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第5章 合コンという社交場の裏側 ——婚活は、サイドメニューが多すぎる

婚活パーティーの次に私が婚活の場として選んだのは「合コン」だった。

私が理想としている結婚相手がどんな人なのか考えたときに、譲れない条件は「社交性があること」だった。それがないことには他の条件がどんなに良くても私には響かない。私が描く結婚相手の理想像に「高学歴、高収入、高身長」などという条件はまったく存在しなかった。

「幸せ、美味しい、楽しいを同じ熱量で共有できる相手がいいな」

「お互いの友達や家族のことも尊重し合える関係がいいな」

「おじいちゃんとおばあちゃんになっても手をつないで歩けるくらい仲良しで居られたらいいな」

「父と母みたいな夫婦が理想だな」


そういう感覚でしか結婚相手を探していないので、マッチングアプリだと私が重要視している部分で相手を絞り込むことができないと思った。合コンなら自分と価値観が合う友達に、その友達を紹介してもらえるから、大幅にハズレを引くこともないし、合コンに参加するくらいの適度なコミュニケーション能力、活発さがあることは保証されているので、私の理想とする男性と出会いやすいのではないかと考えたのだ。

また友達の友達なら実は恋人がいるとか、実は既婚者とかいうことも友達経由で確認することができる。アプリや婚活パーティーだとどうしても共通の友人が居ない分、そういうところを疑ってしまう自分が居たので、合コンの方が安心だと思った。


だが、合コンをセッティングするのはアプリで会う約束をしたり、婚活パーティーの参加申し込みをしたりするよりもかなり大変な作業だった。


◆合コン幹事としての営業活動

① まず合コン幹事を引き受けてくれる男性幹事を探す

② 日程を調整する

③ 男性幹事と人数を調整し、女性メンバーを集める

④ お店を決める(男性側が決めてくれると助かるがなるべく自分で探す)

⑤ 可能であれば先に会費を決める(男性が6千円で女性が3千円とか)

⑥ 女性側メンバーに会費が発生することを了承してもらう

 (奢りじゃないと行かないとか言い始める美女がたまに居る)

⑦ 合コンが開催される日程までにキャンセルが出たらメンバーを再度探す

⑧ 女性メンバーへ当日の待ち合わせ場所と男性メンバーの大体のスペック

  を連絡する

⑨ 当日女性メンバーをお店まで案内する(遅刻の連絡が来たらすぐ対応)

⑩ 自己紹介などスタート時の盛り上げは必須

⑪ 女性メンバーに本日の男性メンバーに連絡先を教えていいか確認し、

  了解を得たら男性幹事に連絡して全員連絡先をつなぐ。(合コンの最後

に一斉に連絡先交換をするとかは面倒だし、連絡先を聞かれない子が居

ると困るのでそうならないように配慮する。また気に入った相手が見つ

からなかった場合、連絡先を教えたくないという子も居るので、その場

での交換ではなく解散してから幹事経由で連絡先をつなぐ)

⑫ 二次会へのお誘い

(気に入れば二次会へ行けるように次の店をすぐに探す。参加女性側に

気になる男性が見つからなかった場合は、空気を察して、反省会と称し

て女性だけで二次会を実施しアフターフォロー)

⑬ 女友達が自分とは初対面の女性を連れてきてくれた場合は、その女性に

  次回の合コンでは自分が直接誘っていいか聞いておく。また別の合コン

があればぜひ誘ってほしいと個別に伝えておく。

⑭ 気に入った男性が居れば自分から連絡する。その際は連絡が返って

こないことを前提としてメッセージを送り、心を無にして返信を待つ。

  もし特別気になる男性が居なかった場合でも、男性メンバーの中で一番

“気になる” 男性に必ず連絡して、次回また合コンを開いてくれないか

打診する。(似たようなタイプの友達を連れてきてくれる可能性がある

ので “気になる” くらいでも合コンを打診するアグレッシブさが必要。

このときも心を無にする)

