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カフェの偵察

よし、カフェに行こう!

お読みいただきありがとうございます。読んでもらえるのか不安だったので、とても嬉しいです。

 どうも、マリーです。誘拐から無事帰還して、領地でのんびりしていました。

 誘拐されていたと知って、お父様とお母様は「家から出るな」と命じられたので、仕方なく家にいたところです。

 エリザベス様がホークとかカラスとかいろいろ言っていたなあと思い返していた。そういえば、お母様もカラスって言っていたような。何か知ってるに違いない。

「お母様~」

「なんです。大きな声で」

「お母様、カラスって何ですか」

「カラスって、ほら。外をごらんなさい。黒い鳥がいるでしょ」

 いや、そのカラスは知ってます。

 私が言いたいのはちがうものですよとお母様を見ていると、

「王家のカラスのことね」

 お母様が仕方なしに話してくれました。

 王家のカラスっていいうのは、王家の密偵らしい。大勢の人を雇っていて、正体は不明と言われている。

 どこにでもいるらしく、ある貴族がちょっと王家の悪口を言っただけでバレてしまい、お家がなくなったとか。怖いわ。普通に怖い。

「そんなにたくさんの人を雇うことができるんですか?」

「そこが不思議なのよね」

 お母様が首を傾げた。

「ホークとは?」

「ああ、ベラルント伯爵の密偵のことね。昔王家とケンカしたときがあったのよ。そこで密偵のことをホークって名付けたんだって。ほら、カラスよりホーク(鷹)の方がつよそうでしょ」

 なるほど。エリザベス様言っていたのは密偵のことだったのね。

 しかし、王家とケンカってどれくらいベラルント伯爵家はすごいんだろう。驚きだ。

「あそこの家は特殊だからね。例えば、私設騎士団では、貴族という枠組みにとらわれず、実力あるものをどんどん採用するのよ。名ばかりでは命は守れないって」

 確かにその通りだわ。

「張りぼて貴族を斬っていくから、ベラルント伯爵家は敵も多いと聞くわ。でも、いい人だと思うのよ。王宮議会でベラルント伯爵が議長を務めているから、まだ機能しているというしね」

「マキウス様が議員を務めてますね。ベラルント銀行では、マキウス様が頭取でした」

「そうみたいね。マキウス様も賢くていらっしゃると聞くわ。うちの鉄道やホテルに尽力してもらえるなんて、頼もしいわよね」

 お母様がにこりとされた。

 本当です。マキウス様がいなければ、鉄道事業が存続しなかったもの。

「そうそう、あなたが王都へ行っている間、うちの商工会の方に温泉街へ出店しませんかと呼び掛けてもらえるよう手配したわよ。商工会会長のマンタが喜んでいたわ。王都の商工会の方にも声はかけたけど、渋い顔をしていたから、王都の方からは出店はないかもね」

 お母様、ありがとうございます。助かります。

「そろそろ家も飽きたんでしょ? タクランの町に行ってもいいわよ。その代わりムチャはしちゃだめよ? お父様のぎっくり腰が悪化したんだから」

 はい、すいません。戦ったりしません。タクラン商工会に顔を出して、マンタ会長にご挨拶にいってきます。

 

 商工会のロビーには見慣れた人がいた。ロイとアリアである。

「どうしたの? こんなところに」

「ああ、お嬢さま。アリアが温泉街にカフェを出したいって言ってまして」

「あら、いいじゃない?」

 私はアリアに微笑んだ。

「ほら、お嬢さまだって賛成だって」

 アリアは両頬を膨らました。

「だって、お前が飲食店って、大丈夫なのか、心配でならねえんだよ」

 ロイが顔をしかめる。

 心配だよね。分かります。

「ベラルント銀行とベラルント伯爵が助けて下さるので、温泉事業もきっと軌道に乗ると思いますよ。だから無謀な話ではないと思うけど。もちろん苦労はすると思うけど」

「ね? だから父さん、やってもいいかな? ううん、やらせてください」

 アリアがロイに頭を下げた。

「しかたねえな。お嬢さまもそういうんじゃ」

 ロイはポリポリと頭を掻いた。

 商工会でお金を借りるところを紹介してもらえると言っていたので、安心だ。

「それより、メニューなんですけど」

「アリアのアップルパイがいいんじゃない?」

「それだけってわけにもいかないですよね?」

 アリアが私をキラキラした目で見上げる。

 こうして私はアリアと再び王都へ行くことになった。

「そうそう、サイレイ店のマカロンって知ってる?」

「はい。名前だけですけど」

「サイレイ店に行こうか? 並ぶかもしれないけれど」

「いいんですか! ぜひ」

 アリアはすごくうれしそうな顔をする。

 貧乏なヴィスワフ子爵なので、貴族の力で並ばずに入れるなんてことはありません。ごめんね。

 汽車に乗り、タクランの町からマイミア駅まで乗合馬車に乗る。

「マリー様、おいらたちどうなるんですか。鉄道が走ったら、おまんまが食えなくなる」

 乗合馬車の御者が商売の不安を訴えてきた。

「ちょっと、そういうのは旦那様にいうべきよ。マリー様はこれからお出かけなんだよ」

 アリアが御者をたしなめる。

「だってよ、鉄道だってもう完成間近っていうじゃねえか」

 そうですね。御者や馬屋の管理人、餌をつくるなどたくさんの人が長年馬車を支えて来ていた。鉄道にすべてを奪われる。そう思うのもたしかだろう。馬車が完全になくなることはしばらくないと思うけれど、いずれ淘汰されていくのは確かだ。領主として、路頭に迷うものがいないように雇用を生み出さないといけない。

