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不穏(メアリーの死亡、騎士団)3

現在山場。がんばれ、私。章が増えていっている。

「騎士団? なんで騎士団が?」

「わからん。とりあえず対応せねば」


 お父様はセバスに応接の間に通すよう指示する。私たちも同席してよいと言われ、移動した。応接の間はめったに使わない開かずの間。だって、田舎だったから誰も偉い人来ないし。リビングの方が過ごしやすいんだもの。


「ヴィスワフ子爵で間違いないか」

 騎士団の副団長をしているという男が尋ねた。銀色の長い髪を後ろで無造作に一つにまとめている。身長はマキウス様より少し高く、がっちりしている。騎士団というから、訓練を良くしているんだろう。精悍な顔立ちで日に焼けた肌をしている。


「はい。こちらは娘で、現在代行として動いてもらっております。実は、腰をやってしまいまして、自宅療養中でございまして」

「なるほど。では子爵ご自身が王都へ出向くことは?」

「全く。動けませんでしたから」

 お父様の言葉に副団長は渋い顔をした。


「こちらはマキウス・ベラルント次期伯爵、エリザベス様、ローレンス・アントワーヌ次期子爵様でございます。エリザベス様はローレンス・アントワーヌ次期子爵とご結婚されておりまして……。いろいろなご縁で、仲良くさせていただいております」

「ああ、あれか」

 副団長は苦笑する。社交界で噂になった婚約解消の件を思い出したらしい。


「はい。ご縁とは不思議なものでございますね」

 お母様がほほ笑まれた。

 これ以上追及するなよという淑女の笑みだ。


「マキウス様たちもご一緒に聞いてもよろしいですか?」

「ああ。そちらがいいなら」

 マキウス様の問いに副団長がうなずく。


「王宮議会から呼び出し状だ」

「え?」

「どうして?」

 私とお父様が声をあげた。


「理由はそこに書いてある」

「謀反の恐れ? 国を私物化?」

 お父様がつぶやいた。


「なんですか、その呼び出し状は。面白いことをいいますね」

 マキウス様の眉が吊り上がった。


「俺の目的は別にある。メアリー殺害の件だ。誰がうちのメアリーを殺した?」

 副団長の顔が一気に怖くなった。

 うちのメアリーって言ったよ、この人。


 もうどうしてこんなに今日はいろいろあるの。もう疲れたんだけど。

 ちーん。

 意識がどこかへ飛んでいく。


「お嬢さま、お嬢さま。お茶でございます」

 セバスが小さな声でささやき、私の意識を戻してくれた。


「お嬢さま、目が死んでおります。甘いものでもお持ちしましょう。ちょうどアリアのアップルパイがあります」

 セバスが紅茶とアップルパイを出してくれた。とりあえず甘いもので英気を養わないとやっていけない。


 「まずは、王宮議会の件から」と言って、お父様がみんなに呼び出し状を読み聞かせている間に、アップルパイを食べる。相変わらずとっても美味しい。ああ、アップルパイの中で寝ていたい。


 マキウス様が心配そうに見ている。

 大丈夫です。意識がしゃきっとしましたよ。

「ひと月後に召喚らしい。私が出てもいいが、腰が王都へ行くまでもつかわからない」

 お父様は苦い顔をした。


「私が出るので、お父様は養生なさってください。ようやく屋敷内で動けるくらいになったところなんですから」

「そんなにひどかったのか」

 副団長は不思議そうに見る。


「ええ。お母様が付きっきりで介護をしていたくらいですから」

「では、本当にマリー様が仕事を?」

「はい。鉄道事業の運営、温泉街など町おこしなども、ベラルント伯爵さまのお力をお借りしながら……」


「王宮の噂では、ヴィスワフ子爵は王家に金を借りながら、裏で帝国と手を結んだと噂になっているが。では、そっちが嘘か」

 副団長が眉根を寄せた。


「え? そうなんですか」

 うわあ。でたよ。謀反。断罪ルート出てきたよ。死にたくない。みんなで生きて、幸せに暮らしたい。しかし、どこからそんなでたらめな噂が?


「ヴィスワフ家は、王家から金を巻き上げ、帝国と手を組み、私腹を肥やし続け、貴族社会に君臨しようとしていたのでは? 声高に身分制度の崩壊を主張するメアリーを殺したのは貴様らだと思っていたが」

「そんな……。そんなことはぜったいありません。メアリーと私は仲良くなったんです」

 首を横に振って、誤解を解こうとする。


「アントニオ、言い過ぎよ。メアリーの記事、読みましたか? タクランの町のこと、褒めていたでしょ? マリー様にメアリーを紹介したのは私なのよ。メアリーはマリー様のこと仲良くなれて嬉しいって言っていたの。マリー様が殺すわけないわ」


 殺しません。メアリー様とはあれっきり連絡も取ってなかったし。どこに住んでいるかも知らなかったのだ。エリザベス様の幼馴染だし、新聞社の連絡先は分かっているからまた会えるだろうって思って……。


「マリー様を犯人にするのは間違っているよ、アントニオ副団長」

 ローレンスがため息をつく。

「あの、うちの金庫から王家の手紙がなくなっているんです。鉄道事業を認めるって書いてある手紙なんですが」


「はあ? そうなのか。勝手にヴィスワフ子爵が鉄道事業に暴走、金がなくなって王家から金を借りたと聞いているが」

 アントニオは首をかしげる。

 がーん。どうしてそんなことに?

