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青春の詩ー青春の影第2部  作者: 本郷 真琴
動きだした新生活
7/9

佳恵との恋心玲子と重なって見える

 竜太郎は図書館で本を借りに行った。30分くらい凄し、駅へ向かった。電車に乗り込むと佳恵にばったり会った。

 佳恵は

 「あら」

 とだけ言って何も言わずに竜太郎の左隣に座った。

 「お家はどこ?」

 「幡ヶ谷だよ。」

 「新宿の近くでマンドリンの練習会に行くのよ。」

 「新宿で迷子になったんだ。東口に間違って降りて、本当は西口に行きたかったんだ。」

 佳恵はくすっと笑って

 「新宿案内してあげる。これからどう?」

 「今日は真っ直ぐかえるよ。」

 どうも佳恵の髪のにおいがにがてだった。高価なシャンプーを使っているのだろうか。佳恵はなにもかも都会的だった。

 竜太郎の頭の中は玲子のことでいっぱいだった。もうすぐ5月だった。本当だったら玲子と一緒の時を過ごすはずだった。北の空をみて孤独感にさい悩まされた。突如、佳恵の髪の匂いが脳裏によみがえってきた。黒い瞳に何度吸い込まれそうになったことか。だが佳恵は自分とは別世界の人だと思った。だが竜太郎にとって時間は貴重だった。おそらく限られた4年間になるだろう。一日たりとも無駄にできなかった。最初は北海道に帰って教師になりたかったのだが、東京も悪くないと思い始めていた。卒業したら玲子を迎えにいけばよいと思った。


 今日はクラスコンパがある。ドイツ語の教授も誘った。教授は快諾してくれた。コンパの時また隣に佳恵が座っていた。時間も経つにつれ、コンパも盛り上がってきた。佳恵はお酒のは全くてをつけずに、オレンジジュースを飲んでいた。彼女は遠い目をしていた。竜太郎はどきっとした。玲子と似ている。顔のつくりは全然ちがうが、目の輝きが玲子とそっくりだった。


 連休も終わり、東京は初夏である竜太郎はほとんど服を持っていなくて、みかねた友太郎がポロシャツを3着くれた。

 「汚い格好していたら、彼女なんて出来やしないぞ。」

 心理学の講義にでていたがつまらないので、教室を出ようとすると、シャンプーの匂いがした。振り返るとやっぱり佳恵だった。

 「あら奇遇ね」

 こいつストーカーかと思いうんざりした顔をすると

 「私もこの講義辞めようとおもっているの。少し歩かない?」

 二人は銀杏並木の下を歩き駅裏の商店街に向かった。喫茶店に入り、二人はアイスコーヒーを頼んだ。

 「私達良く顔合わせるわよね。単なる偶然ではないと思うわ。」

 竜太郎は髪の匂い、なんとかならないかとおもったが、それにしても見事な黒髪である。二人はそれ以上話す事も無く、だまってたたずんでいた。偶然友太郎が店に入ってきた。佳恵はコーヒー代を竜太郎に手渡すと店を出ていった。

 「おまえ佳恵と付き合っているのか?」

 「佳恵と一緒になるのは偶然だよ。俺はなんとも思っていない。」

 「頼む俺にゆずってくれ。」

 「勝手にしろよ。」

 と竜太郎はそっけなく言った。


 竜太郎の身辺はにわかに慌しくなってきた。今夜佳恵のマンドリンのサークルの定期演奏会の日である。佳恵はちゃっかり竜太郎にチケットを買わせて

 「見にこなかったらしかとしてやるから。」

 ゴミ箱にチケットを丸めて捨てた。どうでもいいことだった。無視されるのもおおいにけっこうだ。しかし佳恵の瞳の中に玲子が重なって見えたのを思い出し、ゴミ箱の中からチケットを取り出した。竜太郎は意を決し自転車で飛び出した。なんとか会場にたどりつくと、開演まで5分もなかった。竜太郎は一番奥の隅に座った。音楽的にはお世辞にも良いとは思わなかったが佳恵が輝いていた。

 竜太郎が帰ろうとすると

 「沢村君待ちなさい。」

 佳恵は高飛車に言った。

 「どう感想は」

 「ギターとかベース加えたほうが、もっとよくなると思うよ」

 竜太郎が帰ろうとすると

 「駅まで送ってって」

 「しようがないな」

 竜太郎は佳恵を自転車の後ろに乗せた。佳恵は両腕で竜太郎に抱きついた。生暖かくて佳恵の身体は暖かかった。

 「沢村君って彼女を北海道に置き去りにしてきたんだってね。」

 「遠距離恋愛と言って欲しいな。」

 竜太郎は佳恵を駅まで送って帰ってくると、雪子が待ち受けていた。

 「お兄ちゃん女の人の匂いがする」

 東京から逃げ出したくなった。


 夏休みに入り集中体育の授業が始まった。竜太郎はラグビーを選択した。例のマネージャーがこっちをじっと見ていた。竜太郎はここでも高い身体能力を発揮した。最終日に監督に呼ばれ

 「どうだラグビー部にはいらないか。沢村といったな。君のプレーは光るものがある。ラグビーの経験あるだろう?」

 いえテレビで見ただけです。僕は仕送りが無く働かなくてはならないので無理です。」

 監督は残念そうに

「君の事は体育の教官から聞いている。とても残念だ」


 幡ヶ谷に帰ると、シャワーを浴びた。東京の夏は思っていた以上に暑かった。

縁側に座りビールを飲みながらすずんでいると雪子がやってきた。

 「旭川に帰省しないの?」

 「今年は帰らないよ。ずっとバイトがあるんだ」

 



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