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反撃2 兄の帰宅

 お兄様が隣国ハトラウスから突然帰ってきた。

 屋敷は大混乱だ。使用人たちがお兄様の部屋を急いで整えている。


「カルカペ王国の危機と報じられているから心配になって切り上げてきた。職人は数人残ってまだ勉強しているがね」

 お兄様はリビングのソファーに座り、ティーカップを口に持っていく。


 カルカペ王国の危機? なんですかそれって。

「知らないのか? ハトラウス王国では『カルカペ王国身分社会に楔』とか『流通革命に乗り遅れた!?王国の衰退』って新聞で報じられているぞ」

 お兄様がハトラウス王国の新聞を持ってきてくれた。


 うちの脱線事故や火事まで載っている。

「うちはハトラウス王国に近いし、ハトラウス王国と直接やりとりをしているからな」


 お兄様はおいしそうに紅茶を飲みながら、王都商業新聞を手に取った。

 お兄様は眉をひそめている。お兄様はいったい何を読んでいるのかしらと覗いたら、『ヴィスワフ子爵令嬢の受難』とタイトルがあり、火事のことが書いてあった。

 もう片付きましたけどね。

 ちょっと気まずいです。


「ああ、人に入れてもらったお茶はうまいな」

「お兄様は自分でお茶を淹れていたの?」

「ああ、貧乏学生に使用人は贅沢さ。勉強しに行っているんだからな」

 お兄様は笑った。手はごつごつしていて、日焼けをしていることから外で働いていたことがわかる。

 

 私の視線に気が付いたお兄様は「いろんな仕事をした。力持ちになったぞ」と明るい声で話した。

「そうでしたか。大変だったのですね」

 お兄様は苦労したらしい。昔と違った凛々しくなった顔を見る。


「マリーも大変だったな。婚約解消して領主代行。それから婚約か。おまけに鉄道利権が絡んだ脱線事故に火事」

「ふふふ」

 淑女の笑みで対応する。


「誕生日パーティーもトラブルがあったって聞いたぞ」

 お兄様の目はキランと光っていた。どこからそんな情報が入ってくるのだろう。不思議。


「彼女、ああ、ちょっと変わった令嬢がいただろう」

「ええ?」

 変わった令嬢といえば、食いしん坊のご令嬢しか思い当たらない。


「リリア・トクラマだ。マリーと話したって言っていたぞ」

「あの、可愛らしいんだけれど、とても食べることがお好きな方?」

 解放戦線ですって名乗っていたけど。そのご令嬢かしら。


「ああ、そうそう。彼女、食べるのが好きなんだよ」

 お兄様は苦笑した。


「一緒に留学していたんだけど、カルカペ王国に先に帰国するというからマリーの誕生日パーティーの話をしたんだ。途中、うまいところはないかって聞かれたから」

 お兄様、うまいところはないかというのは、どこのお店がいいかという話ではないのでしょうか。


 呆れたようにお兄様を見る。

「マリーがデカいことに巻き込まれそうだって言っていたぞ。リリアはベラルント伯爵家の傍系らしいぞ。ベラルント伯爵家が援助している留学生の一人だ。つまり俺の同期だな」

 お兄様はクッキーをつまんだ。


「お菓子はカルカペ王国のほうがうまいな。ハトラウス王国のほうは甘いんだ」

 次から次へと口に運んでいき、皿の上のクッキーはあっという間になくなった。


 ちょっと待って? ってことは解放戦線とベラルント伯爵家はつながりがあるってこと? メアリーともつながっているってことか。


「それと、ラルフレッドもそろそろ帰るって言っていたぞ」

「え?」

「忘れていたのか? 卒業だよ、卒業」


 弟のラルフレッドは王立学園に行っていた。もう卒業なの? 早いはねえ。ちょっとまって、一年早いじゃない。


「飛び級したらしいぞ。ヴィスワフ子爵領が危ないから帰らないとって言っていた」

 お兄様はニヤッと笑った。


「マリー、現在の状況を話しなさい。これからは一緒に手伝ってやるから」

 お兄様に言われ、王宮議会に2回呼び出されたことを話す。


 お兄様は顔を赤くしたり青くしながら聞いていた。お兄様が帰ってきたから、私の領主代行も終わりだ。お兄様が次期領主だから、あとはお兄様に任せればいい。心の重荷が軽くなった気がした。


「マキウス様は?」

「反撃の準備のために王都へ」


「なるほど。反撃か。リリアも王都へ行くって言っていたな。ロレンス様はどうした?」

「先日、火傷の傷も落ち着き、火事を起こしたミヨーナの逮捕も無事すんだので、エリザベス様とお帰りになりました」


「ビラや新聞をハトラウス王国の俺のもとにロレンス様が送ってくれていたんだよ。セバスにもビラや新聞を送ってくれていたはずだ。もともとベラルント伯爵家は敵が多い。一族が脅迫されることなんてしょっちゅうらしいんだ。でも、今回エリザベス様に来た脅迫には、『ヴィスワフ子爵に近づくな』とか書いてあって、ヴィスワフ子爵領が危ないということでホークとして活動してくれていたんだ」

 そういうことでしたか。ビラや王都商業新聞がうちにあったのは。納得した。


「これからはもっと警戒するように。いいね? マリーは希望の星なんだから」

 んん? 希望の星? 領主代行は廃業ですけど。 


 キョトンとしていたら、お兄様は悪いことを企んでいるときの顔をした。小さいころお父様の椅子の上にトカゲを置いておいた時の顔そっくりだった。

「マリーはこの国の希望の星さ」

 お兄様は鮮やかな笑みを浮かべた。



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