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青春の詩ー青春の影第2部  作者: 本郷 真琴
動きだした新生活
1/9

東京での新生活

いよいよ第2部に物語りは突入する。竜太郎はさっそく新生活な馴染んで行く。

青春の影 第二部


 眠りから覚めると、どうやら飛行機が羽田に到着したらしい。キャビンアテンダントが、

 『熟睡してましたね。学生さんですか?」

と声をかけてきた。竜太郎はもの憂さそうに、

 「はいこの春から大学に入学します。

 彼女は優しそうな笑みを浮かべて

 『頑張ってくださいね。」

 竜太郎は「東京には雪がないんですね」

 「私も今は東京に住んでいますけど、東京の冬はけっこう寒いんですよ。」

 彼女は竜太郎の新天地での生活の不安を包み込むように、優しく言った。竜太郎はシートベルトを外して、座席から立ち上がった。竜太郎が通路を歩いてゆくと、人が全然いなかった。さっきのキャビンアテンダントがさよならと、こえをかけてくれて、後ろを振り向くと、こぼれるような笑顔で

 「身体に気をつけてくださいね。」

 と言い、数人のキャビンアテンダントも「さようなら」と声をかけてくれた。

 竜太郎は飛行機から降りて、モノレールへと向かった。浜松町で山手線に乗り換え新宿で、地下鉄に乗り換えた。日中なのに随分、人が乗っている。幡ヶ谷で降りて、真っ直ぐに叔母の家にむかった。まだ3月の中旬である。南国の暖かさが竜太郎を包み込んだ。

 「こんにちわ」

 と竜太郎はおとないをいれた。文子が出てきて、

 「まあ竜ちゃんお疲れ様。ご飯まだでしょ。もう用意してあるわ。」

 世話好きの叔母が、にぎにぎしく話し出した。雪子もすぐに降りてきて、竜太郎の前に陣取った。

 「うちは男の子がいないから、竜ちゃんが来てくれると、とても頼もしいの。今夜は泊まっていくんでしょう?」

 雪子が

「どうせなら、ずっとこの家に住めばいいのよ。」

 雪子は先月見たときよりも、華やいでいた。ミニスカートにざっくり編んだセーターを着ていた。雪子が眩しく見えた。竜太郎は返答に窮した。

『本当にこの家に住んでもらってもいいのよ。下宿の方はあったてはいるんだけど、あまり良いところないのよ。それにお布団も机もあるし、ほとんど何も買わなくても大丈夫よ。主人も喜ぶと思うわ。」

 竜太郎は考えを巡らした。ここから学校に通うとすると、日吉にも三田にも近い。食事の心配もなくなる。少しわずらわしいかもしれないが、ここに住むことも悪くはないと思い始めた。

 「嫁にいった、綾乃の部屋がちょうど空いているから、そこを使うといいわ。日当たりも良いし。」

 雪子も素直に喜んでくれた。竜太郎は迷った。おせっかいと言えばおせっかいなはなしだが、東京の生活に慣れるまで、しばらくお世話になろうかと思った。

 文子は綾乃が使っていた部屋に通された。部屋には机と本棚だけが置いてあった。見事に何も無い部屋だった。おしいれを開けると、布団が一組あった。とても好いにおいがした。竜太郎は鞄の中から、下着や洗面道具を取り出し、美佐子が渡してくれた紙袋を開けて見た。全部で五十万あった。お金と一緒に、手紙が入っており、

「竜太郎、ご苦労様。このお金は貴方のために、生まれた時から積み立ててきたお金です。これで身の回りのものや、アパートの契約金に使ってくださいね。今月から働いても、お金もらえるの、来月になると思うから。足りなければ言ってくださいね。それでは健康に気をつけて頑張ってくださいね。」

竜太郎はしばらくその手紙を握り締め、丁寧に発畳んで、お金と一緒に鞄の中にしまった。このお金はさすがに簡単に使うつもりは竜太郎にはなかった。竜太郎は所持金を確認した。1万2千円くらい残っていた。ここにお世話になるとして、とりあえず一月は持ちそうだった。さっき駅の売店で、アルバイトの情報誌を買ってきた。目を通すと、様々な求人があった。なんとなく東京での生活が軌道にのってくれればと思った。