⑮ 気を取り直して次の合コンを企画する


これが私流「合コンのルーティン」である。


私は「婚活は仕事」と割り切っていたので、合コンをセッティングすること自体に疲れたり嫌になったりはしなかった。

心を無にしてこの作業を繰り返していくうちに、はじめは自分が企画しなければ合コンのスケジュールが入らなかったが、知り合いを増やしていくことで合コンに誘われることが増えた。多いときは週3で合コンに参加して、ひと月に最高10回合コンに参加できるようになっていた。この能力を仕事で発揮できたら良いのにと思う。

ちなみに「心を無にする」というのは、「絶対に期待しない」ということだ。


◆合コンのメリットとデメリット

合コンを繰り返していくうちにデメリットも発生した。

始めは自分の友達からだったので近い価値観の人が多くて話しやすかったが、合コンをし続けるうちに、どんどん自分の生きる環境とは違う人が参入してくるようになってしまった。自分は婚活目的で参加していたとしても、相手はただの遊びや飲み会として参加する人も増えてしまい、なんでもかんでも合コンに参加すればいいってものでもないなと感じた。

それでも合コンをして良かったのは、同じ独身の女性とたくさん知り合えたことだ。気が合う女性とは合コン以外でも食事や買い物に行ったり、恋愛に関する話を共有したりして仲を深めることができた。婚活に関する情報を交換することもできたし、一緒に婚活パーティーに参加したり、結婚相談所の仲人をやっている女性と知り合うことができたりして、婚活仲間をたくさん作ることができた。

たまに合コンに紛れ込んでいる業者(?)のような人が「今度婚活パーティーを企画しているから来ませんか?」などと誘ってくれることもあり、スケジュールに空きがあればそういうものにも参加して、またそこでも婚活友達を作って、さらに婚活の輪を広げていった。

気が付いたら最終的に独身ハイスペックが集うただの内輪飲みみたいなものにも参加していて、世界って広いなぁとしみじみ感じた。「普通に仕事をしているだけでは出会えなかった人たちにたくさん出会えたのは良い経験になった。」と、婚活としての目的は果たせていないが前向きに捉えることにしている。

地道にひとりでコツコツと取り組むだけの婚活が一気に楽しくなった。


◆合コンで出会った男

1日ごとに老けていくと自分に言い聞かせ、スケジュール帳を真っ黒にするのを目標に、婚活の予定をいれまくり、約7か月が過ぎた。出会った人数は200人を超えていたが、実際に2人で食事をするという段階に進んだ男性は10人しか居なかった。

「出会っているのに誰にも出会えていない」

そんな感覚があった。

誘っていただけることもあるし、自分から誘うこともあるが、お断りされることもしばしば。でもそういうときは「ご縁がなかったな。」と思うしかないし、デートしてしばらく連絡をとっていたのに、ある日突然未読スルーされたら「他にいい人が見つかったんだな。」と思うだけ。自分に非はないと言い聞かせて、いつも前向きに活動するようにしていた。

とはいえ実際はかなり落ち込んだし「やっぱり自分から誘わなきゃよかった。」と後悔することもあったけど、切るときは切る、切られるときも潔く切られないと、いつまでもウジウジしてしまうタイプなので、次に進むためのステップだと思って常に当たって砕けるようにしていた。

1番良くなかったのは、1人の男性に一目ぼれして約3か月間に渡り複数回のデートを経たのにも関わらず、なかなかお付き合い段階に進まなかったときに、彼から「今度家で一緒に映画でも観ようよ。」と誘われて身体の関係を持ってしまったことだ。

私の家に来たいと言われたときに「付き合っている人じゃないと家に入れたくない。」と断り、その後また外デートをしていたのだが、今度は彼の家に誘われた。もう付き合いたい気持ちでいっぱいだったので、思い切って彼の家に行ったが、本当に映画を一緒に観るだけで指一本振れてこなかったので安心して2回3回と一緒に過ごすようになったときに、恋愛感情の高まりに身を任せてしまった。

