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議会で闘う

 お父様はぎっくり腰が悪化して、絶対安静とお医者様に言われて寝ているので、私が王宮議会に出席することになった。


 私が出て大丈夫かしら。

 不安は尽きない。


 お父様とお母様ともう一度鉄道関係の予算を組みなおしてみた。人を集め、物資をそろえたとしても、やはりあと2年はかかると分かった。


 うーん。

 それを1年でやるなんて無理。

 

 それ相応の負担を王宮にもしてもらわないと、人も資材も集められない。税金を上げるのは無理だし、したくない。


 そんなことをしたらうちの領地がダメになってしまう。お父様は王宮議会に出席して現状を訴えるつもりではいたみたいだけど、ぎっくり腰になってしまった。


 だから、王宮議会で私が交渉する予定。うまくいくといいんだけど。資料は用意してあったみたいなので、助かった。


 前の人生のことを考えると、大きなため息が出る。絶対何かあるのだ。


 それに、王宮議会に出るなんて初めてのこと。もともとうちのような下位貴族は呼び出しが来るまで王宮議会に出席することはない。お父様も数回しか出たことがないと言っていた。


 いくらお父様の代行と言えども、文句を言われそうな予感がしてならない。


 まあ、考えても仕方がない。前を向いて前進あるのみだ!

 

 いざ王都へ。

 王都へ入ってホテルにも寄らず、そのまま王宮議会へ直行した。


 王宮議会ってすごい。

 威厳のある、圧迫感のある石造りの建物だ。

 柱には彫刻が施され、議場入り口の扉は、分厚い木の扉。ひと際豪華に彫られていて、思わず見惚れてしまう。


 たぶん、これ高級素材よ。

 大人の背丈の2倍は高さの大きな扉は重かった。議員って、そんなに巨人だったかしらね。


 誰か、ちょっと開けるの手伝って!

 思いっきり引いたのにびくともしない。


 くううう。

 格闘していたら、中にいる誰かが扉を開けてくれた。


 押せばよかったらしい。やだあ、恥かいちゃった。恥ずかしい。

 ブルーな気持ちも、緊張感も飛んでいく。赤っ恥だわ。


「ヴィスワフ伯爵に代わり、ご息女マリー様がご出席です」

 議長が私を紹介する。淑女の礼を軽くして、私は指定された席に座った。


 議場はざわめいている。

「女が来た」

「ヴィスワフ子爵は王宮議会をなめている」


「女なんかに鉄道が敷けるのか」

 外野がうるさい。ああ、腹が立つ。


「あの、マリー様か。ほら、婚約解消されたっていう」

「アントワーヌ子爵のロレンスと」

「ベラルント伯爵の出戻り娘に婚約者を奪われたって」


 ちょっと、婚約解消は関係ないでしょ。本当に腹が立つ! 誰、そんなこと言うのは。クローゼットの角に足の小指をぶつける呪いをかけてあげるわ。


「ケガをした親の代わりにきた、立派な代理だろう。静かにしろ!」

 若い男性の声がした。


 ありがとう、ありがとう。ここにはあなたしか味方がいないのか。いつか御礼をしようと決める。


 顔をあげて、声の方を見ると、青黒っぽい髪に眼鏡をかけている男性を確認した。


 この人、見たことあるなあ。

 知ってる。ええと、名前は……。


 前回の人生では見たことはあるけれど直接絡んでこなかった人だ。元婚約者の関係者だったと思うけど。


 でも、もしかして、味方してくれている? ありがたい。うちの領地に鉄道ができたら、一番に招待してあげたいわ。


 それに比べ、年寄りのぽんぽこ狸どもめ。女で何が悪いのよ。なめられてたまるか。


 だいたい、うちの領地は共働きが多い。男でも女でもできることをして、お金を稼ぐ。それから、家の仕事も分担が基本だ。

 貧乏だからね、家族みんなで助け合いだ。


 うちの場合も同じ。適材適所でできる人がなんでもやる。何度も言うけど、貧乏だからね。


 お兄様と弟を他所にやっているのも、先をみてのこと。私も王立学校は通わせてもらったしね。


 ちなみに王立学校に女子は三人しかいなかった。それくらい王都では女性差別がまだある。いつか女性も王都で活躍できるといいと思う。


 王都だからぜったい馬鹿にされるってわかっていたことだけど、やっぱり女だからと言われると、ムカつくんだよね。


 こっちはあんたらが躊躇している鉄道事業を展開しているんだよ。それに、女が働いて何が悪いんだ。カルカペ王国の貴族以外じゃ、女性も働いているぞ!


