プロローグ
少し長めのプロローグ。
ナギタ達が異世界へ転移してしまうまでのストーリー。
ーー2026年 信州県中信市 某大学
とあるサークル部室。
部室には[異世界転生サークル]と書かれている。
通称[異世研]。
「あー、面白かったー!」
「あ、次あたしも読みたい!」
「ああ、はいよ!受け取れ、ニノ!」
俺の名前は梛野圭太通称ナギタ。
地元Jクラブのユース出身!
だったんだけど...大怪我でサッカーを諦めた。
夢を失ってからは...異世界みたいな非現実に憧れる様になった中信大学2年の20歳。
唯一の取り柄を無くして、この先の人生の在り方に少々不安がある。
流行りの異世界転生ものの漫画が宙を舞う。
「うわっと...。ちょっと〜、優しく投げなさいよね?!ナギタ!」
「悪りい⭐︎」
この元気の良い女子の名前は 二ノ宮町子。
なんでも、自分の名前は古風過ぎるからと気に入ってないらしい。
いつか、異世界モノにでてくる様な素敵な王子様と恋愛したいと心底願ってる中信大学2年生の19歳だ。
「どれどれ〜♪」
「ニノ〜ネタバレしていい?」
「ふざけんなし!」
ーーガラガラと部室の引き戸が開く。
身体の大きい男がのっそり入ってくる。
「先輩どーもです...」
「よう!進次郎」「お、シンおつー」
「あ...先輩方、新刊どうぞ。って既に手に持ってますね...。がーん」
この間の悪い優男は上条進次郎。通称シン
東北出身の口下手だ。
身長は190くらいある!中信大学1年生の後輩だ。
やはり、内向的なタイプはガタイ問わずオタク道に入り易いんだろうか?
ーーバタン!どすん!
コケながら小柄な女の子が部室に入ってくる。
「ほげー...あ...失礼しま...す!」
「おう、奈子!」「なっちんおつー」「やあ...」
このドジっ子属性の巨乳は氷鉋奈子。
長い前髪で、顔と本性と胸を隠してるタイプの一見クラスの地味子。実は可愛くて...まあ、大きい。
普段は大人しくしてるか、テンパってるかのどちらかだ。
進次郎と同じ高校だった中信大学1年生18歳だ。
BLから王道ものまで大体網羅しているらしい。
他にも先輩達が居るんだけど、基本的にはこの4人でダラダラしてる。
ーーピコン。
「あ、春原部長から...」
「ホントだ。え、今から飲み会?えー。春原先輩はいいんだけど..."アレ"居るのは...」
「部長はいい人だけど...あの人は...ちょっと...」
ーーあの人。
4年生の春原部長は優しくていい人なんだけど...もう1人が問題だ。
3年生の金子先輩。
いつも、女子をじーっと見てたり、すれ違い様に匂い嗅いだり。まあ、とにかく絵に描いたような女の子にモテないオタクだ。
まあ、せっかくの春原部長からの誘いだし、奢りって話しなので皆で行く事にした。
ーー中信市 駅前
地方都市とはいえ、この街はそこそこ賑やかだ。
程良い田舎と都市が絶妙に混じる生まれ育ったこの街の感じは気に入ってる。
「おーい。みんな」
春原部長が手を振っている。
来年には大学院行きが決まっているし、実家は全国でCMもやってる地元大企業の御曹司。
まさに金子先輩とは真逆の、絵に描いたようなイケメン王子様だ。
そして男女とか関係無しに、妙に不思議な魅力を持っている人でもある。
「先輩!お誘いありがとうございますー!!」
「はわわー!ゴチになりますー!」
女の子2人は嬉しそうだ。
イケメン王子っていいな...。
正直羨ましい。
「僕もお金出すんだからね!少しは僕に感謝してくれなきゃね」
金子先輩の登場だ。
あ、女子2人がデカい進次郎の後ろに隠れた...。
そんなこんなで飲み会が始まった。
飲み会もいい感じになった頃、金子先輩が"ある"提案をしてきた。
いわゆる都市伝説の検証だ。
異世界に行く方法10選
エレベーター、電車、六芒星、狐の窓、アローの呪文、ぬいぐるみ、幽体離脱、タットワの技法、合わせ鏡、押入れ。
これを今度の夏休みに合宿でやりたいらしい。
異世界転生研究サークルなんて集まりだけど、皆ほんとに異世界になんて行けるとは思ってはいない。
てのいい現実逃避だ。
まあ部長も賛成してくれた事で女子2名の参加も決まり夏休みに実行する事になった。
ーー夏休み某日
「ぐふふ...じゃあ最後の検証はこれで終了だね。まあ、異世界行きたかったけど、こうやって女子と仲良く合宿できたから僕は満足だね!」
言い出しっぺの金子先輩は満足そうだ。
女子2人は終始、金子先輩から距離をとりながらも皆でなんだかんだで楽しく過ごせた夏休みになったと思う。
そんな俺たちを、ずっと楽しそうにニコニコしていた春原部長が1つ提案をしてきた。
