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第六話:パンと胃袋と悩める乙女の救世主(その6)

 “ウバラ”の軍が去ったという報告を聞いた王さまはたいそうおよろこびになると後宮にうたげを設け、大臣・部下たちをお呼びになりました。


 ホメリニスもそのうたげに呼ばれ、王さまみずから彼にお酒をお上げになったのですが、そのとき王さまがホメリニスに、


「ときに先生はどれほど飲めば酔えますかな?」


 と、お尋ねになられました。


 するとホメリニスは、


「わたしは1ドゥオンの酒でも酔いますし、1ラビスの酒でも酔います (注1)」


 と答えました。


 この彼の答えに王さまはしばし頭を傾げると、


「1ドゥオンの酒で酔うひとがどのようにして1ラビスもの酒を飲めるのでしょうか?」


 と、続けてお尋ねになられました。


「そのわけを聞かせていただきたい」


     *


 それでは先ずは手始めにモニカ・ベルッチをふたり用意しましょう。


 それから、用意したモニカ・ベルッチの上にもういっぽうのモニカ・ベルッチを重ね2~3時間放置しておきます。


 そうしておいてその間に、今度は深田恭子と真木よう子とキャサリン・ゼタ=ジョーンズをひとりずつ準備します。


 その後、準備した深田恭子と真木よう子とキャサリン・ゼタ=ジョーンズに余分なもの (注2)がくっついていないかしっかりと確認したうえで、先ほどのモニカ・ベルッチ×2に彼女たちをくっつけたり混ぜ合わせたりしばらく放置して粗熱を取っておいたりします。


 で、そうやって出来上がったものの上にクリスティン・スチュワートとか峰不二子辺りから奪い取って来たオーラをそこはかとなく振りまいて、更にラ・ぺルラのランジェリーやディオールのドレスやサンローランのバッグなんかで包み込んであげれば、それは“フフォン・ラ・カスティリオーヌ (年齢非公開)”こと鷹子・カスティリオーヌ (38) (注3)にそっくりになったりはしないだろうけれど、彼女を知る彼女の元夫・元恋人たちのうち何人かは、


『ああ、言われてみればそっくりだ……』


 と、みょうに納得するのかも知れない。


 が、まあ要するに、鷹子・カスティリオーヌという女性は、おっぱいが大きくてフェロモンがムンムンとしていてスカートのスリットからのぞく足が異様にエロくて、この物語の作者のような朴念仁以外の男にとっては、そばに寄られただけでクラクラクラッと魂のひとつでも差し上げたい気持ちにさせられてしまうような女性で――早い話が山岸真琴 (28)の上から二番目の姉だった。


     *


「だから真琴の最初のコ○ドームは私があげたもののはずよ?」


 と、テーブルにすわる全員に届く声で鷹子・カスティリオーヌは言った。


 ここは樫山泰仁 (31)の家よりほど近い中国四川料理店『西天取経』の1階個室である。


「ちょ、ちょっと姉さん、やめてよ」


 と、そんな彼女をたしなめるのは彼女の右隣りに座った当の山岸真琴本人であるが、そんな弟のことばに対してこの姉は、


「あら?なんで?だって大事なことじゃない。あなたにとっても相手の子にとっても」


 と、まるで意に介さないようすである。


「そりゃ確かに大事なことだとは想うけどさ――」と、続けて真琴は言い、


「だったら良いじゃない。さあこれからって時にコン○ームがあるのとないのとじゃ大ちがいよ?」と、まったくもっての正論口調で鷹子は返す。


「うん。まあ、それはそうだけどさ――」


「あ、それで想い出したわ」


 と、ここで鷹子は、テーブルのうえに両手をパンッと乗せると、出席者のほうに体を向け直しながら、


「コンドー○と言えば前の前の前の旦那とトルコのイスタンブールに行ったときのことなんだけどね」


 と続けた。


「その時はJALじゃなくてAN●LじゃなくてANAを使ったんだけどね、私が窓側の席で彼はそのとなりに座っていたの。

 で、まあご存知のとおり東京からイスタンブールって12時間以上あるじゃない?映画も音楽も聞き飽きたし窓のそとは厚い雲ばかりが続いて景色もぜんぜん変わらない。――まあ要するにふたりとも退屈してたってことなんだけど。

 で、そのうち夜になって、彼がどこからどう手に入れたのかあそこのスチュワーデスの制服を持って戻ってきたのね。――ほら、あそこの制服ってちょっとカワイイじゃない。

 で、まあその時わたしはちょうど月を見ていたんだけど、そしたら彼もその月を見ながらわたしのおなかに手を――、

(※ここから2,000字ほどは流石にちょっとアレな描写が続いてアレなので中略)

 ――そしたらそこでトイレのドアがバーンッて開いて、そこに本物のスチュワーデスが立っていたのね。

 すると彼女、先ずは旦那に、

『すみませんが、そろそろお席にお戻りくださいますか?』

 って丁寧な感じで言って、それからファスナーを戻してる私に向かって、

『あなたは、そろそろ“つぎの”お仕事にかかりなさい』

 って言ったのよ!!」


 ここで鷹子はひとり大爆笑したのだが――うん。個室にしておいて正解だったね。


「あのね姉さん」


 と、ここで真琴が、彼女の笑い声にこめかみを押さえながら言った。


「姉さんのそういう話は人によっては楽しいかも知れないけどさあ――」


「あら、私、ちょっとはしゃぎ過ぎてる?」


「だって……皆さんちょっと引いてるでしょ?」


     *


 と、言うことで。


 今夜の宴席は「いつも真琴がお世話になっております」との名目で鷹子が催したものなワケだが、“いつも真琴が……”と云うことは、招かれているメンバーも要はいつものメンバー+αなワケで――、


 先ずは鷹子の真向いの席にすわる森永久美子 (24)だが、彼女は口を小さく開けたまま箸を持つ手が空中で止まっているし、


 そんなグリコの左隣りに座る佐倉伊純 (29)は、お酒のせいもあってか耳の先までまっかっか。


 グリコの右隣りに座る樫山詢子 (27)のほうは、マンガのネタになるとばかりにメモ帳を取り出したまではよかったのだが、あまりの過激な内容に途中でペンを置き、


 伊純のとなりの三尾漱吾 (31)は……まあこちらは普通にバクバクッと食事を取ってはゴクゴクッとお酒を飲んでいるのだが、その視線は終始鷹子の胸を行ったり来たり。


 で、いちばん大変なのは詢子から席をひとつ隔てた右隣り――鷹子のちょうど左隣りに座らされた樫山泰仁 (31)で、“由緒正しき下戸の一族”であるところの彼は、室内にただよう白乾児酒のにおいと鷹子のフェロモン&香水のせいで視線も思考も定まらない様子なのであった。


     *


「でもね皆さん、安心して」


 と、ここで改めて鷹子はみなに言うと、


「真琴には与えただけで、実際に使い方を教えたワケじゃありませんから」


 と、ひとりふたたび大爆笑した。


 ――いや、ほんと、個室にしといて正解でしたね。



(続く)


(注1)

 1ドゥオンは約750ml、1ラビスは約7.5l。当時のこの地方の酒 (発酵酒)のアルコール度数は概ね17%前後。


(注2)

 マイケル・ダグラスとかフジの打ち切りドラマとかドロンジョさまの衣装とか。


(注3)

 いちおう旧姓も書いておこうと想い調べ直したのですが、やたら多いうえに複雑怪奇になって来たので省略させて頂きます。


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