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10話 灰と煙

  ーーシン=上条進次郎を亡くして2日後



 南トロイア神殿


 この日はシンや亡くなった移送隊の人達の葬儀が行われていた。

 [異世研]メンバーのナギタ、ニノ、ナコ。

 [アーリーグレイブ]メンバーのナッシュさん、ガストンさん、ミイさん、リーさん。


 そして、受付のマーニュさんや移送隊の生き残りの人達とその家族。


 泣き続ける人。

 空を見上げる人。

 黙して俯く人。


 やり場の無い悲しみが、空を埋め尽くしていた。


 参列者1人1人がそれぞれの想いを胸に、棺に花を添える。

 花はこの世界では貴重だ。

 そして、死者の魂が魔の物に取り憑かれない様に。

 安らかに眠れる様にと、祈りを込め捧げられる。



 魔法陣の火葬炉へ、棺が火に焚べられていく。

 この世界の遺体は、浄化か火葬しないと魔物となってしまうからだ。


 ナコはあの日から、発作的に悪夢がフラッシュバックしてしまう様だ。

 多分...PTSDだと思う。


 ニノも、きっと辛い筈なのに俺たちを一生懸命に元気付けようとしてくれてる。

 でも、その優しさに応える事が出来ていない。

 ニノ...ほんと...ごめん。


 ナギタとナコはシンを亡くした自責の念から立ち直れていなかった。


 このままじゃダメなのは分かっている。

 また、戦って稼がないと生活が出来なくなるのは分かっている。

 分かって...いるんだ。



 火葬炉の煙突から一筋の糸の様な煙が、空に溶けていく。


 後悔で胸がいっぱいになる。

 シンの死を伝えられた瞬間から、俺の時間は止まったままだった。


 「ナギタ、ニノ、ナコ...」

 ナッシュさん達が声をかけてくれる。


 「今日は...シンの為にありがとうございました」

 ナギタとニノは並んで頭を下げる。

 ナコは俯きずっと泣いてる。



 「今夜、話がある。必ず全員で来てくれ」 



 ナッシュさんはそれだけ伝え去っていった。



 きっと元気付けてくれるのだろうか...。

 正直、誰ともまだ話せる自信が無い。


 しかし、ナッシュさん達を巻き込んだのは俺だ。



 まだ謝ってなかったな...。

 俺は今夜の約束に行く事にした。



 ーーその夜 酒場。


 ナギタとニノの2人は、ナッシュの呼び出しに応えて酒場に来ていた。


 「よう。ナギタ。やはり、ナコは無理だったか」

 「はい...あの日の事がフラッシュバックして過呼吸の発作が出てしまう様で...すいません」


 「いや、仕方ない。無理は言わないさ」

 「あの...話って...」

 憔悴しているナギタを気遣いニノが話を切り出す。


 「オマルさん。アマル」

 ナッシュが、どこかで聞いた名前を呼んだ。


 ーー!!

 あの時の...泣いて助けを求めてきた移送隊の...。


 「ナギタさん、ニノさん、そしてナコさん。貴方達のお陰で父さんが生きて戻る事が出来ました...本当にありがとうございました。でも、僕の責任で...仲間を...シンさんが...ごめんなさい」


 息子のアマルは隣に居る、父オマルと共に土下座をした。


 「いや、そんな...そこまでしないで...。頭を上げてください....」

 ニノが困った顔でナギタの顔を見る。


 「あなた達は悪くない。俺の力が足りなかっただけです...」

 ナギタは俯き目を伏せる。



 黙って見ていたガストンが口を開く。

 「シンは...俺たち前衛は...守った者にそんな顔をしたくて命を賭けてる訳じゃない」


 ナギタはガストンの顔を見上げた。

 ガストンは言葉を続ける。


 「お前達が...シンが、お前達を守ったのは後悔や責任を感じてほしいからじゃない。それが、分からない奴じゃないだろ?ナギタ!!アマルもだ!」


 ガストンはナギタと助けを求めた息子アマルを見る。


 ナッシュがナギタと息子アマルに触れ語りかける。


 「前に話したろ?俺はかつての仲間を全員亡くしてる。でも前を向いてコイツ等、アーリーグレイブの仲間達に命を預けて今を生きている」



 ナギタは拳を握り締め呟く。


 「はい...」

 一筋の涙が床を叩く。


 「ナギタさん。あなたの勇気とシンさんの命がけの頑張りのおかげで私は息子とまた会えた。唯一の家族の私が死んだら...息子は物乞いとなっていたでしょう。本当にありがとうございました」


 ナギタの心の奥底にあった重い、何かが。

 少しだけ解き放たれたような気がした。



 「ナギタ。もう1つの話。聞いてくれ」

 「はい」


 「期間は、ナコが立ち直れるまででいい。ナギタ、ニノ。お前らウチに入れ」



 それは、唐突な提案だった。

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