幕間:詢子とグリコと時をかけめぐる女(その4)
「――って食べてばっかじゃん!!」
「ちょ、ちょっとグリコ、またなによ?いきなり台本切り裂いたりして?」
「なんスかこれ?なんなんスかこれ?これじゃあまるでオレたち食べて飲んでばっかしてるみてえじゃねっスか?」
「だから私に言われても知らないって。作者さんが勝手に送って来た台本なんだもん――」
「ってか“あらすじ”っしょ?“あらすじ”っつったら『およその筋道。あらまし。概略。特に小説・演劇・映画などのだいたいの内容。梗概』のことっしょ? (デジタル大辞泉)
こんな飲み食いのシーンばっか並べて“小説・演劇・映画などのだいたいの内容”なーんてもんが伝わるワケないじゃないっスか?――ボケてんすか?!」
「だから、私に訊かれても知らないし、その東方仗○口調もそろそろやめてよ。――グリコなのか小野○樹さんなのか分からなくなって来たから」
「あ、スンマセンっす。――あ、う、うん。あー、テステス。――どうもすみませんでした、先輩」
「うん。やっぱグリコはその声のほうが落ち着くわ」
「いやでも、一応最後まで読みましたけど、こんなの“これまでのあらすじ”として載っけたり流したりしちゃダメなやつじゃないですか?」
「ねー、なんでこんなの書いたんだろ?――お腹空いてたのかな?」
「時々しつっこいぐらいに食事や料理のシーン入れて来ますよね、この作者さん」
「ごはん前とかお腹空いてる時とかに書くとそうなっちゃうんじゃない?――糖分足りてない時とか」
「甘いもの好きそうですもんね」
「あー、確か伊純に無茶苦茶ケーキ食べさせてたこともあったわよね?」
「あー、ありましたね。“イチジクタルト”と――なんだったっけ?」
「“イチジクタルト”と“白桃ケーキ”と“三種のベリーのタルト”の三つ同時注文ね。――胸焼けするわ」
「きっとアレですよ?自分が食べられないもんだからキャラに食べさせて自分も食べた気になりたいとかそーゆーヤツですよ」
「なにそれ?若い子にいろいろ食べさせたがる親戚のおばさんみたいじゃん」
「そうそう。山ほどから揚げ揚げたり、ポテサラ出したり、お握り握ったりするあの感じ」
「あー、うちもそーゆーのあったわー。兄さんが小食なもんだから全部こっちに来るのよね」
「私もやせの大食いってことになってるから、やたらとたくさん食べさせられるんですよね」
「いいじゃん。あんた本当に太らないんだから。――食べたら食べた分だけ太る人間の気持なんか分かんないでしょ?」
「あー、それは……ちょっと分かりませんね」
「ほら、この裏切り者」
「いやいやいやいや、こればっかりは体質ですから――」
「兄さんもさー、あっちのお父さんに似て小食だし太らないから私のことバカにすんのよ。――“ちゃんと運動すればいいんだよ、詢子”とか言っちゃったりして、あの入日の陰干し」
「でも先輩たちのお母さんはスッキリした美人さんじゃないですか。――写真でしか知らないですけど」
「母さんはねー、あー、どーだろー、頑張ってシュッとさせてた感じあったけどねー」
「じゃあ先輩も努力すればいいワケで――」
「あんたホントに分からないのね?努力するにも才能がいるのよ?」
「それを言ったらなにも出来ないじゃないですか?――そもそもこの作者さんだって……って、ちょっと待ってください?」
「なに?」
「ひょっとして台本っていまのでもう終わりですか?」
「そうよ、A案B案のふたつだから。――いまのでもう終わり」
「いいんですか?こんなので?」
「こんなのもなにも作者さんが送って来たのを読んだだけだからさ――」
「いやいやいやいや、いやいやいやいや、先輩。同じクリエイターとしてこんな出来のモノ放置しておいちゃダメなんじゃないですか?」
「えー、でも他人さまの台本にケチ付けるってのもさあ――」
「いや、そこは登場人物のひとりとしてですね。飲み食いのシーンばかり並べられても……なんか…………プライド?的なモノが――」
「あー、まー、言わんとすることは分かるけどさあー……このお話って腐ってもラブコメらしいしね」
「ラブの要素は皆無に等しいですけどね」
「ねー…………あ、じゃあさあ、私たちで作り直すってのはどう?」
「“作り直す”?」
「そうそう。一応、セリフのストックは揃ってるわけじゃない?前半戦の六話分だけだけど」
「あー、なるほど。そこから“ラブ”っぽいシーンを切り張りして――」
「そうそう。それっぽい感じに仕上げるワケよ。――『千駄ヶ谷の中心で愛を叫ぶ (ラブコメカット版)』」
「だったらいっそのことコメディ部分は取っ払っちゃてもいいんじゃないですか?――いちおう見た目だけならイケメンキャラも揃っているワケですし」
「真琴さんと漱吾ね」
「あと“メガネ枠”でお兄さんも」
「あー、だったらあの三人にフォーカスさせて――」
「“キョロ”のセリフとかもあの三人にうまく絡ませましょうよ」
「あー、いいわね、それ」
「それなら私も男性陣の声質をお耽美系にしますし」
「いいわね!それ!!」
「そしたら早速台本作りましょうよ」
「オッケー、オッケー、なーんか楽しくなって来たわよーー」
(続く)




