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7話 異変 後編

 ーー駆け込んで来た子供に店内の者達の視線が集まる。

 子供は12歳前後の少年だ。

 この世界では、12歳くらいになるとトレイル(冒険者)の親に付いて見習いを始める頃らしい。


 「お願い...父ちゃんを...助けて...」

 傷だらけの子供は明らかに必死な様子だった。

 その男の前にナッシュが立った。


 「お前...確か、移送隊の護衛依頼を受けたオマル奴の息子だよな?」

 「ああ...オマルは僕の父ちゃんだ...」


 子供の話しはこうだった。

 街への物資移送隊が魔物により壊滅。

 現在は生き残りが、トロイア街の北にある廃村に隠れているらしい。


 要するに救出依頼だ。


 店内のトレイル達が集まり口々に意見した。

 「で、報酬は?」「慈善事業じゃ行かねぇ」

 「さすがに夜の魔物は...」「どうする..?」


 懇願する子供にトレイル(冒険者)達は冷徹だった。




 ーーその時、神殿からの使者が酒場にやってきた。


 使者は手に持つ手紙を読み始める。

 「大神官ケテル様からトレイルの皆様に正式に依頼を出されるとの事です。報酬は1万クム。尚、負傷者が出た場合の無料治療を約束する。以上です」


 ーー騒めく酒場の店内


 誰かが声を上げた。

 「おい、やたら美味しい条件だが...魔物の種類はなんだ?」


 使者は助けを求めに来た子供に相槌を打つ。

 「人狼だよ...15から20は居る...」


 ーー店内が沈黙に包まれた。

 破格の報酬に色めき騒いでいた者達は静かに席に戻り背を向け俯いた。


 泣き崩れる少年の姿が痛々しかった。


 「ナッシュさん...難しい相手なんですか...?」

 ナギタは子供の前で腕を組み思案しているナッシュに恐る恐る質問をした。


 「ああ...。強さはお前らがいつも倒してるガイコツより少し上程度だが...狡猾で連携してくる。しかも俺たち人間と違って、奴等は夜目が聞く。夜は絶対に戦り合いたくない部類の魔物だ」


 「そうなんですか...。でも、あんな小学生くらいの子の頼み...」


 「ナギタ。気持ちは分かるし、他人を助けたいと思う事は良い事だ。だが、お前のその判断で仲間が死ぬリスクは考えないのか?」


 ーー!!


 「で、でも...」

 ナギタは悔しそうに拳を握った。


 自分1人なら今すぐ助けに行ってやりたい...。

 そう思い1人で行こうと決心を口に出しかけた瞬間。

 「それなら俺ひとり...」


 「あたし行くよ」「先輩...わたしも」

 「僕も良いですよ先輩...怖いけど」

 異世研の仲間達がナギタの後ろに立っていた。


 ニノ...ナコにシンまで...。


 思案していたナッシュに仲間のガストンが背中を叩く。


 「あー!もう、仕方ねーな!」

 頭を掻くナッシュにミイとリーも肩を叩く。



 ーーこうして救出作戦臨時チームが組まれる事となった。




 ーー城塞都市トロイア正門


 兵士長のゾルゲさんが出迎えてくれた。

 「すまんな。一緒に行ってやれなくて。俺たちは都市を留守にする訳にはいかん。頼んだぞ」


 そう言って兵士長ゾルゲさんは鳥型の騎獣(トリウマ)を俺たちに貸してくれた。


 「ゾルゲさん、ありがとうございます」

 ナギタは深々とお礼をした。


 「さあ、ナギタ。お前ら準備大丈夫か?」

 振り向くとナッシュさん達が全員準備を整えトリウマに騎乗していた。


 「はい!」



 完全に日が落ちた荒野に風が吹き抜ける。

 出口まで見送りに来たオマルの息子が泣きながらナギタ達を見送る。


 「行こう!」


 ナギタ達[異世研]とナッシュ率いるアーリーグレイブは荒野の闇に消えて行った。

用語

[異世研]

ナギタ達のパーティ名(仮)

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