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第四話:グリコとキョロ(その5)

     *


「よおしみんな、仕事の時間だ」


 と、異星人の宇宙ステーション (?)みたいなところに不死身のF長官の声が響きわたり、


『おお!』


 と、我らが長官のふたたびの大活躍を待ち望んでいる観客席の (むさくるしい)野郎どもは、 (“上映中はお静かに”なため、こころの中で)叫んだ。


 やっぱねー、たしかに (*ネタバレ注意)が (*ネタバレ注意)していたF長官もかっこ良かったんだけどさ、なんかこうエキセントリックさに欠ける感じがしてたんだよね。


 まあ、あの、岡田斗司夫さんそっくりの同級生を麻酔銃で撃つところなんかは“おお!”とかって想ったけど、それでも『A:1st』のときに味方の戦闘機に向かってロケットランチャーをぶっ放した彼と比べるとやっぱなんか迫力に欠ける気がしてたんですよね。


 でも、まあ、それも高校生のペトロ君たちに合わせて手加減してるのかなあぐらいに想っていたら、あ、でも、Мさんがドローンを狙撃するところはマジで“お姉さまステキ!!”ってなっちゃったけど……あ、でも、彼女も (*長くなるので以下略)(注1)――、


     *


「あ、なんか金髪?の子のがはいってましたよ?」そう山岸真琴 (28)は言い、


「ウソ?!」と、そんな真琴の手をつかみ寄せながら樫山詢子 (27)は応えた。「やった!ナギちゃんじゃん!!」


「その子でよかったんですか?」


「この子がよかったんです!」


「はあ」


「まさか一発で推しのポスカを引いてくれるなんて!さすが真琴さん!!」


「……はあ」


     *


 と、いうことで。


 こちらは引き続き地下鉄四ツ谷三丁目駅から徒歩7分。結構な好立地にあるシネコン映画館『四ツ谷フォレスト6』――の、4番スクリーン内である。


     *


「でねでね、この子の種目は平泳ぎで、スイミングクラブでは主人公たちの後輩だったんだけど、中学では離ればなれになっちゃってたんですよ」


「はあ」


「でもでも、主人公の泳ぎにあこがれてたりしたこともあって、またいっしょに泳ぎたいってことで同じ高校に入って来るわけです」


「なるほど」


「で、ちょっと天然っぽいところもあるんだけど行動力もあって、メンバーのムードメーカー的な役割も担ってて、水泳部設立を提案するのもこの子なんですよね」


 と、ここで昨日買った映画パンフレット (特別特装版)を開く詢子。見開き2ページにおよぶ人物相関図を指しながら、


「で、こっちの黒髪の子が主人公で、こっちのワインレッドの子がそのライバルなんだけど、さっきのナギちゃんがこのふたりの仲を取り持つエピもあって――」


 と、真琴の肩に頭を預けるいきおいで続けるのだが――、って、ちょっと先輩、近過ぎませんか?


「あ、ご、ごめんなさい!」と、作者のツッコミが届いたのでもあろうか、ガバッと彼から離れる詢子。「ち、ちか過ぎましたかね?」


「あ、いえ、ぼくなら構いませんけど――」と、真琴。――作者さんも余計なツッコミ入れますよね?


「いや、ほんと、好きなアニメやマンガの話になると我を忘れてしまいまして――」


「ほんと、なんか大好きなんだなってのは伝わって来ましたけど――」と、周囲を見回しながら真琴。「なんか、周りおんなのひとばかりじゃありません?」


 あー、まー、そりゃ、そういうお姉さま方がメインの客層だしねえ。


「ぼく、場違いとかじゃないですよね?」と、真琴が訊き、


「ぜーんぜん」と、返そうとして、詢子はハタ。と気付いた。


『このひと、やっぱり女にしか見えなくない?』


 あー、まあ、そりゃ、化粧落とす時間も髪のセットほどく時間もなく来たそうですからね。


『というか私、完全に負けてない?』


 あー、まあ、そりゃ、元々の造形の差に加えてあちらは……って詢子さん、ひょっとしてそれBBクリームにリップだけ?


『やっぱマズイかな?』


 伊純さんがよく許しましたね?


『映画館の化粧室でもいいからすこしは作れって言われてたんだけど――』


 行ってないんですね?


『グッズ見るのに忙しくて――』


 きのうも来たんでしょ?


『きのうと今日のグッズは違うかも知れないじゃないですか――』


 やれやれ……どうします?


『どうするのが良いと想います?』


 そりゃまあ、いくら女性にしか見えないとは言っても、これから2時間おとこの人がとなりに座るんでしょ?きっとあちらも時々こちらを見るでしょうし……肌も荒れてるなあ…………せめてクリームとグロスは塗り直して、あるならチークとシャドウぐらいはしても良いんじゃない?


『だよねえ……』


     *


 と、いうことで。


 ガタ。と、ここで詢子はいきなり立ち上がると、


「ちょ、ちょっと、トイ……お化粧室へ行って参ります」


 そう言ってシアター出口のほうへと階段を降りて行った。


『えーー』と、残された真琴はすこし驚いてから、『ほんと、この作者さんはイジワルですよね?』と、ほかの登場人物を代表して想った。『ぼくなら気にしないのに――』


 うーん?君もちょっとは気にしたほうが良いと想うよ?



(続く)


(注1)

 本田「あのさあ坪井」

 坪井「はい?」

 本田「ここの長官のくだりっている?」

 坪井「あ、いえ、話の流れ的にはなくても

   全然オッケーです」

 本田「だよね?……ってか、グリコちゃん

   たちはすでに外に出てるんだから、

   ここでこのシーンが入るのっておかし

   くない?」

 坪井「あー、まあ、そうですかねえ」

 本田「なに?グリコちゃんたちって最後ま

   で観ない感じなの?」

 坪井「いえ、少なくとも森永さんはポスト

   クレジットまでしっかり観るタイプだ

   そうです」

 本田「じゃあやっぱり、この流れおかしい

   んじゃん?」

 坪井「はあ……」

 本田「なんで削らないのよ?」

 坪井「だって――」

 本田「だって?」

 坪井「カッコイイじゃないですか、長官」

 本田「……うん?でも――」

 坪井「後追い&トール派の部長にはご理解

   頂けないかも知れませんが、大学時代

   からこのシリーズを追いかけている私

   と致しましてはやはり、『鉄男Ⅰ』の

   ポストクレジットで突然長官が現れた

   ときの驚きと喜び、それから『米国隊

   長Ⅰ』のラストで舞台が現代に移り彼

   が出て来た時の感動、そうして彼のも

   とにチームが結集されていく際の胸の

   高鳴りは何物にも代え難く、更にその

   後なんども死んだと見せかけては不死

   鳥のように蘇えって来る彼はやはりこ

   のシリーズの真の顔とも言うべき存在

   であるわけでして、そんな長官の話で

   あるならば、いくらでも聞きたいと言

   いましょうか、いくらでも語りたいと

   言いましょうか、いやそもそも吹き替

   え声優が途中で交代するところは私も

   どうかなとは想いましたが、それでも

   やは(*以下略)」


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