食べてしまったチョコレートケーキ
更新が不定期になります。すいません。ストックが切れたのです……。
マキウス様は私の顔を見ると、駆け寄ってきて身体を抱きしめた。現在ベラルント銀行です。
うーん、どうしてこうなった?
マキウス様はなかなか放してくれないし、ちょっと苦しいんだけど。
お茶を持ってきてくれた従業員の方がマキウス様を冷たく見た。ずーっと見ている。じーっとみている。
ははは。
私も笑うしかない。さすがのマキウス様も従業員の方の視線に気が付いたようだ。
マキウス様はようやく手を放してくれた。
「なんでも相談しなさいと言ったはずだ。ムチャはしないでほしい」
マキウス様は眉間に皺をよせ、私の顔をじっと見た。どうやら何があったかご存知らしい。どうして知っているのかは謎だ。
いやあ、だって。困っている女性をみつけちゃったんだもの。それがアッタラマ会がらみとは思わなかったし。
もうちょっと様子見してからアッタラマ会に行くつもりだったと告げると、マキウス様は呆れたようにため息をついた。
そんなに気を落とさなくてもいいじゃない。
「いいかい? ここはヴィスワフ子爵領と違って、治安は悪いんだ。騙される方が悪い。巻き込まれた方が悪いとなる。もう少し気を付けたほうがいい」
そうですよね。分かってはいたんですけど。「助けて」っていわれたらさあ。
首をすくめると、マキウス様はつづけた。
「といっても、君は人助けをやめなさそうだ」
一応気をつけてはいるんです。気を付けては。なんです。その信頼できずというお顔。
「アッタラマ会を調べているところだが、王都でずいぶん阿漕な商売をしているようだ。つながらなくてよかった」
「そうですよね。ミヨーナの契約書を見てびっくりしました。あ、私に渡されていた契約書を確認していいですか?」
「ああ、興味があるね」
小さい文字をひと文ずつ読んでいく。すると驚くべきことが分かった。この値段は仲介役をする手数料だというのだ。三割安いのはそのためだった。仲介料だけであの値段。信じられない。資材の料金もいれたら以前うちで仕入れた額の2倍になるじゃないか。おまけに資材の仕入れ先の開拓は自分でやれと書いてあったのだ。あくまでもアッタラマ会は仲介。資材取引の手続きをするだけ。
詐欺としか言いようがない。
いや、ちゃんと読まないこちらの瑕疵ということか。よかった、取引しないで。イミテーション返してよかった。チョコレートケーキはたべちゃったけど。
まさか、チョコレートケーキに毒とかはいってなかっただろうか。
お腹に手を当ててみる。今朝のご飯もおいしかったし、お父様もお母様もお元気だったから大丈夫だろう。
「まさか、何かもらったのかい?」
「あ、いや、イミテーションの宝石は返しました。チョコレートケーキは食べてしまいましたが」
「なんて不用心な」
マキウス様に怒られた。全くその通りである。
「いいかい? 君の持っている鉄道の利権を考えてほしい。もっと慎重になるべきだ」
そうなんですか。そうなんだろうな。
私は頷いた。しかし、それだけではだめだったらしい。
「一家惨殺を狙う輩だってでてくるかもしれないだろ? 鉄道はあと少しで完成だ。橋もできた。ホテルもベラルント銀行が投資する。どう見たってあとは旨味しかない」
たしかにその通りだ。私はまだバタバタ走り回っているけどね。
「領地を大切に思えばこそ、用心してほしい。君がやっていることは領民すべてに経済的余裕をと思うからだろう。ヴィスワフ子爵と他の貴族の支配、どちらが領民を想うか考えてほしい」
マキウス様はギュッと目を閉じて額に手をやった。頭が痛そうだ。すいませんね。気をつけます。
「資材調達のつてが見つからないなら、こちらで紹介しようか?」
「いえ、それには及びません。タノカノ商会にしようと思っています」
マキウス様は目を見開いて、それから笑った。
「タノカノ商会か。いいところに目をつけたな」
「ええ、まあ」
他はすべて断られたとは言わないでおこう。
「あそこは隣国ハトラウスに本店がある。大きな店だ。資材調達も早く対応してくれるだろう。ところで、どうして王都へ? ただ資材調達のために出てきたのではないのだろう?」
マキウス様の目が光った。怖い。なんだか怖いんだけど。
「はあ。まあ。王城でのお茶会に誘われたんですよ。行きたくないんですけど、本家のタマシカ伯爵経由でお手紙が来ちゃって、しかも私に名指しですよ。それで、仕方なく、タマシカ伯爵のタウンハウスへ」
「それは災難だったね」
マキウス様は顔色を変えなかった。お茶会に招待されたことも知っているように見える。本当に人が悪い。知っているならなぜ聞くかな。
「それで、きょう王都に着いたんですけど、いろいろ巻き込まれて……、そして今マキウス様にお会いしてます。明日はミヨーナからお金を返してもらって、手芸屋さんに行こうかと」
「手芸屋?」
「タマシカ伯爵の、もう結婚されて外にいる娘さんのドレスを借りる予定なんです」
「君の腕を疑っているわけじゃないけれど、もうドレスを見たのかい?」
「いえ、リボンやレースをつけるか、刺繍をすればいいと思っていたので、とりあえず町へ足を運んだ次第です」
「あそこのご令嬢は、穏やかな性格で悪い人ではなかったから、良縁にめぐまれたんだが。ああ、なんというか、ふくよかで、とても派手な色が好きでね。ドレスもおそらく……」
え? そ、そうなんですか。
サイズ直ししてレースをつけても、もしかして私向きではないと?
疑問をぶつけると、マキウス様は小さくうなずいた。
「よかったら、姉上の、エリザベスのドレスを貸そうか? 姉上は喜ぶと思うぞ」
マキウス様は右手であごを撫でた。
いや、元婚約者の婚約者にドレスを借りるって、どういう状況ですか? エリザベス様はいい人っぽいけれど、この場合、借りていいの? 借りて大丈夫なの?
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