表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/46

不穏(ユーシベ伯爵)4

 ユーシベ伯爵といったら、王宮議会のメンバーでユーシベ銀行。ぜったい厄介ごとの予感しかしない。

 いやだなあ。いやだなあ。


 うんうん唸っていたら、お父様が「いっしょに対応しよう」と言ってくれた。

 心強かった。


 でもね、考えたの。ここで一緒に聞いてしまったら、何かあった時お父様たちも死んでしまうという大変難しい局面だと思うのよ。もう断罪ルートになっているか、なっていないのかわからないし。


 私がヴィスワフ子爵代行としてやったことなら、お父様たちは知らないと言い張ることができるだろうし、お父様たちだけは生き残れる可能性がある。

 絶対そのほうがいいと思う。


「大丈夫です。お父様は影で見守っていてください。私が一人で対応します」

 両手で頬をパチンと叩いて、気合をいれる。


「淑女……。淑女はどこにいった?」

 お父様とお母様は呆れていたけど、こうでもしないと気合が入らないんだもん。大目にみてください。ほら、赤い頬になって一石二鳥。苦しい?


 ユーシベ伯爵はきっと断られても押し入るつもりだったのかも。そんな気迫だった。

 こっちは喋ることないんだけどなあと思いながら、応接の間にユーシベ伯爵をお通しした。


「これはこれは。先日も王宮議会でお会いしましたな。代行さま」

 ユーシベ伯爵はいやらしい笑みを浮かべた。


 やっぱり私が代行だからってバカにしているように見える。腹が立つなあ。


「はい。父はケガで臥せっておりますので、私が対応させていただきます」

 淑女の笑みをたたえて見せた。完璧だったと思うの。侍女が小さくうなづいてオーケーサインをくれる。


「そうですか。ご令嬢がこんなお仕事をされるとは、大変ですね」

 女は仕事ができないとでも? カチンときた。

 なんかこのおじさん、嫌なんだけど。うんざりしてきた。


「そうですか。とてもやりがいのある仕事で、毎日が勉強です」

 とりあえず、もう一回鉄壁スマイル。


 もういいから早く終わりにしてくれ。帰ってくれないかな。

 侍女が心配そうにこちらを見る。

 大丈夫。私、キレませんから。


「きょうは、私どもにもいい思いを分けていただきたく」

 はあ? いい思いってなに? 意味が分からない。


「ご令嬢にもわかりやすく申し上げているのですよ」

 なんだろう。やっぱり馬鹿にされている気がする。


「つまりですね、こちらにご融資させていただきたいと思いまして」

 え? 不要ですけど。

 もう融資がいる時期は済んでしまったもの。うちの領地は鉄道工事が終わり、借金返済に向け全力を尽くしているところだ。これ以上借金はいらない。


「もちろん、こちらはベラルント伯爵家とベラルント銀行がご融資しているのはわかっているのです。ただ、これからのこともあるので、お付き合いをお願いしたく出向いた次第です」


 うわあ。なんだかやな感じ。これからのことって何? 王宮議会のことか! それともこの国の未来のこと?

 はっきり言ってくれとは言えないのが貴族。こういうやりとり、苦手なんだよなあ。


「はあ」

「王宮から急ぎで頼まれた春の宴の招待状もお持ちしました」


 え? ええ? 春の宴って、高位貴族しか呼ばれない夜会でしょ。うちはもう貧乏ではなくなったけど元貧乏子爵。そんな夜会出席したこともありません。招待状、今渡されても困ります。ドレスとかどうすればいいんだ?


 混乱のうちに手渡されてしまった。

 受け取ってしまった。がーん。


「王宮議会の召喚の前日ですな。まだまだご令嬢は若いのですから楽しまれてはいかがだろうか」

 おじさんが笑っている。


 笑えない。婚約解消のことを笑っているような気がする。くううう。扇をひろげてやる!

 口元を見えないようにして表情を隠す。


 なに、その若いのですからって。結婚相手を探せって? 


「はあ」

「うちの息子も出席しますし。今後のお付き合いもよろしくできますからな」

 ユーシベ伯爵は「息子」「息子」と連呼する。

 どういうこと? ううん? 大人ってわからない。


「では、銀行の融資の方はよろしくご検討をください。いいお返事を待ってますよ」

 ユーシベ伯爵は言いたいことだけ言って、帰っていった。

 なんか一方的に言われて終わった。


「ちょっと混乱してるから、休むわ」

 侍女が心配するのをよそに、ソファに横たわる。


 要するに、ユーシベ伯爵はうちの銀行の融資を受けろ。鉄道事業にかませろって言っているわけで。うちがかばってやると、王宮議会がスムーズに進み、貴族社会では俺んちの息子の後ろにいれば問題ないと言っていたんだと思う。たぶん。解釈あってるはず。


 ええええええ。ユーシベ伯爵の息子って誰それ。それならマキウス様の方がいい。ぜったいいい。ふと思い浮かんだマキウス様。


 人を馬鹿にしているユーシベ伯爵の息子って、どんな(嫌な)人って興味は沸くけどさあ。無理。ぜったい無理。結婚とか言われたら、鳥肌が立っちゃう。


 でも、ユーシベ伯爵の庇護を断ると、王宮議会が荒れるってことなんだろうなあ。それだけは分かった。相当ヤバいんだ。気を引き締めないと。


 明日の王都への出立は、取りやめだな。ドレスがない。マキウス様に連絡しないと。先のことを考えるとおもいやられるのであった。


レビュー、感想(甘め希望です!)、評価(広告の下にある☆☆☆☆☆)などで応援していただけると、嬉しいです! よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