「わかったわ。お父様に進言しておく。でも安心しなさい。今すぐ馬車の需要がなくなるわけじゃないわ。それに新しい職業もできるの。アルフレッド兄さんはそのために留学しているのよ」

 御者に気をもむなと伝え、汽車に乗った。

「マリー様、大丈夫なんですか?」

「何が?」

「御者たちのことです」

「うん、大丈夫よ。機関車を走らせるにはたくさんの人の手がいるの。それに駅の運営にもね。もし機関車や駅で働きたくなければ、ホテルや温泉事業に携わればいいわ」

「なるほど。たしかに人手がいりそうですね。さすがマリー様」

 人も金も動く鉄道事業。私とエリザベス様を攫ったのは本当に帝国なんだろうか。アッタラマ会がどうにも気になるのだ。アッタラマ会と契約しなかったせいなのかもしれないけど。

「どうしたんですか? マリー様」

 アリアが心配そうに見ている。

「ううん。大丈夫よ」

 アリアたち領民たちには私とエリザベス様が攫われたことを告げてはない。いつか誰が犯人なのか暴いてやる。

「サイレイ店って、何でもおいしいらしいわよ。いつもアップルパイをもらっているから、私がご馳走します。何でも食べていいわよ」

「ほ、ほんとうですか!」

 アリアは大喜びだ。

 王都について出店など見るのかなと思いきや、アリアに押し切られ、サイレイ店に直行した。時間がまだ早かったせいか十分ほど並んですぐに入店できた。

「こちらにどうぞ」

 店員は可愛らしいフリルのついたエプロンに黒のロングスカートを着ていた。なるほど、店員全員の服を統一しているらしい。

 店内は明るく、腰板が張ってある。観葉植物の緑がアクセントになっていた。

「マリー様?」

 店内の様子を覚えようとキョロキョロしていたら、店の奥から知った声がする。

「え、エリザベス様?」

 なんとエリザベス様からのお声がけだった。高位貴族なのに気さくに声をかけてくれて、嬉しいやら、恐縮するやらである。

「マリー様。私は後ろにいます」

 アリアは数歩後ろに下がった。

「今日はケーキを食べに来たのよ。あなたとマカロンの話をしたから食べたくなって」

「私もです。今日は領地でカフェを開店したいって言っている子も連れてきたんです」

「あら、そうなの? よかったら奥に来ない?」

「いえ、連れもいますので」

 エリザベス様は何となく察したようだ。

「かまわないわ。美味しいケーキを一緒に食べましょう」

 こうなってくると、何度も断ることもできない。アリアに目配せして、私の後ろをついて来るように合図した。

 アリアの顔色は悪い。

「マリー様たち以外の貴族の人を初めてみました」

 うちの領地に他の貴族が出入りすることないからねえ。何にもないところだったから。

「大丈夫よ。エリザベス様はお優しいから」

「そ、そうですか」

 アリアは縮こまっている。

「さあ、座って頂戴。カフェを営むんですって? 素敵ね。で、ここにはお勉強に来たのね?」

「はい。そうなんです」

 アリアが震えて答えられなさそうなので、私が代わりに応える。

「じゃあ、端から頼んでいきましょう。ここのはとても美味しいの。食べきらなかったら、持ち帰ってね」

 エリザベス様、太っ腹。テーブルには所せましとチョコレートケーキやプリン、スフレなどが並べられていく。

「すごいですね。これってどうやって作るのかしら」

 アリアは目を見開いた。

「ふふふ。努力して自分のものにしようとする人って好きよ」

 エリザベス様は温かい目で見ている。

「そうだ、うちのシェフもスイーツが得意なの。よかったらレシピを聞いてあげるわ」

「いえ、そんな」

 アリアが恐れおののいている。さすがに平民だから無理ですと私に目で訴えてきた。

「じゃあ、マリー様にレシピをお渡しするわ」

 エリザベス様は微笑んだ。

 アリアのためにありがとうございます。


 後日、私は再びベラルント伯爵のタウンハウスへお邪魔して、料理人の方とお話しさせてもらった。

 ローレンスのことはあったけど、エリザベス様はいい方だ。仲良くさせていただいて光栄だと感じた。

「そろそろお暇させていただきます」とご挨拶をしようとしていたら、玄関ホールが騒がしい。

「あら、帰ってきたのね」

 エリザベス様はクスクス笑っている。

「マリー嬢が来ていると聞いたから、急いで帰ってきた」

 マキウス様が嬉しそうに私に近づいてきた。

 なんか最近マキウス様の距離が近いのは気のせいだろうか。

「ぜひ夕食をともに」

 きょうも長くお邪魔することになりそう。

ええ、いいんだろうか。エリザベス様も大好きだし、マキウス様も……。でも、いいの? 私ロレンス様の元婚約者だけど。まったくエリザベス様もマキウス様も気になさってない様子。私だけ割り切れない思いなんだろうか。誤解のないように言っておくとロレンス様には全く未練はない。エリザベス様が不愉快に思わないならいいんだけど。甘えすぎなのでは?

 エリザベス様の顔をみると、口角を上げたエリザベス様が「さあ、こちらへ」と手を引っ張る。

 マキウス様の優しい視線を感じ、顔を向けると、マキウス様は美しい笑みをたたえていた。

 二人のからの圧を感じた。こ、これは断れない。

 ありがたくこのままいさせてもらおう。

 戸惑いながらもディナーテーブルへ案内されたのだった。

すいません、不定期中です。少しずつ書くので、レビュー、感想(甘め希望!)、評価(広告の下にある☆☆☆☆☆)などで応援していただけると、飛び上がって嬉しいです。よろしくお願いします。


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