第三話:江崎と森永(その4)
チャッチャカ、チャッチャカ、
チャッチャカ、チャッチャカ、
チャッチャカ、チャッチャカ、
チャッチャカ、チャッチャカ、
チャッチャカ、チャッチャカ、
チャッチャカ、チャッチャカ、
チャッ、チャーッ、カチャ。
「……あ、もしもし?……うん?森永です。
え?森永久美子よ、森永…………ああ、はいはい。グリコです。森永グリコ。
え?……あー、そうね。そう。えーっと?二年ぶり?かな?…………うん。そう。ごぶさたしております。
え?ああ、いまはなんだかんだで須賀町ってとこに……ああ、四ツ谷とか千駄ヶ谷とかあの辺り。
うん?うん。石神井のほうにもたまに行ってるけど公園のほうだし……そうそう。猪熊先生のお手伝いで……ああ、猪熊先生は知ってるんだっけ?
え?……あー、うん、そう。お兄さ――樫山泰仁先生からキョロに会ったって聞いて、それでちょっと相談が――、
え?……ううん。そっちは?…………あー、なによモテモテじゃん。……断わったの?
へー、あー、それはキョロらしいですね。
え?……あ、だったら猪熊先生がらみでニアミスしてたかも…………クリケット?あー、だめだめ、ルールからしてよく分かんなくて。
え?……うん。うん。そうそう、その話を樫山先生から聞いて、実はお願いした…………わたしは大丈夫よ、どっちかっていうとフォローしているほうだもん。
そうよ?なんだかんだで優秀なんですから。
え?……あー、あれ借りたままだったっけ?いや、面白かったよ、うん。…………ちょっと待ってね、本棚見てみる。
え?……あー、そうそう。それでお願いしたいのは私の大学の先輩で、スケ管ガバガバなひとがい…………それが私が言っても聞いてくれなくてさー、樫山先生の妹さんなんだけど――、
え?……あ、あー、それはいいけど、私もいなくちゃダメ?…………いやいや全然こわいひととかじゃないけど、ちょっとエキセントリックな面も――あ、ちょっと待って。――あ、あったあった、これ借りてたのって4冊目だけだっけ?
あ、そう言えば樫山先生が飼ってるネコの名前がさ――聞いた?……そうそう。先生は“偶然だ”って言ってたけど、絶対この本のヒロインから――、
え?……あー、そっか……そう?あー、うーん?…………そしたら、『シグナレス』って喫茶店知ってる?」
*
ブー、ブー、ブー、ブー、
ブー、ブー、ブー、ブー、
ブー、ブー、ブー、ブー、ブー、カチャ。
「はい、もしもし?樫山です。
あー、どうだった?森永くんから連絡は?
……あ、あった。いやいや、それは良かった。
……あ、うん。詢子……妹のスケジュール管理をどうにかしたいってのも本当なんだけど、いいんだよ、それは口実で。
……え?うんうん。いやいや、礼には及ばないよ――こっちも楽しいし。
……うん?あー、妹には言わないほうが良いかな?ちょっとエキセントリックなところのあるやつでさ――、
……いやいや大丈夫大丈夫、江崎くんなら気に入ってもらえるさ。
……うん?ええ、はいはい。はーい。じゃあまた。よろしくお願いしまーす」
…………プツ。
「うん。あとは詢子だな」
(続く)




