 監察の川島が答える。

 「しょうがねぇな、こうなりゃ井上さんと合流して四国屋へ移動だ。こっちはなんもねぇ」


 その時、向こうから井上の部隊がやってきた。

 「井上さん、そっちはどうだ?」

 「はずれです。やはり四国屋か池田屋かと」

 「そうか、武田隊に合流だ」

 「分かりました」


 時刻はもう亥の刻(22時)にさしかかっていた。

  

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