六ヶ月後。
「キルギリ!!」
「どうしました、血相を変えて。何かあったんですか?」
「ラビが逃げた。どこ行ったか知らないか?」
「…またですか?今度はなんで?」
「机の上に俺の出した宿題が半分だけ終わった状態で置いてあった。」
「…それは…頑張りましたね。」
「あぁ、今までにない頑張りようだった。だから油断してしまった。ちょっと目を離した隙に気付いたらもぬけの殻。…どこ行ったか知らないか?」
「見てはいませんね。GPSは?」
「腕時計が机の上に置きっぱなしだ。」
「…気付かれましたかね?」
「多分な。」
「だから直接埋め込もうと言ったんですよ。そうすれば…」
「気付いたとたんに抉り出す。」
「あぁ、確かに。まざまざとその状況が思い浮かびます。偶然それを見てしまった兵士の青ざめた顔まで。」
「最近電波が見える、とか言い出してたからな。時間の問題だとは思っていたんだが。」
「なんですかそれは?気が狂ったとしか思えない言葉ですね。」
「いや、誰だっけ…名前は忘れたが、お前と仲が良い…もとい、いつもいがみ合っているヤツ居るよな。」
「あぁ、弥生ですか?」
「そう、そいつ。その弥生と最近よく話しているらしい。」
「…成程。わかりました。改造されたということですね。」
「多分な。」
「またいらないことを…」
「そういうことだ。というわけでちょっと俺はラビを探してくる。」
「わかりました。ですがその前に、いくつか伝達事項が。」
「あとじゃダメか?」
「今です。宜しくお願いします。」
「手早く頼む」
「わかりました。では、まず一つ目。新しく026特殊小隊に配属される鳴海少尉の機体ですが予定通り搬入されました。叢雲壱型。現在調整作業中です。」
「叢雲壱型?第2世代じゃないか。そりゃ何とも。凄い機体だな。」
「『英雄候補』ということですからね。鳴海少尉がこちらに到着次第、着座調整、照準合わせ、慣熟訓練を開始する予定です。」
「許可する。」
「次に、高崎中尉の機体ですが、整備が終わりました。最終調整に入りたいので60分後にハンガーまでお越しください。」
「わかった。」
「そして最後に。これを。」
「…A級秘匿書類?」
「読んでいただければわかります。」
「……。」
「…。」
「成程、因幡が届いたんだな。」
「はい。」
「ラビもきっとそこだな。キルギリ。」
「はい。おそらく。」
「お前はどうしてあいつがこれを知ったのかを調べろ。ばれないようにな。」
「了解しました。」
「俺はあのお転婆を捕まえに行ってくる。最終調整には間に合うように戻る。」
「は。了解しました。」
「じゃ、また後で。」
「…。速いですね。全速力じゃないですか。なんとまぁ親馬鹿なことで。…それにしても、私のセキュリティーを破るとは。腕が鳴るじゃりませんか。早速強化しないと。ふふふ。」