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第百話 鬼探し


 シンは、斎藤が(薫と環以外の)オンナに接するところを初めて見た。


 「別にオンナに弱ぇわけじゃねぇよ。ブスなら全然ヘーキだぜ」

 斎藤が良く言う言葉である。


 要するに"美人に弱い"・・それだけだ。


 歩きながらシンは考える。

 (それじゃ・・薫と環はオンナのうちに入ってないってことか)


 薫も環も子供っぽくて色気が無いので、顔立ちが整っていてもオトコから悪さをされずに済んでいる。

 (まぁ、その方が安心だけどな・・)


 市中見廻りから戻り、前川邸から八木邸に向かうと・・門の前に井上の姿があった。


 シンをみかけて声をかけて来る。

 「よぉ、兄ちゃん。ちょいと話せるかい?」


 「・・なんですか?」 

 「おめぇが聞きたがってた・・赤鬼の話だよ」

 井上の言葉を聞いて、シンが目を見開く。


 「このまま出られるかい?」


 シンは困った顔をする。

 「オレ・・勝手に外に出られないんです」


 「ふーん・・そっか。んじゃ、ちょっと待ってな」

 そう言って、井上は八木邸の中に入って行った。


 しばらくして戻った井上は、沖田を連れていた。

 「なんだよ、いったい?」

 沖田が不機嫌な声を出す。


 「ちょっと、つきあえよ」

 井上はオモシロがってる口振りだ。

 「あの鳥居に行ってみようぜ」

 

 沖田とシンが目を開いた。





 鳥居の周辺は、いつもと同じで人影は無かった。

 山は薄く雪に覆われ、静けさが増している。


 井上と沖田とシンと・・3人が鳥居の前に立っている。


 「この辺に落ちてたんだよなぁ・・あの"けーたいでんわ"」

 井上が鳥居の柱の根元を指さす。


 「・・お守りじゃねぇだろ?アレ・・なんなんだ?」

 井上が振り返って、シンの方に顔を向ける。


 シンは黙ったままだ。


 答えないシンを見て、井上が薄笑いを浮かべる。


 少し歩いてしゃがみこんだ。

 「んで・・ここら辺に倒れてたんだよなぁ、赤鬼が」


 「大助!」

 沖田が遮る。


 「いーじゃねぇか、こいつが知りたがってんだ。教えてやるのが親切ってもんだろ?」

 井上が立ち上がる。

 

 「倒れてたって・・」

 シンが眉をひそめる。


 「襲われたのさ、チンピラ連中に。よってたかって、もーボッコボコ」

 井上が頭を掻く。

 「・・鬼退治ってヤツだな」


 「まさか・・死んだんですか?」

 シンが静かな声で訊く。


 「いや・・助かったぜ。骨も折れてねぇし、命にゃ別状は無かった」


 シンがホッと息をつく。

 「それで・・今どこに?」


 「さぁ・・?知らねぇなぁ」

 井上がお手上げのポーズを取る。

 「こっちが訊きてぇぜ」





 シンは黙ったまま井上をみつめる。


 「腕のいい、口のかてぇ医者がいてな・・そこに預けたんだが、火事が起きる前にトンズラしちまった。ったく・・」

 井上が腰に手をあてる。

 「ところが・・火がおさまった頃に、戻って来たらしい」


 シンが眉をひそめる。

 シンは火事の間は鳥居の前にいて、火がおさまってから町に降りている。


 じゃあ、赤鬼はその後でまた現れたのか?

 だったらあのまま鳥居の前にいれば、赤城教授に会えたかもしれない・・。


 (行き違いかよ・・?クソッ!)

 シンは歯噛みする。


 考え込んでるシンを、井上がオモシロがっている顔で見ている。

 沖田はずっと黙ったままだ。


 「戻って来た鬼を見たやつはなぁ・・白い光で気を失っちまったんだとよ」

 井上はアッケラカンとした口調で話す。

 「ったく・・笑っちまうよなー」


 井上がシンに一歩近づく。


 「おめぇ・・あの鬼の正体、知ってんだろ」

 ニヤニヤ笑いながら続ける。

 「白い光ってなぁ・・いってぇ、なんなんだ?」


 シンは無表情を崩さない。

 「さぁ・・知りません」


 「・・おめぇも、あの嬢ちゃんたちも・・あいつの・・鬼の仲間か?」

 シンの返事をまるで無視して、井上が続ける。

 「"へいせい"と"てんしょー"ってのは、外国か?それとも・・鬼の国か?」


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