 この家は造りも古く質素である。叔父の正志は規模は小さいが会社の経営者である。決して派手な生活をしている訳ではなかった。

 「竜ちゃん、ご飯よ。」

 文子の声が聞こえてきた。下に降りてゆくと中華料理がテーブルの上に並んでいた。

 「まあ昼からこんなに豪華!竜お兄ちゃんが一緒に住んでくれれば本当にいいのに。」

 雪子はいつになくはしゃいでいた。

 『竜太郎さん、気持ちは固まった?あなた何も持っていないんだから、しばらくというか、とりあえずここに居るといいわ。」

 竜太郎は話がとんとん拍子に進んでいくことに、戸惑いを隠せなかった。雪子はそんな竜太郎を見て、

 『竜兄ちゃんが居てくれれば、賑やかで楽しくなりそうだわ。お父さんもおにいちゃんの事気に入って、本当にここに住んでよ!」

 雪子は無邪気に問いかけた。うららかなはるの日差しが、この家に差し込んでいる。あったかくていい家だと思った。

「両親には自活すると言って出てきたので、一応了解を得ないと。」

 竜太郎は逡巡しているのを文子はみてとると、

 「みさこさんに電話いれるわ。それならいいでしょう?」

 文子は早速美佐子に電話をかけている。

 『お母さんちょっとお話したいって。」

 竜太郎は受話器を受け取ると

「母さんさっき東京に着いた。いろいろ有り難う」

 「竜太郎文子さんの家に同居するのは賛成よ。その話を聴いて安心したわ。貴方が鞄一つで出て行ったから随分心配したのよ。自活もいいけれど、慣れてきたら一人で暮らしてもいいのよ。文子さんのご好意に甘えなさい。そのほうが私も安心だわ。」

 『判ったよ母さん。」

 『文子さんに代わって。」

 美佐子と文子は少し話をしていた。話の内容は竜太郎にも自ずと想像がついた。

 「話は決まったわ。実話ね、竜ちゃんが来る前に主人とも話し合ったんだけれども、当座はここに竜ちゃんがいたほうがいいということになったのよ。今日からここはあなたの家だと思って、心置きなく暮らして頂戴。」

 「よろしくお願いします。少しお世話になります。有り難うございます。」

 竜太郎は、張り詰めていた状態から抜け出し、安心したせいか少し疲労を覚えた。

 「少し休ませてください。」

 綾乃が使っていた部屋に入り、布団にもぐりこんだ。部屋の中に差し込む陽だまりの中で、竜太郎は眠り込んでしまった。玲子が出てきた。寂しそうな顔をしていた。目が覚めると、アルバイト情報誌に目をとうした。竜太郎は雪子と一緒に近所の書店に連れて行ってもらった。履歴書を購入して本を少し見てきた。家に戻ると、

 「竜ちゃん、お風呂入ってらっしゃい。」

 タオルを渡された。雪子が

 「私のシャンプーやボディソープ使ってよ。」

 雪子はアッケラカント言った。竜太郎は居心地が良かった。湯船に浸かりながらこれからのことを考えていた。今はとりあえず頑張ろうと思った。

 竜太郎が風呂から上がると、叔父の正志が帰ってきていた。

 「竜太郎君、よくきてくれた。」

 叔父の正志が声をかけてくれた。竜太郎がお風呂に入っている間に帰ってきたらしい。

 「1杯やらんか」

 「はいいただきます。」

 竜太郎は快諾した。

 二人で飲んでいると、雪子がしゃべりまくっていた。

 「雪子、あまり騒ぐのはやめなさい。」

 文子がたしなめた。文子はうっすらと涙を浮かべて、

 「本当に良かったわ。竜太郎さんのおかげで、雪子も生き返ったみたい。」

 以前に雪子が病気がちで、体調を崩し修学旅行にいけなかった事を思い出した。文子も正志も不憫に思ってるらしい。

 雪子がお風呂に入っている間、

 「あんなに明るい雪ちゃんみるのは久しぶりだわ。竜太郎さん有り難う。」正志もうっすらと目に涙を浮かべていた。

 「どうせなら卒業するまで、ここに居て欲しい。息子が出来たみたいで、久くんがうらやましいよ。」


 次の日、竜太郎は大学に行ってオリエンテーションを受けてきた。講義要綱をもらい、教科書を買ったらほとんど所持金は残っていなかった。大学で使うテキストは費用がかさんだ。美佐子がくれたお金の有難さが身にしみた。

 学生証を教務部で作り、図書館に行って貸し出しカードを貰った。本を物色し、しばらく図書館の中を歩きまわり、ジャンル別に並んでいる本を記憶した。その後学生課に行きアルバイトの求人を見てきた。アルバイト情報誌より、ずっと割りのいい仕事がたくさんあった。学食でカレーを食べていると、突然話しかけられた。

 「君、新入生かい?」


雪子が後に大変なことになる。竜太郎の苦悩が始まる。

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