「結婚がしたくて活動していたはずなのに、私はなんて軽率なことをしてしまったんだ。付き合ってもいないのに身体を許してしまうような女と付き合いたいわけないし、嫁にしようなんて思うはずがない」

そう思ってひどく落ち込んだ。結局それまで毎日連絡をとっていたのに、気が付いたら連絡をとらなくなって、2人で会うこともなくなった。きっと私のことを少しは好きで付き合おうと考えたことはあるかもしれないが、結局付き合うほどではなかったということだろう。

身体の関係を持ってしまえば一種のゴールを迎えてしまう。本来お付き合いをした男女だから許される行為を先にしてしまったら、もうお付き合いする理由なんてないだろう。付き合うという気持ちが固まっていれば先に付き合っているし、その気がないから「どうせ俺のことは好きだろうし、いいだろう。」と思われて利用されるだけ。他の出会いをシャットアウトして「彼と付き合うぞ!」とデートに励んでいた私は目の前が真っ暗になった。情けない。


◆追い詰められた心が向かった先

頭では分かっていた。彼は“ヤリモク”だったんだって。 でも彼は私の前では“誠実” だったのだ。優しかったし、誠意ある言葉をくれたし、ちゃんと向き合ってくれているように感じた。だから完全に信じてしまった。

どうにかして彼の心を取り戻せないのかと、インターネットの検索窓に「彼の心を取り戻す方法」とか「セフレから彼女になる方法」などという文章を入力し、根拠のない恋愛マニュアルを調べつくした。

そうしてたどり着いたのが、“復縁屋” と “オーラを送る人” である。

ある日、SNSで「元彼の心を取り戻したい方へ」という投稿が流れてきた。料金は30万円。恋愛工作をしてくれるという。 彼の周囲に仕掛け人を送り込み、偶然を装って再接触のきっかけを作る―—というプランだった。

本気で迷った。 私はもう正気ではいられなかったのだ。

他にも、「遠隔オーラを送ります」というアカウントから「あなたの恋愛運を好転させます」というDMが届いた。金額は1回5千円。送られてきたのは、ありがたい風の画像と次に心がけるべき行動のアドバイス。内容は当たり障りのない言葉ばかりで「これ本当に効果あるの?」と薄々分かってはいたけど、それでもすがりたくなる。

誰かに言ったら笑われるかもしれないけど、 心が弱っているとそういう“ちょっと怪しい” ものでも『藁にもすがりたい』気持ちになる。


どんなに頑張っても報われない、何も変わらない。

もう手段は何でもいい、恋愛が成就するなら。

そう思ってしまう自分がいた。


そして同時に「私はここまで追い込まれていたんだ」とあとから気づく。

このときの私は「約7か月間、必死で異性と出会い続け、200人と出会ってやっと1人見つけた好きになれそうな人に “ヤリ捨て” された」のだ。

こんなに惨めなことがあるだろうか。自分を完全に見失っていた。

でもきっと、この感覚は婚活で心がボロボロになった誰もが一度は通る道だと思う。


私は自分が何をやっても、これだけ行動しても報われないことに飽き飽きして、婚活をやめてしまいたくなった。でも婚活をやめたら結婚できないかもしれない。だからなにか行動しないといけない、でも自分ではもう何を頑張ったらいいのかわからない。

試しに1回5千円の「遠隔オーラを送ります」というアカウントを頼ってみることにした。すぐに返信があり、彼とのなれそめから連絡が取れなくなった経緯までを細かく説明するように言われた。私は言われたとおりに質問された内容をDMで返信した。

