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不穏(春の宴と王宮議会)6

年内完結予約しました!応援ありがとうございます。これに伴い、前半部分にスペース、改行を入れていっています。よろしくお願いします。

今日は王宮議会。春の宴の夜会の次の日にぎかいっておかしいんじゃないの? と文句が言いたいのは私だけだろうか。


夜会で久々に着たドレスはテンションは上がったけれど、疲労はかなりのもの。今日は起きあがると、身体のあちらこちらがきしんでいた。さすがに緊張しているからか、眠いとかはない。これからくそ親父たちを相手に闘ってこないといけない。


議会提出用の書類や手紙の複製も用意した。ちなみに複製って結構なお値段がかかるんだよ。人の手で書き写すか、魔法紙で転写するか、2通りあるんだけど。人の手で写した場合は、同じ内容であるということを公正証人がサインしないといけない。公正証人に頼むのもいいお値段がかかるんだよね。魔法紙で転写する場合は、うちの国にはないものだからハトラウス王国より取り寄せることになる。輸送費込みで結構高額になる。


マキウス様のところのベラルント銀行では、貸金庫の利用者に限り公正証書もしくは魔法紙の転写のサービスが受けられるので便利。うちの書類はベラルント銀行の貸金庫に入れてあるから、複写もされているんだけど、議会の分はないから結局ヴィスワフ子爵の負担。


いらぬ疑惑で大出費。あとで経費で落とすからね。ほんとブルー。

忘れ物ないか、書類の確認をしていたら、エリザベス様がやってきた。

「さあて、マリー様、武装しますわよ」と宣った。


ぎくぅ。若干顔が引きつった。

「そんなお顔をされてもダメ。女には女の武装の仕方があるのです」

エリザベス様の合図と共に侍女軍団がやってきた。


30分後。

まあ、私ってこんな顔だったかしら? 化粧ってすごい。

「うん、これならなめられないわね」

エリザベス様がほくそ笑む。


いや、別にケンカしに行くわけじゃないんですけど。

「ケンカですよね?」

「ええまあ。ケンカと言えばケンカ?」

「マリー様が一生懸命やってきたことをぶち壊そうとする輩をやっつけに行くんでしょ? これならいいわ」


 鏡の前にはアイラインがきちんと引かれ、派手過ぎず赤すぎない口紅。知的に見えるキリリとした眉毛。ふんわりとしたおくれ毛は少し色っぽいけれど、キュッと髪はまとめてある。迫力ある美人が作られていた。


 今日はマキウス様とは別の馬車に乗っていくのがいいだろう。出発時間も時間差にした方がいいかもしれない。


 と思っていたのに、玄関の扉の前にマキウス様が立っていた。

「こういう出で立ちもよくお似合いです。知性と色香が拮抗して魅力的です」

 マキウス様が一生懸命褒めてくれた。ありがとう。すべてエリザベス様と侍女軍団のおかげです。

「マキウス様、一緒に出るつもりですか?」

「ええ。いけませんか?」

「王宮の噂雀たちに何を言われるか」

「心配は無用です。私はマリー様に夢中だとすでに噂になっておりますから」


 ひー。なんですって。

 口が、開いた口が塞がらない。


「おいやですか?」

「いやではないですけれど」

「ではいいんですね」

マキウス様は破顔した。


「おめでとう、マキウス!」

 エリザベス様が手を叩く。

「ありがとう。マキウスをよろしくね」

 エリザベス様が私の両手を握った。


おや? どうしてこうなった?

ついていってないんだけど?


「いつ婚約式をしましょうか? 早い方がいいわね。日にち、見繕っておくから、帰りにマリー様もまた寄ってくださいね」


エリザベス様が私の両手をブンブンと振った。

婚約式? 婚約? こんやく? えええええ?


「こ、婚約って、マキウス様?」

「はい」

 マキウス様はにこりとする。

「あの、婚約って、結婚するんですよね」

「そうですね」

「いいんですか?」

「私はあなたの生命力あふれるその姿にずっと前から惹かれていたんです」

 ドキン。心臓がわしづかみされたみたいに苦しい。

 わ、私もマキウス様のことが気になっていたんですけど。

 えええ! 婚約! しちゃう?

 は! いけない。きょうは王宮議会。


「マキウス様! きょうはもう行かないと」

「私と婚約する意思があるかだけ、教えて」

 マキウス様が跪いて私の手を取る。マキウス様の上目遣いにキュンと胸が鳴った。


 いかん。流される。

「ええ、マキウス様。うれしいです」

 マキウス様の顔が明るく晴れる。


「でも、今は、まだその時ではないと思うのです。まずは王宮議会」

「そうですね」

 マキウス様は苦笑する。

 そのあとは、断罪回避! 無事みんなで生きる!

「きょうはこれで我慢します」


 マキウス様は突然私を抱きしめておでこにキスをした。

 ……。は!

 軽く意識が飛んでました。


 馬車の中は甘酸っぱい空気でいっぱい。マキウス様がずっと私の手を離しません。

 やばい。もう結婚してもいいかもって思ってしまった。


 城門に到着し、マキウス様と一緒に王宮議会へ。マキウス様の手が温かく、心強い。お顔を見ると、マキウス様も優しく私を見つめていた。

 生きよう。ぜったいいきてやる。幸せになってやる!

