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不登校の勲章

作者: カニ介

いつも一緒に遊んでたの、覚えてる?


覚えてない?そっか。でも、楽しそうだったよ。

 高校に入学した日後、不登校になった子がいた。名前は赤岸美紀。美紀は俺の幼馴染で、幼稚園児からずっと同じクラスだった。いわゆる腐れ縁ってやつだ。気まぐれで、少し性格も歪んでいたから、小中学校と皆から距離を取られていた。夕方になるとやってきて、「帰るよ!」と強気に言って去っていく。荷物をまとめて校門前に行くと、「遅い!」と言われる。帰るときはいつも俺にくっついていて、友達に見られた次の日から、ラブラブカップルと言われた。美紀がすごく赤面しながら怒っていたのを覚えている。それでも、一緒に帰るのはやめない。何でかは知らん。ある日、今日は家の前まで来いという。かなり遠くなるのでめんどくさかったが、門の前に着いたら一言。「また明日も一緒に帰ろうね。」と。少し赤面した。

 その後、俺たちは同じ高校に合格した。少し遠いので、中学の奴らはいなかった。入学式が終わった後、俺は美紀に言った。「今日からは別々に帰ろう。」もちろん来ると思っていた質問が返ってきた。「何で?」「前みたいに《ラブラブカップル》って言われるのやだから。」そう、理由は超が付くほどシンプル。恥ずかしいからだ。ふーんと言って、間髪入れずに承諾の返事が来た。その数日後、彼女は不登校になってしまった。

 不登校当日、真っ先に帰宅について話したことを思い出した。俺はまさかなと思ったが、やはり不安になり、相談箱というものを利用してみた。さらに数日後、先生から呼び出しがあった。用意された椅子に座り、先生が口を開いた瞬間、怖くなった。やっぱり俺が原因なのか。俺が不登校にしてしまったのか。「君は関係ないよ。心配しなくて大丈夫。」優しく先生は言った。

 1日、1か月、1年、3年と月日は流れた。校外学習でふざけて書かされた作文、昼休みのしょうもない遊び、修学旅行で買った刀でチャンバラ、みんなで食った飯、めちゃくちゃつらかった卒業式練習。いろんな思い出ができたが、あっという間だった。

 卒業式が終わり、クラスで待機していたら先生が、「動画をみるぞ。」と、少し暗い声で言った。俺はみんなとしゃべりながら動画の準備が終わるのを待った。動画が始まって、ガサゴソと音を立て黒い画面が明るくなった。そこに映っていたのはクラスのみんなの写真だった。振り返りビデオを先生が用意してくれていた。最後まで見た後に、「サプライズが待っている」と文字が書いてあった。なんだろう何だろうとワイワイガヤガヤしていたら、ドアが開いた。そこに立っていたのは美紀だった。

 美紀はかなりオドオドしながら、何かを言いたそうにみんなの前に立っていた。しかし、あまりににも長くしゃべらなかったので男子がヤジを飛ばし始めた。そしたら、担任は鬼のような顔をして怒鳴りつけた。クラスはシーンとなった。女子は飽きてきたようだ。爪を見ている。

 先生がポケットのあたりをポンポンとたたいた音がした。そしたら急に、美紀が思い出したかのようにポケットのメモのようなものを取り出し、しゃべりだした。「私、記憶障害になってしまいました。」その一言で、クラスの空気が一気に凍り付いた。俺は、頭が空っぽになった。え、何、え。記憶、、障害。何で、どうして、美紀が?頭が混乱していて、処理が追い付いていなかったのをよく覚えている。「なので、ずっと病院にいました。心配かけたかもしれませんが、体調が悪いわけではないのです。」メモ用紙をめくって言った。「ただ、あまり覚えていられないのです。」そしたら、しびれを切らした男子が立ち上がって、「本当は、学校に来たくなかっただけじゃねえの?メモ用紙なんかもってよ。ふざけてんのか!」と言いながら美紀に近づいて、メモ用紙を奪い取った。男子はメモを見た瞬間、固まってメモを落とした。まるで、禁忌に触れたかのような顔をして。

 美紀がそれを拾って、みんなに見せた。そこにはひらがなでさっき言ったことこれから言おうと思っていたことがたくさん書かれていた。「今日はこんなことを言おうと思ってました。」と笑顔で言った。彼女は、もう、漢字すら書けなくなっていた。俺は涙が止まらなかった。久しぶりに美紀の笑顔が見れたこと、衝撃の事実を知ったこと、彼女が、俺のことを覚えていないこと。

 後から知ったことだが、美紀は小学生がトラックに轢かれそうになっているのを見て、助けに向かった。無事轢かれずに済んだが、その子を守ったときに頭を強打してしまい、病院へ運ばれた。まだ、記憶があった時に言ったそうだ。「このことをみんなには伝えないで。心配かけるのも迷惑をかけるのも嫌だから。」知ったときは、3日ほど寝込んでしまった。今まで一体何をやってきたのか、全くわからなくなった。

 彼女は事故で子供を守り、障害という勲章をもらった。そして今、俺は障害と戦う戦士の仲間として彼女を手助けしている。今日も、赤岸さんの病室へ行くと「どちら様?」と言われて、「医者ですよ。今日もいい朝ですね。」という。いつも俺は彼女のそばにいる、彼女の専門医として。

目を通してもらえたことに感謝しかありません。

あまり壮大な話はかけないのですが、たまーに書いたりするので、その辺はご了承ください。

少し小中学校でやる道徳の授業で使う話みたいになってしまいました。

ちなみに、私は結構涙もろいので読み直したときに泣きそうになりました。

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