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第二話:妊婦と妻と元恋人(その3)

「で?アンタ真琴くんとなにかあったの?」


 と、佐倉伊純 (29)が訊き、


「へ?」


 と、ここでも突然、四秒程度――と、止まった時を数えるのも奇妙な話だが、樫山詢子 (27)以外の時が止まった。


     *


 というのも。


 まあ、こちらもこちらで無理もない話かも知れないが、真琴のあの告白からこっち――と言うか、あの告白の翌朝、キレイな女のひとがいつの間にかキレイな男のひとに変わっていてからこっち――、キレイな女のひとでもキレイな男のひとでもない樫山詢子 (27)は、あの夜の出来事を出来るかぎり忘れようとしていたからである。


 だってさー。


 自分はゲイだって気付いた旦那に逃げられてもう男はこりごりだって想っているところに、雨に濡れたキレイな花嫁さんがいきなり降ってわいて来て、“兄貴狙いなのかしら?”とか想っていたら、その雨に濡れたキレイな花嫁さんから「高校のときからいままでずっと好きでした」とかって告白されちゃって――まあ、“高校のときからいままで”とまでは言われてないけどさ――で、こっちはこっちでその雨に濡れたキレイな花嫁さんにポーッとなっちゃったりなんかしてってって言うかそのちょっと前にはそのキレイな女のひとの手から直接サンドクッキーの欠けらなんかを食べたりなんかもしちゃって、『なーんかBLなんかやめて百合とか描いたほうが良いのかも?』みたいな?――


     *


 作者注:この辺、読み飛ばしてもらっても全然オッケーです。


     *


 ――そんな自分のこれまでの経歴・職歴・来歴・キャリアみたいなものまで捨ててしまいそうなことまで考えちゃったりなんかしちゃったりなんかして、更にその上、その雨に濡れたキレイな花嫁さんとのそんな感じの夢まで見ちゃったりなんかしちゃったりなんかしちゃっちゃたりなんかしたのに、次の日目が覚めたらそのキレイな女のひとがキレイな男のひとに変わっていたりなんかしちゃっちゃっててさあーー、まあ神さまってのは残酷なんだな?って想ってたら、そのキレイな男のひとがウチのキッチンでウチの兄貴と仲良く朝食なんか作っちゃってるじゃない? (注1)、


     *


 作者注:だから、読み飛ばしてもらっても良いですってのに。


     *


 ――そりゃまあ、いろいろ考えるなってほうが無理ってもんでさ?そりゃあ考えますよ、考えますってば。


 例えば、マコトさんがあの長い髪の毛でうちの兄貴を (*検閲ガ入リマシタ)で (*検閲ガ入リマシタ)みたいな感じに (*検閲ガ入リマシタ)したりなんかしてさ、そしたら兄貴も兄貴で (*検閲ガ入リマシタ)な感じに (*検閲ガ入リマシタ)って抵抗するんだけど、そしたらそこでマコトさんが (*検閲ガ入リマシタ)ってなっちゃって、そこでAパートは終了よね?で、それから場面変わって、どうしよう?兄貴の家のリビングで良いかな?


 で、するとそこで (*検閲ガ入リマシタ)ってなってる兄貴をマコトさんが (*検閲ガ入リマシタ)先生の絵柄で (*検閲ガ入リマシタ)なんかしちゃったりなんかする妄想をしちゃう自分も大概最悪だなって考えたりなんかして――、そりゃあその辺の記憶は忘れたくなっても仕方がないと想いませんか?


 ――ねえ?作者さん?


     *


 え?


 あ、ごめん。聞いてなかった。


 お話終わりました?


 終わったの?


 なら、続き書いていい?


 いい?


 あ、はい。


 では――、


     *


「気づかないとでも想ったの?」と、“思考回路はショート寸前♪”な詢子は無視して伊純。「アンタ、真琴くんとの距離の取りかたおかしいもんね」


     *


 あ、詢子さんのマンションのシーンはここまでか…………ほとんど彼女のひとり言 (?)で終わっちゃったけど…………まあ、いいか。


 ってことで、場面変わります。


     *


「じゃあ、そこで終わったままなのかよ?」と三尾漱吾 (31)が訊き、


「詢子さんもけっこう飲んでましたし」と山岸真琴 (28)は応えた。「おぼえてもらってすらないかも――」


 ということで。


 こちらはふたたび、喫茶店『シグナレス』の男ふたりである。


「あのな真琴」と、いつになく真剣な表情で漱吾が言い、


「“紅茶と小豆のシフォンケーキ”おまたせしました」と、赤毛のウェイトレスが彼に声をかけた。「小豆と生クリーム多めですね」


「あ、ありがとう」と、いつになく真剣な表情をいつもの中途半端なイケメン顔にもどしながら漱吾。


「“けど、ほかのお客さんには内緒ですよ”って美里さんが言ってました」とウェイトレス。


「わかったわかった。美里さんによろしく伝えといて」


 そう言って漱吾はうしろを振り返ると、この店のオーナーに小さく手を振った。


「よかったですね」と、ウェイトレスが去っていくのを見とどけてから真琴。


「だろ?言ってみるもんだよ」


「なかなか言えないですけどね」


「いいか?真琴」と、その中途半端なイケメン顔を再び“いつになく真剣な表情”に戻しながら漱吾。


「それがオマエのダメなとこなんだよ」と、声のトーンもイケメンバージョンに変えながら彼は続け、


「また美里さんに無理言ったんですか?」と、森永久美子 (24)がそんな彼に声をかけた。「ほんと、いつかどこかでヒドイ目に会いますよ?」


「あれ?おまえ、きょうは詢子ちゃんとこじゃなかったか?」と、今度はそのイケメンボイスをどこかの忍術学校の先生みたいな声にもどしながら漱吾。「大掃除だかモヨウ替えだかに付き合うんじゃなかったっけ?」


「そうだったんですけど、途中で道案内をたのまれちゃいまして――」とグリコ。真琴に軽く会釈する。「そしたら“ついでにクッキー買って来てくれ”って伊純さんに頼まれたんですよ」


「あ、そしたら、メニューにはまだ載ってないけど“梅ジャムクッキー”を作るとかなんとか美里さんが言ってたぜ?」と、イケメンボイスもイケメンフェイスも諦めながら漱吾が言うと、


「マコト?」と、今度は中谷あきら (25)が、彼の言葉をさえぎった。「やっと会えたわ――」



(続く)


(注1)第一話“その13”を確認のこと。この日の朝食は樫山がひとりで作っている。


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