玲子との永遠の別れ
長い夏休みも終わり後期の講義が始まった。学校にバイト、時間がある時はひたすら本を読んだ。学校から帰ると手紙が届いていた。
「お元気ですか。
貴方、全然こっちへ帰ってこなくて電話一本よこさないのね。お盆くらい帰ってくれば良かったのに。交通費も出してあげますよ。お父さんも何も言わないけれど、寂しくて心配していると思うわ。お姉ちゃんが子供を産み、とっても可愛いの。写真を同封しますね。では身体に気をつけて頑張ってくださいね。」
すぐに玲子の顔が想い浮かんだ。いったいどうしているんだろう。竜太郎は不安でたまらなかった。
定例のクラスコンパがあった。渋谷にある居酒屋である。友太郎は相変わらず女子学生に話しかけていた。と言うか、くどいていた。竜太郎は可笑しさを通り越してあきれてしまった。竜太郎は不意に玲子
の声が聞きたくなり財布を持って公衆電話の前に立ち深呼吸をした。硬貨を入れて番号を押した呼び出し音が続いた後
「はいもしもし」
玲子だった。
「俺だけど」
「竜君?」
「うん」
「元気だった?」
玲子の声に力がなかった。
『何かあったのか」
『実はね怒らないで聞いてちょうだい。」
沈黙の後に
「私赤ちゃんが出来たの」
泣きじゃくりながら玲子は事情を説明した。相手は会社の同僚らしい。
「寂しかったの」
竜太郎は鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。竜太郎はポケットを探ったがお金はもうなかった。電話は切れてしまった。
竜太郎はウイスキーをグラスに注ぎいっきに飲み干した。
佳恵が
「もう止めなさい。身体に障るわよ。」
「うるさいな、お前生意気だぞ。」
「しっかりしなさい沢村君」
竜太郎はきを失った。