1話 転移先は滅びの世界だった。
プロローグからの続きとなります。
光の粒子が収束していく。
広間には異世研メンバーの横たわる姿。
ーーナギタ!ねぇ!ナギタ!起きて!
「んッ....う...」
「ナギタの意識が...!」「ナギタ先輩...」「せんぱい...」
ニノと後輩2人の声がする...。
ーーはッ!!
真っ白い壁。
さっきの井戸の底と同じ様な広さの空間だ...。
金子先輩がパニックになってる。
ものすごい勢いで何かを早口で喋っている...。
懐中電灯が無くても明るい...さっきと同じ...。
ーー!!人が居る。
昔ゲームで見た様な神官の格好をした...人間?がいる。
そして、鎧に槍を持った兵士が何人もいる。
こちらを見ながら何か喋っている。
「ーーーー!ーー。ーーーー!」
何を言ってるのか分からない。
その時、神官の後ろから法衣を着た人達が何か祈りの様な事をしている...。怖い。
ーー!!
脳の中でフラッシュバックが起きた感覚...。
頭が...耳の奥が...苦しい...。
「聞こえるか?。意味は分かるか?」
さっきまで分からない言葉を話す神官が、突然日本語で話している...。
「勇者達よ。今、語言理解の聖典大魔法をかけた。言葉は分かるだろうか?」
そう言った神官はナギタ達の反応を伺う。
「ゆ、勇者?」
「ねぇ!ナギタ!金子先輩!何が起きたの...?勇者って」
ニノがまくしたてる。
奈子は...放心状態の様だ...。
「ナ、ナギタ先輩...もし...これ...」
進次郎は怯えて口が回らない様だ...。
ナギタ達の様子を見ていた神官は満足そうだ。
「ふむ。どうやら言葉は大丈夫な様だな」
「ゆ、勇者って...どういう事ですか?」
ニノが神官に質問をした。
神官はゆっくりと口を開く。
「勇者と申し上げた。異世界より貴方達は転移されたのだ。この世界で戦う勇者として」
金子先輩が何かピンと着たようだ。
「勇者!そうだ!僕が勇者金子だ!遂に本当に叶ったんだ!異世界だ!あはははははは!」
ーー俺達は本当に異世界に転移した...らしい。
その後、俺たちは案内された。
どうやら神殿内の深部に居たらしく、神殿を出ると外壁に囲まれた城塞の街が目に飛び込んできた。
見える景色に、自然の豊かさや美しさは無い。
草木は少なく痩せた大地。疲れた民の姿。
粗末な家が建ち並ぶ貧困街の様相。
とても、異世界漫画の様な美しさはなかった。
そして何より、広がる荒野の遠くに巨大な塔?の様な物が見える。
その巨大さは遥か遠くにあるのに、それでも塔の大きさは異常だった。
雲を突き抜け先端すら見えない塔。
空を飛ぶ鳥?あんなの見た事ない...。
羽の生えた短いムカデの様な物が飛んでる...。
荒野の遠くに、肉眼でも見える程に巨大なトカゲの様な生き物...。
護衛と思われる兵士達が乗る、ニ足歩行の鳥みたいな生物。
「本当に異世界...なんだ...な」
俺達は唖然としながら案内されるがままに神官の後に続いた。
そして、大きな広間に通された。
神官は玉座の様な椅子に座り口を開いた。
「異界の勇者達よ。改めて、よくぞこの世界に来てくれた。ここはエリスティア王国、南トロイア神殿。私はこの神殿の大神官ケテルだ」
「あ...あの!ここは異世界ですか?元の世界には...」
ナギタは大神官に詰め寄り質問を口にする。
ーーガシャ!!
兵士達の槍が大神官ケテルとの間に割って入る。
ケテル神官が兵に制止の合図を出す。
兵士達はナギタに頭を下げ、下がって警備に戻る。
「あの...」
ナギタは同じ質問をしようと口を開くが、神官が制止の手を差し出し説明を始める。
「お主達の質問は分かっている」
「...」
「まず、このエリスティア王国があるのはオルクシル大陸である。そしてお主達の世界とは別の世界だ」
神官は世界地図と思われる物を見せた。
確かに自分達の知っている地形とは全く違う。
神官は話しを続ける。
「元の世界に帰る事は出来る。ただし、魔力を膨大に使う。5年以上か...または10年はかかる」
「ご、5年!あたし家族に何も話してない!。それに...5から10年なんて...」
ニノは神官にくってかかる。
「お母さん...お父さん...」
奈子は泣き始め、進次郎は膝をついて俯く。
「勝手に来させられて最悪10年も?そんな約束はしていないですよ!」
獅郎は皆を庇う様に前に出て叫んだ。
金子先輩が獅郎の前に出て啖呵を切る。
「はーっははは!要するに僕が勇者として敵を倒せばすぐ帰れるんだろ!?」
「うむ。まあ、その通りである。もちろん時間軸も調整する事で、そちらの世界で1年程度の誤差で戻せる事も約束しよう」
神官はお付きの法衣を着た者達に顔を向け、相槌を打ってから応えた。
俺たちは現実を受け入れるしか無かった。
そして神官から今後と条件の説明があった。
※転移者は俺たち以外にも数多くこの世界に居る。
※3ヶ月は神殿で衣食住の面倒を見てくれるが、それ以降は自立する事。
※成果無くしては元の世界に帰れない...。
夢と希望。チート能力やハーレム。
そんな都合の良い異世界はここには1つも無かった。




