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温泉の領民の反応 融資と出資 

 タクラン駅に近いところに温泉がある。いまは領民が気軽に利用できるよう、簡易的な小屋を建てたところだ。

 そこに近い将来、温泉街を作ろうと思う。ホテルや宿、飲食店を中心にね。温泉に入って美味しいものを食べて英気を養ってもらって、お金を落としてもらう。素晴らしいワンダフルな計画だ。

 旅行客はまずタクラン駅に降り、それからタクランの町を抜けて、温泉街へ。帰るときはタクランの町を抜けてタクラン駅、それから王都へいけるようにしたらいい。タクランの町の工房や商店でお土産を買ってもらう予定だ。自分へのご褒美として、宝飾品を売り込もうという作戦。自分で採った鉱石をつかったアクセサリーを売るのもいいわよね。時間がある人はリバーサイド駅からすぐのトレジャーハンターツアーに参加してもらえばいい。

 どう? 完璧でしょ。

 問題はお金と資材。王宮議会からはまだ予算が降りなかった。やっぱり政治が動いて、実行されるには時間がかかるんだろう。いや、もしくは、まったく鉄道を敷く気がないのかもしれない。あり得る。王宮議会には古い考えの人もいるからなあ。鉄道、便利だけどね。スピードが速いのは身体に悪いとか、歩かないと呪われるとか。どうしてそんな考えになるんだろう。不思議だ。

 はやくモノや人を届け、幸せな笑顔が見たいとか思わないんだろうか。思わないんだろうな。

待てば待つほど嬉しさが膨れ上がるとか、貴族議会で言っていそう。新しいものを怖がるのはわかるけど、固執するのはねえ。古いもののすべてがいけないとは言わないけれど、世界が大きく変わろうとしているときに乗り遅れたら、うちの国は存続が危ないと思うんだけどな。

 まあ、うちの領地だけ繁栄していればいいかとも思うけど。ああ、そうか。この考えが前回身を滅ぼしたんだっけ。仕方がない。もうすこし広い視野で幸せを探します。

 隣国との国境の橋の工事費はいくらか出た。少しでもありがたいと思えみたいな手紙が王宮議会から来たよ。でもね、絶対的に足りない。そんなに橋をつくるのって、安くないんですけどと言いたいが、もう王宮議会に呼んではくれなさそう。

 橋作りは隣国への見栄もあるんだろうな。ほぼ持ち出しですけどね。もらった工事費を人件費にあてることにした。工事の納期を早めるには人海戦術しかない。

 監督には事情を話したので、きょうにも人足が増えたはずだ。鉄道の方はマイアミ路線はほぼ完成だから、橋が完成すればおおよその懸念が消える。

 現在屋敷ではお弁当開発チームが集まって、試作品づくりに取り組んでもらっていた。調理場を手伝ってもらう奥様や子どもたちと料理長が話し合って、パンにはさむ具をつくっている。王都で食べたお昼のサンドイッチを再現してもらって、うちの領地にあったアレンジ商品の開発だ。

「お嬢さま、これはどうですか? 鶏肉を酢とはちみつで味付けしてみたんです」

「これはおいしいです。ソースが食欲をそそりますね」

 一口ずつ味見させてもらう。

「鶏肉はヴィスワフ鳥を使ってます」

 おおお。だから噛むとじわって濃い肉の味がするのね。

「こっちは、ソーセージに酢キャベツです。トマトソースをのせてたべるんですが、どうですか?」

「いいですね。ああ、これはうちの領地のキャベツとトマトですか。トマトの取れない時期は、ニンジン細切りのマリネをのせてもいいかもしれませんね。」

 たくさん食べてお腹がいっぱい。たくさん試作品が余ってしまった。どうしよう、もったいないな。

 だれか食べてくれる人……。そうだ! 工事の人たちのおやつにどうだろう。それで意見を聞いてもいいかも。

 工事の人がすぐにつまめるように、パンを小さめに切ってみた。

 橋づくりの工事の人たちにふるまうと、喜んでもらえた。男性には、肉やソーセージを使ったパンが人気だった。女性はチーズや野菜が多いもの、もしくは肉と野菜のバランスのいいパンを選んでいる。

「僕は甘いのがいい」

「私も! フルーツが挟んであるのも好き」

 子どもたちには甘いモノや果物が人気だった。おやつの時間だったしね。

 スタミナがつくボリュームのあるパン、軽めのランチになるくらいのパン、デザートになりそうなジャムやフルーツを挟んだパンがいるかな。商業的目的で訪れる人もいれば、観光目的で家族で来てくれる場合もあるだろう。女性と子どもも楽しめるようなメニュー開発しないとね。とりあえずお弁当販売としては、手軽につまめるようなパンがメインになる。好評なら、おかずとパンをバラバラに売ってもいいかもしれないけれど。これはおいおいだな。器のもんだいもあるからね。