 もう容赦しない。絶対許さない。そうさ、うちは貧乏だ。金がいるんだよ。急いで工事するならなおさらだ。きっちりこっちの言いたいことを言わせてもらおう。

 たぶん、私の鼻の穴は膨らんでいる。


「静粛に!」

 議長が声を上げた。


「マリー様、ヴィスワフ子爵領の鉄道計画の進捗状況などをご報告ください」


「はい」

 穏やかな声で議長は私を促した。


 このおじちゃんは敵じゃないらしい。よし、味方とまではいかないけど、中立認定だ。


 議長は心配そうに私を見ている。

 大丈夫。緊張しているけど、声は出せそう。


「隣国ハトラウス国と共同でハープス川に橋を架け、同時に鉄道も走らせる計画です。ヴィスワフ子爵領内ではすでにマイミア路線が試験的に走っております。もともと5か年計画で領内に鉄道を走らせる計画でしたので、急げば2年で鉄道を敷くことができます」


「2年!」

「おそすぎる!」

 あちらこちらから意見が飛んできた。


 そんなこと言われてもね。困るんだよね。


「2年が限界です。王宮からは1年でと言われましたが、一昨年の洪水、昨年の農業の不作と不幸が続き、領内が疲弊しております」


「そんなのはお宅の事情だろ」

「鉄道事業は国際的な問題だ。内政は関係ないだろう」


「辺境(田舎)には木も鉄も豊富にあるだろう。それを使えばいい」

 国際的な問題になるまで鉄道事業を放置していたのは、おたくらぽんぽこ議会だろう。あと、うちの鉱山は鉄鉱石でなくて、貴金属のほう。宝石だからね! 無理をいうな!


 ヤジが飛んできた方をギロッとにらむ。前回、お母様と執事のセバスはこの議会のやり取りを受けたのか。きつかっただろうな。ここはなんとか私が頑張らないといけない。


「王宮から、王宮議会から鉄道を至急通すようにというなら、これは国家事業ですよね? 国際的な問題というのですから。それから、内政の立て直しができないと、国家の援助も手当てもないのですから、資材や人足を集めることもできません。どこからお金が湧いてくるんですかねえ? 予算を組んでいただけるのでしょうか」


「……」

 議会は静まり返った。


 しまった。嫌味を言い過ぎたか??


「鉄道事業は、国家事業、つまり、公共事業なわけですよね? ええっと。領内の会計資料を確認しましたところ、我が領内の鉄道の計画にはほとんど資金援助がなかったのですが、これはいったいどういうことでしょう。早急に説明していただき、早急に援助をお願いしたい」


 私は場内をぐるっと見渡した。

 くうう、誰も目を合わせないじゃないか。みんなケチだな。しっかり私腹をためこんでいるくせに。

 よし、先に進めちゃえ!


「続いては、具体的にどこに鉄道を通すかですが。マイミア路線はマイミア山を通り抜けていくため、トンネルの強化が必要となります。また、リバーサイド駅からマイアミ駅までの鉄道だけでなく、リバーサイド駅からタクラン駅へ、タクラン駅から王都入り口までの鉄道を敷く計画です」


「王都まではヴィスワフ子爵が敷くのではないのか?」

「いえ、領内のみです。王都入り口から王都までは王宮と王宮議会でお願いします」


 議会の空気が大きくうねる。

 全く金は出さないのに図々しい。うちの財政だって限界だからね。


「我が領は、先に鉄道工事をしていたから王宮、王宮議会からの急ぎの工事の要請に対応ができるもの。しかし、それまで一切援助がなかったというのは、鉄道事業、しいては我が領地を軽んじていたのではないのでしょうか。我が領地を辺境の地と侮っていたのではないのでしょうか」


