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お弁当販売

 駅のホームを見ると、荷物を運んでいる人や貨物車に荷物をのせようとしている人がたくさんいた。ほんの少し前までは、数人しかいなかったのに、大盛況。開通式はやっていないけれど、徐々にマイミア路線の利用者が増えている。

 うれしい。ようやく軌道に乗ってきた感じだ。このまま鉄道の利用者が増えてくれれば、借金返済も順調に進む。

 まだ完成していなかったタクラン駅からマイミア駅までの路線もタノカノ商会で資材も順調に仕入れることができ、開通ももうすぐと言ったところだ。

 うまくいっているので本当にほっとしている。巨額の借金だからね。あははは。

 きょうは、視察にやって来た。利用者が困っていないかリサーチするためだ。

 あいにく今日は曇り。雨雲のような黒い雲が西からやってきている。早めに切り上げられたらいいな。

 まずリバーサイド駅を見る。ハトラウス王国からの荷物が増えているのが分かる。もう一両、車両を増やしてほしいと言われるのも時間の問題かもしれない。

 また、借金かな。お父様と相談して、マキウス様にも聞いてもらわないといけない。どうにか車両を増やすか、本数を増やすか。考えないと。

 今のところ、大きな混乱はないけれどね。

 そうそう、なんとハープス川を使った船の運搬も増えているのでびっくりだ。鉄道効果ってすごいんだね。あれはプラレル共和国の船? 以前はあんなに大きな貨物船は来なかった。王都への販路が拡大しているんだわ。

 やっぱり貨物車両を頼んだほうがいい。

 メモを取りながら、リバーサイド駅付近を歩き回る。

 あら、雨。

 ぽつん、ぽつんと大きな雨粒が落ちてきた。うわ、あと数分でザーっと降ってくるだろう。まずいわ。

 人々はあわてて雨をしのごうと駆けだした。

 私は傘を取り出した。駅の人たちも屋根をもとめてごったがえしている。

 駅には屋根がないからなあ、不便よね。そうだ。プラットホームにも屋根をつけてあげましょう。あと駅舎から馬車に乗るところにも屋根があるといいわね。

 馬車に乗り込む人たちや列車に乗り込む人たちを見ていたら、閃いた!

 そうだ。馬車を走らせられないかな。

 鉄道のレールの上を走らせるの。そうすれば、列車と列車の運行時間の間も荷物が運べるわ。残念ながら何台も列車を用意することはできないもの。鉄道馬車に代わりに走ってもらえないかしら。

 炭鉱で使っていた蒸気を応用して作っている蒸気機関車もいずれ領内でメンテナンスや作ることができればと思うけど。それまでに時間を稼ぎたい。

 乗合馬車の御者や馬の世話番をする者たちもしばらくの間雇用できる。鉄道馬車なら、コストは少なくて済むだろう。

「弁当はいかがですか? 雨が止むまでに食事ができますよ」

「弁当を販売中です」

 弁当を売る呼子の声が聞こえる。

 あれ? うちの領地の人じゃないような気がする。

 数人がうちの領地の人ではない。お弁当売りに参入してきた?

