絶叫マシン2
「次はどうする?一旦ご飯にする?」
時刻は十二時。お昼時ではあるけれど、目の前にある物をスルー出来ない。
私はビシッと指をさす。
「あれ乗りたい」
そこには上空から楽しそうに悲鳴を上げて滑走していく人達。勢いよく走り回るそれを見てお姉ちゃんと空くんの顔色が変わった。
「そうね、近くだし乗ってきなさい。お姉ちゃんと空はこの辺で待ってるから。陸、頼んだわよ」
陸はため息をつき「行くぞ」と言いズカズカと歩いていく。
私はお姉ちゃんと空くんに手を振って陸の後を追いかけた。
最後に家族で遊園地に訪れたのは四年生の時だった。
お父さんは絶叫マシンが苦手で、母と姉が私を挟むように座っていた。
滝から落ちるその時、私はみんなの真似をして両手を上げる。冷たい水飛沫がかかる。
そして何が起きたかはわからないけれど、水に着地した瞬間に私の体は前のめりになり、手前についていた手すりに顔面を打ち付けた。
顔を上げると鼻と口から血が流れ、お姉ちゃんはそれを見て悲鳴を上げた。
それ以降お姉ちゃんは絶叫マシンがトラウマになってしまったのだ。
列に並びながら陸は私の頭から帽子を取る。空調が効いているからか、アトラクションの待ち時間は涼しくて良い感じ。そわそわと待ちきれない様子の私を見て陸は不審な目を向けた。
「お前あんなことがあってよく絶叫乗ろうと思うよな」
私はじっと陸を見つめる。陸の家族にもこの話は伝わっていた。
「楽しいから。昔の痛みは忘れた」
陸は鼻でふっと笑う。
「柚子姉が不憫だな」
陸の言葉に頷いた。申し訳ないと思ってる。
お姉ちゃんから楽しみを奪ってしまった。
陸は「あー……」と気まずそうな声を出す。
「まぁ兄貴も乗れないし結果良かったか。どっちかが我慢しなくて良いし」
目を反らす陸を見つめる。
そうか、そういう考え方も出来るのか。やっぱり陸はすごいな。
その後会話は続かない。話す時はよく話すけど、特に話すことがない時はいつもこんな感じ。
ついに順番がやってきた。
ドキドキしているとスタッフの声がかかり出発のベルが鳴る。
ゆっくりと走り始めたジェットコースター。一番前の席だった私は手をあげるタイミングがわからずバッと両手を上げた。
すると隣から「ぶはっ」という笑い声。見ると陸が可笑しそうに大笑いしていた。
「早すぎだろ」
キラキラ、ふわふわ、陸はたまに少年のように笑うのだ。
すると後ろから「可愛いー」という笑い声。
私は恥ずかしくなりそっと手を下ろした。
陸は笑いをこらえながら教えてくれる。
「普通は落ちる瞬間だろ。まぁでも自分の好きなタイミングで良いか。ウケるけど」
笑い過ぎでは?とも思ったけど陸が楽しそうなのでよし。
上る、上る、まだ上る。
そしてがくんと向きが傾き……私たちは両手を上げた。
風を切る爽快さに落ちていく気持ち悪さ。鮮やかな視界は目まぐるしく変化し、楽しそうな悲鳴がさらに心を踊らせる。
長くも短いコースを終え私たちは意気揚々と帰り道を歩く。途中で写真が飾られているコーナーに出くわした。
「一番長く落ちるとこあっただろ。アナウンスが入ったとこ。一番怖い瞬間に写真が撮られるんだよ。見てみようぜ」
私たちの姿を探す。
「あったあった。見えるか?って……」
するとまたしても陸は吹き出した。
「おまえっ……マジでやめろよ……」
お腹をかかえて笑う陸。
写真を見るとそこには楽しそうに笑っている陸と、真顔で半目の私が写っていた。
土産話にと陸は写真を購入し、それを見たお姉ちゃんと空くんはなぜか悶絶。
後にその写真はパソコンに取り入れられ、家族みんなのスマホへと届けられたのだった。
私はその写真を部屋に飾ることにした。
美味しいご飯にアトラクション。
久しぶりの遊園地はあまりにも色鮮やかで楽しかった。