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英雄の部隊  作者: 麦頭
第一章
7/8

始まりの日の記憶

『気をつけろ!!』


無線から指示が飛ぶ。

誰かの息遣いが聞こえる。荒い息。うるさい。


『5時の方向、避けろ!!』


一拍遅れて機体のアラートが鳴り響く。

頭よりも速く体が反応した。操縦桿を引き倒し、フットペダルを踏み込む。

体にかかる急激なG。内臓をぐちゃぐちゃにされているような感覚に、こみあげてくるものを感じた。無理やり飲み込む。

その甲斐あって危険からは逃れ得たようだ。

敵性反応方向に銃弾をたたきこむ。鋼は敵を切り裂き砕いたようだ。敵性反応はなくなった。


『ようし、よくやった。周囲の警戒を続けろ。あと、弾倉を交換しろ。』


「…了解。」


誰かの息がうるさい。

弾倉を確認する。まだ十分ともいえる数の弾は残っている。変える必要もないかとも考えた。

それでも弾倉を交換する。先任軍曹から殴られながら教わったことだ。一発の銃弾が生死を分けると。


息がうるさく感じる。誰だよ、無線に呼吸音を流しているのは、と、そこで気付く。誰の息でもない、これは自分の息だと。


「畜生…。」


緊張している。それだけならいい。よくはないがまだ救いようがある。

だが自分にはわかる。俺は恐怖している。体全体が怖がっている。こんな事だったら暗示の一段高いレベルのを受けておくべきだった。


一度深呼吸をする。少し、落ち着いた。


武装の確認、終了。エネルギー残量確認、終了。共に問題なし。


よし。いける。俺はまだいける。




アラート。



!!!!!


『回避!タイプTだ!!』


轟音。回避する暇なんてなかった。圧倒的な質量をもったものがすぐ傍を通過していく。俺はそれに当たらなかった。それでも機体は翻弄され、木の葉のように飛んで行った。


意識が飛ぶ。次に瞬間にはコクピット内部に打ち付けられた激痛で目を覚ます。それが何度も繰り返された。


機体の動きが止まる。コクピット内部がアラートで真っ赤に染まる。右腕部半壊。加速ブースター全壊。武器は、全て使用不能。

しかし、まだ動く。立ち上がれる。


―――みんなは…?


生き残ってるセンサー類で周りを索敵する。

全部の機体がある。手足がなくなったり変形してしまったりだが一応のラインで原形は保っている。これなら生きているやつもいるかもしれない。












ぞくりと。






背筋が泡立った。











わかった。わかってしまった。終わっていない。まだ攻撃は終わってなんかない。



メインカメラを動かす。先ほどの砲撃の発射予測地点へ。

立ち上る陽炎が見えた。あれは知っている。次射のための放熱だ。

タイプT(トールハンマー)の攻撃は数瞬後にはここにとどめの砲撃を打ち込むだろう。





…ふざけるな。


ふざけてるんじゃねぇ。


勝手に俺たちを殺そうとしてんじゃねぇ。


胸が熱い。まるで体の中から熔けるようだ。


ドロドロと何かが湧き上がってくる。


あいつを倒したい。


だけど武器は手元にない。


欲しい。


一度だけ触らせてもらったあの兵器。


今ここにあればあいつを倒せるのに。







何だ簡単なことじゃないか。


なければ呼び出せばいい。


なければ持ってくればいい。





俺を。舐めるな。













そして――――――――――――目が覚めた。


眼前には青い空。


少し視線をずらせば稼働する馬鹿でかいレーダー。


少し気分転換で立ち寄った屋上で思いのほか日の光が暖かくて眠ってしまったらしい。


…懐かしい夢だった。悪夢に近い。今の自分のスタートラインに立った時の夢。


「…気分わりぃ…。」


と、携帯端末が受信を知らせる。発信者はキルギリ。

呼んで気付く。そう言えば今日はOSの換装があったか。


…忘れていた。さすがキルギリ。気がきく。


頭を振って気持ちを切り替える。


伸びをして体をほぐす。


さて、間に合わない時間ではないが。

少し早目に行くとしよう。

…読んでくださってる方を置いてきぼりにしている気がします。


誤字脱字の指摘、感想をお待ちしております。

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