 議場がしずかになる。


「つきましては、遡って鉄道事業費の負担をお願いしたいと思っております。また、王都入り口まで一年で鉄道を急いで敷くとなると、至急資材を集め、人足を募集しないといけません。そのため、王宮、および王宮議会に特別予算をいただきたく、よろしくお願いします」


 ほほほほ。言いたいことを全部言ってやった。

 ざまーみろ。なめた態度で、小娘扱いしやがって。うちの領地まで馬鹿にしていたでしょ。


 ああスッキリ。うちの領地は隣国との貿易や鉱石を利用した工房がある、平和でのんびりしたいいところなんだからね。


 議会はすごくざわめいている。そりゃそうだよね。突然、これって公共事業だから、みんなで費用を負担してねって突き付けたんだから。


「静粛に! ヴィスワフ子爵の要請はもっともだと思いますが、皆様はどうお考えでしょうか」

 議長は議場のひとりひとりを見る。


「たしかに、そうだが」

「いや、予算はどこから出せばいいのだ」

「臨時予算がいいのではないか」


「ベラルント伯爵から意見が出されましたが、どうでしょう?」

 議長が周囲の意見を求める。


「領地の負担の比率はどうするのだ。問題を抱えている領地もあるだろう? 優遇措置か何か作らねば、貧困を招くぞ」

「ユーシベ伯爵の言う通りだ」

 ミグレ侯爵が大きくうなずく。


「昨年、一昨年の小麦の出来高を基準にしたらどうだ?」

 ズミアカ公爵が提案する。


「基本的にそれがいいと思う。もともと出来高が低いところや問題がある領地をあとで選別するのがいいか、問題の領地は最初から特別優遇措置として最初にまず退けて置き、あとから税率を決めるか」


 議場はさらにヒートアップする。

「王都の鉄道予算案は決まったのか」

「資料を現在作っております」

 王宮の官僚がやってきて説明し始めた。


 優しそうなおっちゃん議長は、「ヴィスワフ子爵代行、ありがとうございました。現状がよくわかりました」と私に退場の許可を出した。


 どうやらここからは王宮議会の特別予算と費用分担の話になるらしい。


 ヴィスワフ子爵としての費用の要求は受け入れられたっぽい? これって、うまくいったんだよね。


 じわじわと嬉しい気持ちがわいてくる。


 大きな扉の前に立ち、あれ、これって今度は押すの? 引くんだっけ?と悩んでいたら、紺青の眼鏡の男性がドアを引いて開けてくれた。

 

 顔立ちが整っている、二十代くらいだの男性だ。お兄様と同じ年の頃かもしれないな。

「あ、ありがとうございます」


「立派でしたよ」

 男性は小さく微笑み、ドアをしめた。


 扉越しで、議会で鉄道事業の負担について揉めている声が聞こえてくる。


 とりあえず、いくらかは公共事業として資金を援助してもらえそう。成功をかみしめながら、王宮議会近くのホテルにもどった。


 今まで貧乏辺境領地だから予算もなかったのに、予算がつく! いままでの負担もいくらかでも戻ってくるはず。よかった。ほっと胸を撫で下ろす。


 お父様とお母様が作ってくれた改めた予算案と賃借対照表を見る。


 でも、これじゃ足りないわ。今すぐ、お金が欲しい。一年で工事を完成するには資金がいるわ。王宮議会の予算がいつ降りるかわからないしね。念のためだ。今まで放置なんだから、王宮議会を当てにしちゃいけないもの。


 やっぱり銀行に行くしかないか。


 ベッドに転がると、瞼が重くなっていく。きょうは緊張して疲れたなあ。明日は銀行巡りをしよう。きっとこれで断罪回避できたよね?


 いろいろ頭の中で考えていると、だんだん眠りが深くなっていった。


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