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episode6 四面楚歌

 ヒロシは萌島先生に何かひっかかるものを感じていた。ふと、ちらりとヤスタカを横目で見た。

 ヤスタカのヤツは、あろうことか、死んだ魚の目から一転して目をきらきら輝かせながら、鼻の下をでれーと伸ばしまくっていた。その顔はなんとも助平丸出しでいやらしい。

「……!」

 歯を食いしばり、確信が持てた。萌島先生は卍フリスビーのあの女だ!

 これはどういうことだ、と疑問もあるが、萌島先生があの女だということは確信できる。

 しかしオッドアイだったとは。あの時はサングラスをしていたから、目の色がわからなかった。

 不意に萌島先生は落ち着き払った顔から一転して笑顔を見せた。クラスのみんなは、直射日光でも見るかのようにまぶしそうだ。

 その笑顔が、ヒロシに向けられた。

 色違いの瞳がヒロシをとらえる。

「……」

 ヒロシ無言。 

 取り込まれまいと、表情を崩さす、我知らず萌島先生をガン見していた。

 すると、四方八方から視線を感じる、 

 なんとクラスのみんなは、萌島先生にガンつけるヒロシを厳しい目つきで睨んでいた。教頭までもが。

(萌島先生を睨むなんて許せない)

 目がそういっている。

(こりゃ、どうしちまったんだ)

 なんで女ひとり現れたくらいで、こうも変わるんだ。

 別にヒロシは不良気取って教師に反抗しやことはない。むしろ免許を取るために赤点を取るまいと必死に勉強をしたので、長宗我部先生はヒロシのことをよく思ってくれていたし。ヤスタカともども、事故に遭わないよう、安全運転を心がけてほしい、と気にかけてくれていた。

 おかげでぐれそこね、真面目な普通の高校生として高校生活を送れている。

 クラスの連中とも別にトラブルもない。

 それが、いまは、どうだ。

「先生に反抗するなんて、許せねえな」

 おもむろにヤスタカは立ち上がると、ずかずかヒロシのもとまで歩み寄って、その肩をつかんだ。

「立てよこらぁ!」

「なにしやがる!」

 なんとヤスタカは大声でどなりヒロシの肩をつかんで無理矢理引っ張り立たせようとする。ヒロシも思わず言い返し、肩の手を払った。

「先生に謝れ!」

 とクラスのみんながわめく。

「そうだ、謝れ!」

「睨みつけてすいませんって、謝るんだ!」

「萌島先生に反抗するなんて、信じられない」

 一気に悪者扱いで一人ぼっちにされた。萌島先生は笑顔のまま、教頭はでれっとした顔のまま。

 いかにヒロシといえど、これには堪忍袋の緒が切れて、かばんを掴んで教室から出て行った。

「君! 君はいつからそんな不良になってしまったんだ! ああ、バイクなんかにはまると、不良になってしまうのか!」

 という心無い教頭の言葉がヒロシの背中にぶつけられる。

 バイクのせいじゃねえよ! と心で言い返しながら、自転車を飛ばして学校を出た。


 家に戻ったが、両親は仕事でいない。

 部屋に戻り制服からTシャツとジーパンに着替え、ベッドに横になる。

「なんなんだありゃあ」

 思わずぽそっとつぶやく。

 様子がおかしいなんてもんじゃない。

 まるで昔流行した学園ミステリー or SFみたいじゃないか。丁度親父が若いころにそんな映画が流行り、映画に出てた女優が大好きで、今もよくビデオテープで見ている。

 まさかそれが現実に起ころうとは。

 このまま不貞寝ふてねだと思ったが、だが性分なのか起き上がってイエローコーンのジャケットをはおると、バンダナを首に巻いてヘルメットとグローブを引っ掴んで、玄関でエルフのライディングシューズを履いて。

 D-トラッカーで走ろうとした。

 これがきっかけで道を踏み外すだろうか、と思ったが、そのときはそのときだ。

 と、D-トラッカーを目覚めさせて、走り出す。

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