「彼の心はまだあなたの近くにあります。彼は今どうしていいのかわからなくなっているだけです。私がオーラを飛ばせば2週間後には彼から連絡が来るでしょう」

正直、オーラの正体が何なのかもよくわかっていなかったが、何もしないよりはマシかもしれないと思って5千円を支払って『オーラを飛ばしてもらう』ことにした。


2週間後、私のところに連絡してきたのは彼ではなく『オーラを送った人』だった。


「彼の心がもうすぐそこまで来ているのを感じます。もう一度オーラを飛ばして確実に彼の心をあなたのところに導きましょう」


もう一度5千円払うように指示されて、また「オーラを飛ばしてもらう」ことにした。

当然だが彼からの連絡はなかった。

「彼に違う女の邪悪なオーラが近づいていて邪魔をしているようです。すぐに追い払う必要があります。もう一度オーラを飛ばして彼を守りましょう」

またDMが届いた。さすがに1万円以上課金する気にはならなかった。

どうせならもっと面白い展開を期待したが、さすがに芸がなさすぎる。

とことん虚しくなったが、こういうことはネタにして笑い飛ばすしかない。

私はすぐに婚活オンラインサロンのページを開いて、自分がしてしまったバカなエピソードを会員限定のSNSに投稿した。


◆支えてくれた仲間たち

私のSNSを読んだオンラインサロンの仲間からすぐにリプライが届いた。

「ジャスミンさん、落ち着いてください! 彼を呪うなら私が無料で念を送りますから!」

「そんな怪しいものにお金を払うなら、私と美味しいディナーに行きましょう!」

何人かはDMも送ってくれて、たくさん相談にのってくれた。

その頃の私は「恋愛がダメ=私の存在価値ゼロ」と思い込んでいたから、もしひとりで婚活をしていたら本当に30万円くらい払ってしまっていたと思うし、もし偶然でも彼から連絡が来ていたら本当にオーラの存在を信じてしまっていたかもしれない。でも仲間がいたから私は救われた。

「誠実なヤリモク」という人種

いわゆるワンナイト狙いのヤリモクではなく、

『きちんと段階を踏んで複数回のデートを重ねた上で、あわよくばセフレにしてやろう』

という “誠実なヤリモク” が男の中には存在するということを私は学んだ。


そういう男はいわゆる “イケメン” の風貌ではない。モテないからこそ “誠実” であることを武器にして女性達から選ばれるための入口に立つ。

「僕はモテないから」とか「実は最近まで6年間付き合っていた彼女と別れたんだ。結婚まで考えていたんだけどね。」などと言いながら女性に近づいて、安心感を植え付ける。だがその裏には、“長期的に遊べる関係” へ持ち込みたいという計算高さが潜んでいることがある。

女性が「この人は安全だ」と思い込んだ瞬間、彼らの思惑通りの関係が始まってしまうのだ。


本当に誠実なのかどうかは、実際によくよく話を聞いてみて「若いときはワンナイトもよくあったよ。」とか「昔気が付いたら同時に3人と付き合っていたことがある。」なんて言う武勇伝を語り出すかどうかで判断できたりするが、一度好きになってしまった男性を疑うのは難しい。


こういう “誠実なヤリモク” という種類の男を作り出してしまったのは、私のように危機管理能力が低い女が居るからなのも事実だ。


そういう男性に傷つけられる女性が生まれないためにも、

1人の女性として、私はもっと自分の行動に気を付けなければいけない。

女性の尊厳を軽く差し出してはいけないのだ。


今後は絶対にこのようなことがないようにすると、

私は自分の中の “ジャスミン” と婚活仲間達に誓った。


【連載目次】

第1章 恋愛という名の予習

第2章 婚活パーティーという戦場

第3章 経験しか信じない男 コウイチ

第4章 婚活オンラインサロンでの学び

第5章 合コンという社交場の裏側

第6章 完全無欠の遊び人 タケル

第7章 マッチングアプリという“カタログ恋愛”

第8章 個人主催パーティーの甘い罠

第9章 SNS婚活の“自由”と“偏見”

第10章 ミツルの洗脳

第11章 結婚相談所という最後の砦

第12章 『婚活うつ』という終着駅

第13章 独身偽装男 リョウスケ

第14章 結婚しなければ、という呪い 『婚活依存症』

第15章 ギャンブル借金浮気男 マコト

第16章 自称婚活中の男 マサヤ

第17章 私は、婚活をやめた

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