 


 王宮議会は私を証人席に呼ぶと、紛糾した。

「裏切者」

「自分勝手」

「国のことを考えないのか」


 いやあ、よく悪口を叫べるなあと感心してしまった。

「静粛に!」

 議長が議員たちに怒鳴る。議長はマキウスのお父様だ。私たちのことも御存じのようだ。こ私を見る目が温かい。



「ヴィスワフ子爵代行。説明を」

 議長に話を求められ、資料を提出。それから一つずつ話をした。


「ヴィスワフ子爵領はカルカペ王国の中で隣国ハトラウス王国と輸出入を営む領地であるために、鉄道工事及び橋の工事が必要だったことはご存知かと思います」

「バカにしているのか!」


 怒号が飛んできたが、気にしないことにする。どうせ羨んでいるだけだ。

「鉄道工事及び橋の工事はハトラウス王国からのお願いもあり、また我が国の王室からも命令されたことです」

「証拠はあるのか!」


 ほんとうにヤジがうるさいね。いやになる。

「証拠はあります」

「捏造だろう! 」

「ベラルント銀行にて魔法転写しておりますから、本物です」


 一部の議員らの顔色が悪い。ミグレ侯爵一派ね。帝国側と通じている可能性があるわね。もしくは王宮側なのか。よく顔を覚えておかなくちゃ。


 ユーシベ伯爵はにやにや笑っている。なんかそれはそれで腹が立つ。さて、この王宮議会の連中をつぶしておかなくっちゃね。



「王室からの手紙の複写も議会に提出します。ご興味のある方はご覧ください」

「鉄道の利権を独り占めしてどうするんだ」

「帝国やハトラウスに我が国を売るつもりだろう!」

「静粛に。いまはヴィスワフ子爵代行が話しています」

 議長が呆れた声で指摘する。


「鉄道の利権を独り占めするつもりはございません。もし鉄道を敷くおつもりがある方がいらっしゃるなら、ぜひにと思います。私共は自領で十分でございます」

「それじゃあ、わが国が遅れてしまうだろう」

「どうするつもりだ」


 いやあ、そこまでわかっているなら自分たちも鉄道を敷けばいいのに。失敗するのが嫌なんだなあ。お金かかるもんね。それに王室ににらまれたくないっていうのが本音か。


「いっそのこと王室で鉄道を敷いたらどうかと思うのですが」

 私の提案に議会は静まり返る。

「ご自分たちのチカラで鉄道は敷きたくない。敷けないなら、国にやってもらうしかないじゃないですか。王室と各領主で資金を出し合う形でもいいですし」


「王室にいま財源はない」

 ユーシベ伯爵が立ち上がった。

「不敬だ!」

 声が沸き上がる。


「では、皆さん。皆さんは王室主導で鉄道が敷けるとお思いで? 面白いですね。それなら最初からヴィスワフ子爵代行を呼び出す必要もなかったのでは? ヴィスワフ子爵代行に鉄道工事のノウハウを乞うためでしょ」

 

「違う! 鉄道事故のことだ。安全管理はどうなっている」

 ユーシベ伯爵の発言をズミアカ公爵が立ち上がって否定した。


「鉄道事故! そうだそうだ」

 議員たちの声がこだまする。


「鉄道事故というと、先日の脱線事故のことでしょうか。あれは線路に石が置いてあったのです。幸いけが人はおりません。すぐに復旧することができました。詳しくは調査中です」

「鉄道は危険だ。今まで通り馬車でいい」

「そうだ。馬車がいい」


 まあ、馬車でいいって! そのままでいいという貴族もいるんだね。びっくり。未知の文明を怖がる気持ちはわかるけど、本当にそれでいいの?


 小首をかしげる。どうしたら、鉄道のよさが伝わるんだろう。みんな気になっているけれど、もう一歩踏み出せないって感じみたいだよね。うーん。


「それでは、我が領地へご案内します。鉄道見学をしてみませんか? 鉄道に興味があれば、我が領地での経営方法を伝授いたします。もちろん強制ではございません」


 議会がざわついた。もうちょっと、もうちょっとって感じだ。


「資料を確認してもらえばお分かりになると思いますが、私どもはカルカペ王国を裏切っていないとお分かりだと思います。ハトラウス王国、ポルケッタ帝国とは通じておりません」


「王室から金を借りていただろう! ポルケッタ帝国とつながっているアッタラマ会からも。書類が残っているはずだ」

 ズミアカ公爵が私を指さし、書類の複写を頭上に掲げた。


「それは偽物でございます。私どもに融資し、手を差し伸べてくれたのはベラルント銀行とベラルント伯爵家でございます。やましいことなどございません」


 私は高らかに宣言した。いやあ、借金を堂々というって、恥ずかしいね。


「偽物の証拠は?」

「王室からの鉄道工事を急げという手紙です。また費用はこちらでとかいてございます」


 そう、王室は前からケチだった。ほとんど自分持ちだったんだもん。

「そんなバカな」

 ズミアカ公爵が眉根を寄せる。


 ズミアカ公爵は王室よりなんだな。王室を信頼していたのかもしれない。王室に利用されていたとも言えるのかな。まさか愛国心を利用されたとか思わないものね。


「資料をよく見てください。これで疑いは晴れましたね。いつでも構いません。王都からは王都入り口駅が近いですのでいつでも鉄道を見に来てください」

 私は一礼して退出した。


 混乱した議員たちの声が扉を閉めても聞こえてきた。



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