「人足の数を増やしたり、資材も早く来るようにしたんですけれども、何か困ったことありませんか?」

 近くにいた工事現場で働く男性に聞いてみた。

「お嬢さま、軽食の差し入れ、美味しかったです。それに、温泉。小屋を作ってくださりありがとうございます。疲労がとれるとみんなで仕事終わりに通っています」

「やっぱり温泉はいいですよね」

 不満がないか聞き取り調査中。うんうん、役に立っているみたいでよかった。軽食の差し入れはお弁当の試作品だ。こちらも聞き取り調査をさせてもらっている。

「ケガの治りも早いようで、領民たちも温泉を積極的に利用しているみたいですよ」

「もしかして、混みあっています?」

「ええ、夕方から夜にかけては特に」

 せっかくだからみんなで利用してほしい。そうか、混んでいるのか。

「困ったことというと、そうだ。温泉のあと、のどが渇くので、水があるといいなってくらいです。贅沢なんでしょうけど」

 いやいや、お気持ちはよくわかります。たしかに水分は大事。

「このパンうまい!」

「こっちのたまごが挟んであるのもいけるぞ」

「いろんな種類がちょっとずつ食べられるといいな」

 お弁当の試作品は好評みたい。なるほど。ちょっとずついろんな味が入っているバラエティーボックスをつくればいいかも。

 小屋を大きくするか。お店を誘致するか。

「しかし、のどが渇いたなあ」

 そうですよね。ついでにこちらも差し入れです。

「よければ麦茶はいかがですか?」

「おおお、いいね。お嬢さま、ください」

 お弁当には飲み物も同時に販売がよさそう。

温泉からでてすぐのところに簡易小屋より大きい休憩所をつくって、宿屋や食堂を併設させようかしら。お客さんの声が高まってきているなら、いまが機ってことなんだろうな。

 本格的にタクランの町で募集してみよう。

「橋は、あとひと月もあれば完成します。鉄道工事も早く終わりそうです。でも、こんなに人足や資材を集めて、ヴィスワフ子爵様は大丈夫なんですか?」

 工事の監督が心配そうに私を見た。監督は、昔からうちの領地の土木工事を担当しているサウスだから、うちのお財布事情を知っているのだ。

「まあ、なんとかなります」

「お嬢さま、無理してないですか? 王宮議会がムチャ言ってきたんでしょ? できねえものは、できねえとつっぱねないとダメですよ」

 そうなんだけどね。サウスは正しい。でもさ、うちより高位貴族なんだよ。逆らえません。それこそ独立すれば別だけど。

 え? もしかして、この辺りが分岐点? ここで不満を募らせていくと謀反を起こした裏切者とされちゃうわけ?

 心臓がドキンと跳ねる。

 頭のてっぴんから冷水をあびたみたいに汗が出て、止まらない。

「ベラルント銀行からお金を借りれたから大丈夫よ」

 震える身体を押さえつけるように、右手で左腕を握った。

「それって借金ってことですよね? お嬢様、顔色が悪いですよ」

 サウス、鋭いね。

「ただしくは融資と出資です。鉄道事業の方は融資。温泉の方は、ベラルント伯爵がホテルをつくるそうです。宿や食堂を作って、温泉街にするのは出資してもらうことになったの。お金の方は心配しないで。なんだか疲れたみたい。屋敷に戻ろうかな」

「御館様はぎっくり腰っだていうし、奥様は看病だろう。お嬢さましか今いないからなあ。たまには休んでください。ホテルに宿ですか。ということは、鉄道事業に、温泉街の工事があるってことですか。領民にとってはありがてえな」

 サウスは嬉しそうに笑った。

 人足として働いてくれているのは、うちの領民だけではない。隣のアントワーヌ子爵領の仕事がない人たちも大勢来ている。仕事があるということは、飢えなくて済むことだから、鉄道事業工事も良い面があるといえる。みんなが食えるということは大事だ。前回の人生ではうちの領地だけが好景気だったけど、こうしてすこしずつ道が違えてきている。これが功を奏して、首を切られることは避けられたらいいな。

 線路と橋が完成すれば、経済が巡るようになる。回り始めたら、きっとすべてがよくなる。

みんなで温泉に浸かって、心と身体をいやしてもらえばいい。きっと隣国でも評判になるにちがいない。

 みんなで幸せにならないと意味がない。

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