表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/234

第四話:グリコとキョロ(その3)

     *


「だって――マンなんでしょ?」と、ヨーロッパのプラハにある何とかって橋のうえでヒロインは言った。「きみのことずっと見てたんだから分かるよ」


 すると、そんな自分の正体を見破られた主人公の少年は、あまりの展開になかばフリーズ状態になり、


『なるほど。これはペトロくん的には相当きついですね』と、脚本の巧みさに感心しながら森永久美子 (24)は想った。


 フッ。


 と横を見ると、こちらも右手にポップコーンを持ったままフリーズ状態になっている幼なじみがいた。


 プッ。


 と、自分でも気付かないうちに彼女は小さく笑っていた。


 口を開けたまま、スクリーンの世界に没入している――多分、主人公のペトロ少年に共感しているのだろう彼が、なんだかたいへん“好ましい”ように想えた。


 それから彼は、そんな彼女の視線に気付いたのだろうか、久美子のほうにすこしだけ視線を向けると、ちょっとはにかんだ様子を見せてから、彼女に何がしかを訊こうとしたのだが――、


 ゴォオォォオンン。


 と、プラハの街に新たなモンスターが現れたため、彼のその質問はふたたび胸にしまわれることになった。


     *


「りょうかーい。じゃあ時間は……って、真琴くんはいまドコなの?臨海公園?……ってどこだっけ?……あー、はいはい。えーっと、じゃあ、ちょっと待ってねーー」


 そう言って佐倉伊純 (29)はスマートフォンの通話口をおさえると、


「場所は?四ツ谷でいいの?」


 と、むかいに座る樫山詢子 (27)に訊いた。


 すると訊かれた27才 (精神年齢12才)は、その灰色だか乙女色だかの脳細胞を当社比1.26倍の速度――ってことは結局そんなに速くはないのだけれど――でフル回転させると……、


「よ、四ツ谷の……あー、ちょっと待って、ちょっと待って――」


 と言いつつスマートフォンをペシペシ叩きながら――、


「う、うん。四ツ谷でいい、四ツ谷で!」


 と、答えた。


 それから、


「時間は?いつの回?」と、続けざまに伊純が訊いて来たので、


「えーっと……12時30分か14時30分!」と、ふたたびスマートフォンをペシパシペシパシと叩きながら詢子は答えた。


「オッケー、了解」と、おさえていた手を通話口から離しながら伊純。


「あー、ごめーん。おまたせーー。うんうん。そうそう。……うんうんうん。

 あー、そうそう。でね?四ツ谷のフォレスト6って知ってる?三丁目の駅から歩いて10分ぐらいの。

 あー、そうそう。そこがいまなら12時30分の回がいちばん早くて、次は14時30分だっ……え?あ?ちょっと待ってね?――“詢子さんのご都合は?”ですって」


「え?は?いや、あー、えー、私はどっちでも――真琴さんさえよろしければ」


「は?もう、ここはこっちから誘ったんだから、こっちから言わないと――。

 あー、じゃあ、もう、“善は急げ”ね。早いほうが良いわね、早いほうにするわよ?」


「え?あ?う??大丈夫――うん。大丈夫」


「オッケー、了解。

 あー、ごめーん。お待たせーー。

 えっとー、そしたらー、12時30分のほうがいいみたいなんだけどーー?

 オッケー?あー、ありがとーー。

 うーん、うんうん。じゃあ、詢子にもそう伝えとくねーー。……はい。はいはい、はーい、はい。

 え?いやあ、大丈夫じゃない?詢子ならそんなの気にしないし。……うん。

 あー、じゃあ、あとはふたりで連絡取り合って。――はーい。よろしくお願いしまーーす」


 プツ。


「どだった?」


「ぜんぜんオッケーだって。映画も久しぶりで楽しみだって」


「そっかー……あー、なんか急に緊張感が増して来た」


「あ、たださー」


「なに?」


「出先から直接行くから着換えとかするヒマないけど良いかってさ」


「ああ、そんなのこっちだって普段着のままだし、全然気にしないよ――」



(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