「僕の地元に神隠しの伝承があるんだ。最後の思い出にどうかな?」
「先輩なにそれ!行ってみたい!」
女子2人は春原部長の提案は大体OKする。
「梛野と進次郎はどう?是非行こうよ。終わったウチの別荘に招待するからさ」
春原先輩に、そんな事言われたら行くしかない。
俺は進次郎と顔を合わせて頷いた。
「決まりたね!」
春原部長はやたら嬉しそうだった。
「チッ。」
1人、春原先輩の後ろ姿を睨み付ける者がいた。
金子先輩だ。まあ、女子2人の扱いの差からして気に入らないんだろうな。
こうして、夏の夜の楽しみは続いた。
それは何処か異世界っぽくて、非日常を皆で体験しているみたいで本当に楽しかった。
こんな日がずっと続いて欲しいと思ったんだ。
ーーでも、この選択は間違いだった。
中信市 某所
ここは、中信市と県庁を繋ぐ峠の旧道だった。
[関係者以外立ち入り禁止]物々しい看板がより非日常を加速させる。
「せ、先輩!?この看板...大丈夫ですか?」
気弱な進次郎が珍しく声を上げる。
「何かあったら、僕が町子ちゃんと奈子ちゃんを守るから大丈夫!」
金子先輩はなんか鼻息が荒い...。
女子2人は俺の後ろに隠れてしまった。
「ここはウチの家が管理してる山だから大丈夫だよ。さあ、行こう」
春原先輩はしれっとコネまで凄い...。
イケメン王子に勝てる気はしないね...。
ーー 梔子峠 旧道奥
そこには放棄されたお堂があった。
心霊スポットとしても120点満点の迫力がある。
そして、霊感な無い人ですら...。1人にされたら気が狂いそうな恐ろしさを感じる。
朽ちかけたお堂に入り奥の扉を開くと、そこには井戸があった。
それもハシゴ付きの大きな井戸だ。
春原先輩が説明を始めた。
「ここは400年前に作られたんだ。そしてこの井戸は僕らが車を停めた辺りに繋がっているんだよ」
いつもの優しい口調で説明を続ける春原先輩。
「そして、この井戸から出口は神隠しの伝承があるんだ。最後の思い出に皆と行きたくてね」
屈託の無い爽やかな笑顔で春原先輩は笑う。
「え...リアルに神隠しにあいそう...」
「これは...想像以上ですー...」
女子2人は戦々恐々だ。
「ぼぼ...僕が先輩として先に行くよ!」
金子先輩は女子2人にいいところを見せたいんだろう。
「ナギタ先輩...おれ...怖いです...」
進次郎はガタイに似合わずビビリきっている。
正直、俺も嫌な予感がした。
「さあ、皆行こう!最後の思い出に!」
春原先輩はいつもより、なんだろう?
有無も言わせない感じで井戸の中を勧める。
まあ、車も唯一お酒を飲んでない春原先輩が出してくれた。
断り難いのもあって皆で入る事になった。
順番は。
金子先輩、進次郎、女子2人、俺、最後に春原先輩が入る事になった。
皆、騒ぎながら入っていく。
井戸の中からキャーとか進次郎の声とか聞こえる...大丈夫そう...か...。
そう思って俺も入る事にした。
井戸のハシゴを降りながら上に居る春原先輩を見る。
ーー!!。月明かりの責だろうか?
狂気すら感じる笑顔の目は全く笑っていなかった。
井戸の底には金子先輩、進次郎、ニノ、奈子、の4人が懐中電灯の明かりを頼りに待っていた。
底まで到着した俺は春原先輩を呼ぶ。
「春原先輩待ってますよー!」
その時だった。
ーーゴゴゴゴゴゴゴ
井戸が閉じていく...。
その閉じる隙間から見えた先輩の顔は、冷徹な。
いや、冷酷な顔だった。
ーーガン!!
井戸が完全に閉じてしまった。
怯える女子2人と進次郎。
から元気で威勢がよくなる金子先輩。
どうする?どうする!?どうしよう!!
ーーギタ。
ーーナギタ!!
「ああ...ニノごめん。少しパニックになってた...」
「ねえ、ナギタ...。この井戸の奥...」
井戸の奥は広い祭壇になっていた。
「の、呪いの儀式!?私達...死ぬの!?」
奈子は進次郎の袖を掴み怯えている。
「君たち怖がる必要はないよ!僕が居るからね!」
今日ほど、金子先輩のカッコつけを始めて有り難いと思った。
中はサッカーのフルコート一面分はある広さだった。
しかし、出口は見当たらない。
携帯の電波はこの山に入った時点で圏外だ。
このままでは...。
その時、広間の中央が光り始めた。
「え?...え!?」
「何...あれ..」
女子2人は驚きで声が出ない。
「ナギタ先輩...神隠しが...」
「ひッ...」
進次郎も金子先輩も困惑してる。
ーー!!光が...弾ける。
弾けた光が地面を伝い文字を浮かび上がらせる。
見た事の無い文字。
いや、昔...ヴォイニッチなんたらで見た...よう...なーー。
光が異世研メンバーたち全員を包んだ。




