8話
たかがおままごと、されどおままごと。人生で初めておままごとをしましたが、なかなかに地獄でした。
おままごとでなにがあったかは語りません。ここで語るわけにはいきません。意地でも。
「ふぅ……終わった」
地獄のおままごとを乗り越え、現在子ども達は布団にもぐって可愛らしい寝息を立てています。まだ寝るには早い時間ではありますが、全力で遊んでエネルギーが尽きたのか、糸が切れた人形のように全力で眠っています。
「さて、まだ時間はありますし、今度は奥さまのお手伝いでもしましょう」
おままごとで心身ともにヘトヘトではありますが、まだまだわたしにできることはあります。
少しお宅の中をうろうろさせてもらうと、障子の隙間から奥さまが洗濯物を丁寧に畳んでいるところを発見。
ノック……はできませんし、これだけ薄ければこちらの存在にとっくに気づいていると思われるので声をかけながら入室しました。
「奥さん、お子さん寝ちゃったのでわたしもお手伝いします。畳むの」
「あ、ありがとうございます。ではこちらをお願いできますか?」
「わかりました」
山になっていた洗濯物の半分ほどをこちらに分けてくれました。わたしも奥さんにならって正座して洗濯物を畳みます。
ふふん、ここでちょっとばかり、わたしの得意技をお見せしちゃいましょう。
奇麗に畳んで、魔力を手に集めてシワを伸ばし、折り目を指の腹で軽く押さえてなぞります。
「あら、旅人さんが畳んだ洗濯物、なんだか……?」
わたしが畳んだ洗濯物を見て、奥さんは不思議そうに首を傾げています。
「気がつかれましたか? 実はわたし、魔法使いなんですよ。アイロンがけの魔法です」
どや。
奇麗に畳まれた洗濯物を見せびらかして、渾身のどや顔を披露しました。
わたしが畳んだ洗濯物はまるで新品のようにピンと張っていて、奇麗な折り目がついていたのです。
「アイロンがけは時間がかかるし面倒だから最近は諦めていたのに……」
「今日くらいはわたしに頼って楽してください」
「そんな、悪いですよ」
「わたしにとって一宿一飯の恩はそれほどの価値があるものなのです。任せてくれますか?」
見せびらかした洗濯物の影から奥様の顔を覗き込み、微笑んでみせます。
奥さんは少しばかり悩むように眉根を寄せていましたが、すぐに小さく頷きました。
「……わかりました。ではせっかくですからお言葉に甘えさせてもらいましょう」
「そうしてください。ぜひ」
そして奥さんは残りの洗濯物を全てわたしに任せ、明日の朝食の仕込みへと向かっていきました。
男性や子ども達が奇麗に畳まれた洋服を見て驚き、喜ぶ姿が瞼の裏に浮かびます。
楽しそうな声を聴けるのが、今からとても楽しみです。