 領民のアリアを見つけ、声をかける。

「アリアもお弁当を売っていたのね? どう?」

「まあ、マリー様。私はお弁当でなくて、アップルパイを売っているんです。デザートに、おやつにいかがですかって」

「すてきなアイディアね」

「売れ行きもなかなかです。お金を貯めて、温泉街のカフェの資金にしようと思っていて」

「すごいわ」

 アリアは誇らしげだ。

「あら、王都で会った子だわ」

「そうなんですか」

 アリアはお弁当売りを見た。

「ミヨーナじゃない!?」

 声をかけると、ミヨーナは大きな笑みを浮かべた。

「マリー様!」

「お弁当を売りにきているのね?」

「そうなんです」

 アリアにミヨーナを紹介する。

「王都でお店を出すんですか。すごいですね」

 アリアは目をキラキラさせている。

「いやあ、でも資金繰りがね。うまく回るようになるまでは、お弁当を売ったり他のこともしないといけないのよ」

 ミヨーナは苦笑する。

 王都の飲食店の人たちがここで弁当を売り始めているのか。うちの領民のお弁当売りさんたちは大丈夫なんだろうか。

 ふと心配になった。あとで商工会に問い合わせよう。

「リバーサイド駅はすごい混雑しているわね。お弁当も売れている?」

「はい。だいたいお昼すぎるころには売り切れますね」

 ミヨーナは嬉しそうだ。

「ああ、間違ったわ。ちょっとお弁当返すから、お金返して」

「あ、はい」

 誤って購入している人もいるみたい。

「すいません、ここのお弁当じゃなくて、この前のお弁当屋さんがいいんだ。だからこのお弁当返すよ」

「タクラン名物弁当が買いたいのに、違う弁当を買ってしまったんだ。ごめんよ」

 ミヨーナの前にお客さんが数人並ぶ。

 返金らしい。ミヨーナは唇をかみしめていた。

「あ、はい。ちょっとお待ちください」

 ミヨーナも大変そう。

 お弁当屋さんも競争だもんね。

 アリアとミヨーナのそばを離れ、タクラン駅の様子を見に行った。タクラン駅は取っても空いていた。

 こんなに空いていていいの? ダメだよね。

 思わず眉間に皺が寄る。

 リバーサイド駅は栄えているけれど、タクラン駅は? タクラン駅に用事がある人があまりいないのだろうか。それとも馬車の方が利便性が高いのか。これでは王都へいくための通過駅になってしまう。これじゃ誰もお金を落としてくれない。それどころか、温泉街もうまくいかず、ゴーストタウンになってしまうかも。

 まいったなあ。タクランの町は治安もよくて、生活するには困らないくらい栄えているのに。こんなにいい町なのにもったいない。

 リバーサイド駅では女性客も増えているように感じた。アリアのおやつデザート販売は伸びるだろうな。お洒落なお弁当があると売れるかもしれないな。

 タクランの名物弁当を求めている人がいると分かって嬉しかったけれど、誤って違う弁当を買ってしまうのはまずいだろう。どうにかならないんだろうか。この人はこの弁当って、すぐに分かるようにしないといけない。

 看板でも出すか。でも、売り子がお弁当を販売しているときは看板がないんだもの。どの弁当を売っているか一目でわからないよね。

 カフェとかではどうだったかなあ。

 歩きながら考えていたら、タクランの商工会に着いてしまった。

「これはマリー様。ようこそいらっしゃいました。今日はどのようなご用件で?」

 マンタ会長は口角を上げた。

「お弁当売りについて聞きたいのよ」

 マンタ会長が顔を少しひきつらせたのを見逃さなかった。

「そうですか。ではこちらへ」

 会長は私に椅子をすすめたのだった。

 現状リバーサイド駅ではお弁当売りの店が6つあるらしい。一つはもちろん私たちの領民が出しているお弁当屋さんだ。あとはアリアのデザート店。でも他の4つは王都から来ているという。

 王都から販売ってすごくない? 結構遠いのになあと不思議に思っていたら、

「どうやら王都で店がうまくいっていない人たちがこちらに流れてきているようなんです」

 マンタ会長は渋い顔だ。

 トラブルがなければ、自由に競争してもらってもいい。タクランのお弁当屋さんはタクランの特産品をたくさん使って、お得で美味しいから、一度食べてくれればまた買ってくれると思うの。だからあまり心配していないんだけど。

「顧客の中で、タクランのお弁当を買いたいのに間違って買ってしまうという事例が多くなってきまして」

 ああ、さっきのミヨーナのところみたいに?

「なるほど」

「マリー様に何かお知恵を拝借できればと思っていたところでございます」

 ああ、私も気になっていたの。タクランのお弁当屋さんって、皆がすぐに分かる方法ってないのかしら。

 お店だと、お揃いのエプロンとか、お揃いの色にしていたりしていたわね。そういえば、王都のカフェの制服は可愛かったわ。

「そうよ! 制服よ。制服にすればいいのよ!」

 私は思わず立ち上がった。

 あ、やっちゃった。顔が赤くなる。

 ゴホンゴホン。恥ずかしくなっちゃったわ。

 マンタ会長は拍手をしてくれた。

「いい案ですな!」

 タクランのお弁当屋さんに至急制服を手配することにした。上はブラウンの上着で、下はブラウンとグリーンのチェックのスカートかズボンを選べるようにした。マイミア山の色にしてみたんだ。

 お弁当売りのおばちゃんやおじちゃんたちにもシミが目立たなくていいと好評だった。可愛いと思うんだけどな。

 アリアが来たところを見たら、やっぱり可愛かったよ。

「若いからかな」

 やけになって、ぼそっとつぶやいたら、おばちゃんとおじちゃんに怒られた。これでお弁当の誤購入問題は解決よ。

すいません、不定期中です。少しずつ書くので、レビュー、感想(甘め希望!)、評価(広告の下にある☆☆☆☆☆)などで応援していただけると、飛び上がって嬉しいです。よろしくお願いします。


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