 こうなったら証拠をもって王宮議会へ行かないといけないわ。


「アントニオ様? メアリー様とはいったいどういう関係なのですか」

「妹です」

 アントニオは悲痛な顔をした。


「騎士団としてマリー・ヴィスワフ子爵をとらえようと来てみたが違ったようだ。メアリーがヴィスワフ子爵家の秘密を知ったため殺されたという筋書きかと思ったんだ」

 こわ! 捕まるところだったのね。ぞわっとした。


「では、きょうは騎士団は引き上げることにしよう。王宮議会の呼び出しは、騎士団としては何もしてやることはできない。そちらは召喚に従ってほしい」

「はい。わかりました」

 アントニオ副団長と約束する。


「マキウス、ヴィスワフ子爵家に絡んでいたなら早く言え」

 アントニオ副団長はマキウス様の肩をポンと叩くと、帰っていった。


 お父様もお母様も、マキウス様達も疲労困憊。明日、対策をたてることにして今日は休むことになった。

 思い返すと、怖いことに、きょう牢屋に入ることになっていたのかもしれなかった。謀反は大罪だ。首切りは免れない。


 いままで疑われることもなく、のんびりと暮らしていたのに、鉄道事業でお金が入りだすといろいろなことが変わり始めた。


 前の人生でもきっと同じようなことが起きたんだろう。前の時は、私がお父様を介護していたから全く気が付かなかったが。お母様が一人で闘っていたんだろうな。今度は私も頑張るから、みんなで生きようね。



 次の日。

 マキウス様は「銀行のセキュリティーをあげ、ベラルント伯爵さまに相談する」と言って、早朝にヴィスワフ子爵領を立った。


 エリザベス様とローレンス様はうちの警備のものを連れて温泉を家族で楽しまれた2日後、ベラルント伯爵家に戻られた。残念。また来てくれないかな。


 召喚の期日までひと月だ。本当はエリザベス様たちはうちの屋敷に一週間滞在予定だった。一緒に遊ぼうと思っていたのに。


 ヴィスワフ子爵代行として王宮議会の召喚に備えた書類なども用意しないといけなかったので、気を使わせてしまった。


 あの時、書類に紛れ込んでいた、偽物の王家からの借用書とアッタラマ会の借用書は、いつもドレスのポケットに折りたたんで身に着けておくことにした。騎士団に踏み込まれたり、王宮議会が押し掛けて来て、家探しされても困るからだ。この書類は、噂を本当に見せかけるように仕組まれたもの。悪質だわ。信じられない。


 これを見た人たちはヴィスワフ子爵が悪いって思っちゃうもの。絶対に表に出すわけにはいかない。

 でも、嵌められた証拠として使えるかもしれないので、おいそれと捨てるわけにもいかないのよね。困ったわ。ということで、ポケット。ポケットに決定である。


 王都に行って貸金庫から書類を取ってくれば、あとは何とかなるだろう。ヴィスワフ子爵家とベラルント銀行、ベラルント伯爵家が援助してくれている証拠だ。カルカペ王国を裏切って帝国とつながっていないし、王家からも借金はしていない。それに鉄道事業を急げという王家からの指示の手紙もある。決算の書類も一応用意して……。


 これでなんとか王宮議会と戦えるだろう。おそらくベラルント伯爵家に対する敵もいるんだと思う。今のところヴィスワフ子爵と一緒に一人勝ちだもの。だったら、あの時お金を貸してくれればよかったのにね。


 あっという間に2週間が過ぎた。なんとか王宮議会の対策も取れる目途がついてほっとしたところだ。

 さて、執務室を片付けよう。お父様とお母様がいつもキレイに整頓してくれているからすぐに準備も終わった。しかし、王家にお金を借りるとか、ありえないでしょ。おかしな噂だ。


「お嬢さま。休憩なさいませ」

 うちの侍女が休めというので、休もう。疲れたよ。


 侍女も、うちに仕えてくれている人たちもみんなヴィスワフ子爵領の出身だ。脱線事故や騎士団が乗り込んできたのを知っているから、私たち一家のことを心配してくれている。


 侍女の入れた紅茶と甘さ控えめクッキーがティーテーブルに並べられている。

 このクッキーは砕いたナッツが入っていて美味しいの。パクパクとつまんでいると、セバスがやってきた。


 セバスの顔色が悪い。どうやら良くないことを告げるらしい。


「先触れが来ました。ユーシベ伯爵家からです」

「ユーシベ銀行からはお金を借りてませんが」

 小首をかしげる。

 いったい何の用? 覚えがないんだけれど。


「お断りしますか?」

「まさか。上位貴族なんだから断れないじゃない」

「でも、タイミングがタイミングですし」


「ああ、たしかに。王都へ明日行くつもりだったしねえ。お父様はなんと?」

「お嬢さまが決めていいとおっしゃっています」


 セバスが私の対応を待っている。ああ、どうしよう。明日王都で会ってもいいんだけど、でも失礼だろうか。もう先触れが来ているってことは向こうも出発してるものね。


「いいわ。会います。ただし、うちの屋敷の中を勝手に歩き回られないよう注意して」

「はい。もちろんです」

 セバスは急いで階下へ行った。


 書類やなにか盗まれたり、紛れ込まされたりしたら、大変。もう敵が多いってすっごい大変なのね。

 世の中の高位貴族の人たち、尊敬するわ。

 

 しばらくすると、ユーシベ伯爵が馬車で到着した。

 私たちは緊張の中お迎えした。

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