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第9話 君の名前は――チ〇コに決めた!

 朝を起きてからの食事といえば、黒ゆで卵と和菓子だった。

 だがしかし、今朝は違う。


「ぷいっぷい」

「おお、もうできたのか? ありがとなブラックスライム」


 収穫した野菜をブラックスライムに渡すと秒で皮を剝いてくれるのだ。

 みじん切りも可能だで、後は茹でるか炒めるだけ。


 ちなみにゆで卵もそのまま渡せば殻を剝いてくれる。


 極めつけは、魚だった。


「ぷい!」

「凄いぞブラックスライム!」


 なんと骨を綺麗に取り除いてくれるのだ。というか、骨だけ食べてくれる。

 ぼりぼりばりばり。出てくるのは、完全に身だけ。

 ただ黒鶏の餌に必要なので半分は残してもらった。


 これには黒助も大喜び、そしてやっぱり二人は仲良しみたいだ。


「ぷいぷい!」

「がーがうがう!」


 抱き合い、褒めあい? 飛び跳ねはう。

 やだうちの子たち可愛すぎ……!


 一体過去に何があったのかは知らないが、何かのきっかけで離れ離れになっていたのだろう。

 この広大な土地で……ものすごく寂しかったに違いない。


 しかし一晩眠れば家族だ。少なくとも俺はそう思っている。


「黒助、ブラックスライムっ!」

「がうがう!」

「ぷい!」


 存分に抱き合った後、野菜を下茹でし、食卓に並べる。

 調味料は塩しかないのだが、この土地で取れた食材はどれも糖度が高くて美味しい。

 いつかは醤油やマヨネーズもほしい。

 作るのは大変かもしれないが、みんなで力を合わせればなんとかなるだろう。


「よし、いただきます!」


 がうがう、ぷいぷい、黒助とブラックスライムは大満足らしく、嬉しそうに頬張っている。


 旅行も食事もそうだが、大事なのは場所ではなく、誰と一緒か、だ。

 やっぱり、感情を分かち合えるのはいいことだ。


 お腹を満たしたあと、布団で少しごろごろしていたのだが、ふと気づく。


「ブラックスライム」

「ぷい?」

「ちょっと名前……長いよな」

「ぷいぷい~?」

「あだ名、つけてもいいか?」

「ぷい!!」


 どうやらお願いします、という事らしい。

 言葉がわかっているとは思えないが、気持ちは伝わっているみたいだ。


 黒助は安直に決まったが、ブラックスライムは何がいいだろうか。


 うちの大事なコックだ。大切な名前を付けてあげたい。


「――よし、決まったぞ」

「ぷい!」

「がう!」

「君の名前はチョコ。チョコだ!」


 よく見ると美味しそうなんだ。眠るときなんて、ふにゃんっと溶けていた。

 これはもうチョコだろう。


 でも二人とも固まっていた。


 さ、さすがに安直すぎたか……?


 ご、ごめん。

 ち、違うのを考え――。


「ぷいいーーっぷいぷい♪」

「お、おお!? どうした、嬉しいのか?」

「ぷいい!」

「がうがう♪」


 いや、どうやら気に入ってくれたらしい。

 良かった。俺も嬉しい。ぷいぷい!


「チョコ」

「ぷい!」

「チョコ、君はチョコだ!」

「ぷいぷい!」


 頭をこすりつけてくれるチョコ。

 うむ、たまらん可愛い。


 でもこういうのが案外強かったりするんだよな。

 

 名前もブラックスライムキングブラックオーガ見たいな感じで、大勢から恐れられていたり、どんな攻撃も通らないほど無敵だったり。


 なんて、あるわけないが。


「さて、今日は炭酸湯でしゅわしゅわ風呂を作るぞ」

「ぷいー!」

「がうー!」


 はは、なんて楽しいんだ。

 最高だな、スローライフってやつは!


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